00.Beginning

「なぁ、どうしてメルフィを助けてくれなかったんだ」

吹き付ける風の音。
硝煙と血の匂い。
砂埃に覆われた戦場。

暴走した神羅の魔導兵器と、それを止めようとした少女メルフィの亡骸の傍で、俺は胸倉を掴む親友ソノンに身体を揺さぶられる。

同じことを何度問われても、返す言葉が出てこない。
ただ黙って俯いているだけ――それが余計に相手を苛立たせる。

「何で俺を選んだんだ。俺は、俺が生き残ったって、メルフィが居ないんじゃ……」

悲しみと動揺で揺れる弱々しい声だった。
ソノンはその場に頽れて、地面に拳を叩き付ける。

「何でだよ……! どうしてメルフィが死ななくちゃいけないんだ! どうして俺は……お前は……ッ!」

どうして俺は何も出来なかったんだ。
どうしてお前はメルフィじゃなく俺を助けたんだ。

言葉にはなっていなくとも、ソノンが言いたいことは全て伝わっていた。
分かっている。彼の気持ちは、誰よりも分かっている自信がある。

だから、何も言えなかった。
お前だって殺されそうだったんだから、しょうがないだろう、とか。
俺は一人しか居ないんだから、別々の場所で死に瀕してる二人を同時に救うなんて無理だ、とか。

頭の中では、そんな自分への擁護が犇めきあっていたけれど。
俺は唇を噛んで耐えた。反論など出来るはずがなかった。

ソノンの気持ちが分かるから――違う。それもあるけど、それだけじゃない。

俺は、どちらか一人しか助けられないと悟ったあの瞬間、メルフィ親友の願いを切り捨ててソノン自分の感情を選んだんだ。
その負い目で口を閉ざしているだけ。

(……親友失格だな、俺は)

泣き崩れるソノンを前に、俺はただその場で突っ立っていることしか出来なかった。
俺はそうして、故郷の居場所も、親友も、何もかもをその日に喪った。
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