04.すれ違う各々の想い
船を降り、星の核へ続く道があるとされる孤島へ降り立つ一行。島はそれほど広くは無く、一行は星の核への入り口を探す。
「これが例の縦穴かな? 蓋されちゃってるみたいだけど」
「リチャードはまだこの島へ来ていないのか?」
「みんな! 空を見て!」
シェリアの声で皆の視線が下から上へと移動、そこには魔物に乗ったリチャードが。
「リチャード!? その体は一体!」
地面に降り立ったリチャードの体からは、ドス黒い気が漏れ出していた。
リチャードは苦しそうに呻きながら大量の気を放つ。
「どうなっているんだ?」
「あまりに大量の原素を取り込んだせいで、体が堪えられなくなったんじゃ……」
「リチャード、止まれ! これ以上進むな!」
「だまれ……ここまで来たのだ、ようやくここまで来たのだ。邪魔をするな!」
リチャードは刃を構え襲い掛かってくる。
それをなんとか退けると、リチャードは倒れこみのたうち回り始めた。
「グォ……ナゼだ……ナゼ体が……ココマデ……ココまで来て……!」
「こうなってはもう助かるまい。とどめを刺すのが、せめてもの情けだろう」
「待って下さい! リチャード……リチャードの声が聞こえる」
「……ベル……スベル……」
「リチャード!? リチャードっ!」
「……クルシイ……タスケテクレ、アスベル……」
「ああ、今なんとかしてやる」
「……?」
リチャードの言葉に必死に耳を傾けるアスベル。
その光景を見ながら、ルーカスは違和感を感じる。
(……なんだ、この……雑音みたいな音……)
それはいつものように、頭に入ってくる声と同じ。
だが、妙にノイズのようなものがかかっていて聞こえづらかった。
こんなことは今まで一度もなかったのに。
「シニタクナイ……キエタクナイ……。コロサナイデ……ボクラハ……トモダチ……ジャナイカ……」
ソフィもアスベルと同じように進み出て、リチャードの傍に膝をつく。
「マタ……キサマカ……プロトス1……!」
「プロトス1って、英知の蔵で出てきた……」
「違うよ……わたしは……ソフィだよ。リチャード、友情の誓いしよう。そしたらきっと……」
ソフィがそっと手を差し伸べる。
険しかったリチャードの表情が和らいだ。
だが、
「……消えろ」
ルーカスの頭に響いていたノイズ混じりの声と、現実のリチャードの声が重なった。
「ソフィーッ!!」
ソフィの眼前に突きつけられたリチャードの剣から激しい光が放たれ、大爆発を起こす。
直撃を受けたソフィは吹き飛ばされ、地面に倒れ伏す。
リチャードは空高く舞い上り高笑いを辺りに響かせた。
「ソフィ、ソフィ! しっかりしろ! 目を開けてくれ、ソフィーッ!!」
「とうとうここまで来た……! もはや誰も我を止められぬ!」
リチャードからあふれる気が不気味な触手のような実体を成し、辺りに突き刺さる。
その人ならざる姿を見上げながら、聞こえなくなった雑音にルーカスは漸く理解した。
「……もう1人居る」
「は?」
「リチャードの中にもう1人居る」
「どういう……いや、それよりも今はとにかく逃げるぞ! このままだと巻き込まれる!」
「ソフィ! ソフィ!」
「兄さん急げ!」
「ぐっ……!」
アスベルは仕方なくソフィを揺さぶる手を離し、彼女を背負って走り出す。
「ルーカス! 教官! はやくはやく!」
「待って、あいつ放っておけな……」
「後にしろ!!」
次々に地面に突き刺さる触手をかわしながら皆は走った。
マリクに無理やり連れ出されたルーカスも船に詰め込まれ、一行は孤島を脱出する。
遠ざかる孤島の上には、天まで届くほどの巨大な繭が形成されていった。
「ソフィ、ソフィ! 目を開けてくれソフィ!」
ザヴェート港に戻り、アスベル達はソフィを地面に寝かせて取り囲む。
シェリアとヒューバートの治療により傷は綺麗になくなり、しばらくして漸く少女は目を覚ました。
「ソフィ!」
「気がついたのね、よかった!」
「ア……スベル……? シェリ……ア? わたし……どうしたの……?」
「リチャードに攻撃されて気を失っていたんだ」
「リチャード……どうなったの……?」
「リチャードは……いきなり湧き出した繭のようなものに飲み込まれて……でもまだ死んだと決まったわけじゃない」
「リチャード……。う……うああああああ!」
ソフィの体が光だし、苦しそうにもがき出す。
息を切らしながら空ろな目で皆を見上げるソフィは、「みんな……どこ……」と呟く。
「あなた、まさか……目が……」
「どこ……どこなの……」
「ここです、ソフィ」
「全く見えないのか?」
「……みんなの顔……少しずつ、ぼんやり……していくの……」
「攻撃を受けた後遺症かな……まさかこのまま放っとくと、いつかは完全に……」
「ソフィ……」
「だめ、薬も術も全く効かないわ」
「どうすればいいんですか? 何かいい手は……?」
「……とりあえずさ、暖かいとこに寝かせてあげたほうがいいんじゃないの」
ソフィを助け起こして、宿屋まで運び出す。
ベッドに寝かせると、少しは楽になったのかすやすやと眠る。
「アスベル、言いにくい事なんだけど……、ソフィは……あたしたち人間とは違う存在なんじゃないかな」
「パスカル……!」
「今の様子だって人間じゃ考えられない反応だよ。だから……」
「ソフィが人間だろうとなかろうと、苦しんでいるのは事実だ。諦めようっていう話なら俺は聞かない」
「ううん、むしろその逆だよ。ねえみんな、あたしが英知の蔵で話した事覚えてる?」
「私たちがいる所とは別にフォドラという所があって、そこからプロトス1が来たって話?」
「プロトス1は、大W石を狙っていたラムダという存在を阻止したとも言っていたな」
「もしリチャードの言う通りソフィがプロトス1だったら可能性が1つあるの。ソフィをフォドラへ連れて行くんだよ」
パスカルの提案に皆はぎょっとするが、本人は平然と続ける。