このほの33話あとがき

合同遠征篇、これにて閉幕。

といっても、主人公さんも他の皆も大分ぼろぼろになって帰ってきたので、回復するまでにまた色々とあるでしょう。ひとまずは生きて瀞霊廷に帰って来られましたね。おかえりなさい。

平常運転の亀更新に加えて更新休止期間もあったので、遠征出発から帰還まで物語中では三日間の出来事なのに、現実では一年四ヶ月が経過してしまいました。しかし書きたかったものは概ね書けたので一安心です。

ここまで読んでくださった方は、主人公の出生について「もう凡そ察しはついたよじれったいな!」と思っていらっしゃるかもしれません。筆者としても「本当にそうですよね!」って感じなんですけど、でも浮竹隊長がずるずるとだんまりのままここまで来ちゃってはっきりしなかったものですから……許してあげてください(責任転嫁)。

合同遠征篇は当サイト拍手お礼文
うつろう季節と死神篇』シリーズ(過去拍手ログ)とも関わりが深く、そっちも読んでいないとやや謎な箇所(無視しても問題ない程度ですが)もありました。まず掲載タイミングも話の時系列もかなり雑然としていてややこしかったと思うので、いつかに宣言した通り、時系列を整理するためのこんなページを作ってみました。名前変換ページからもリンクを繋げておきますので、今後もし確認したくなった際にはご自由にご覧ください。
因みに過去拍手ログseason1の更木隊長の話とかseason2の京楽隊長の話をお読みになっていると「まだここじゃ蒼純さん死なないんだな」ってことが分かる仕様になってたりします。


さて、以下は筆者による蛇足解説と自己反省文です。お時間のある方だけお付き合いください。

五、七、九、十、そして十一番隊の新隊長たちに課された流魂街虚討伐遠征。これは藍染隊長が虚と手を組むための接触の足掛かりにしようと仕組んだものでした。本来なら最後の合同遠征は五番隊と十一番隊になる予定が、色々狂って先陣切らされちゃったんですけどね!25話の最後の方で御本人も思い出し笑いしていましたが、実はそれより前の17話でも一心さんが主人公さんのお見舞いに来てくれた際にチラっと話題に挙げています。
四月上旬に五番隊、下旬に七番隊、五月中頃には九番隊が遠征に行きました。そして六月初頭にいよいよ十番隊と十一番隊に回ってきた訳です。藍染隊長の思惑通り、続けて流魂街に出動した死神たちの強い魂魄につられて、大物の虚が釣れました。唯一最大の誤算が自分が其処にいないということ。とはいえ、隊首会でもまったく自然に美味しい所を持っていって、部下の市丸を派遣することには成功するし、最終的には場を引き継いでしまうのですけどね……これを誰にも疑われずさらっとやってしまうんですから、恐い人です。

釣れた大物がザエルアポロっていうのも頭を抱えたくなりますね。しかもこの彼は兄イールフォルトとまだ同一であり、虚圏でも屈指の強さを誇る最上級大虚であった頃の彼です。
(※原作破面たちに関する時系列考察は以前このブログでちらっとやっていたりします。前のあとがきでオリキャラの話をしたときに挙げた記事と同じです)
初登場時には敢えて名前を出さず、読んでいく内に「アイツだ!」って分かるような書き方をしてみたかったのですが、出来ていたでしょうか……?何ぶん自分の小説を客観的に評価するのが苦手なので、けっこう心配です。

悪趣味な最上級大虚(桃色の悪魔)=ザエルアポロ・グランツ
遊びで実験材料を提供する大男=ヤミー・リヤルゴ
純白の蜘蛛型中級大虚(道具)=ロカ・パラミア
ブヨブヨ下級大虚(大蛸型)=アーロニーロ・アルルエリ

……となっています。因みに、この33話に登場した椿色の髪をもつ人型虚は当サイトオリジナルキャラクターの一人です。プロットでは第四章終盤にちらっと出して第五章から本格出演するはずだったのですが、あんまり出番が遠すぎるのでもう出て貰ってしまいました。ですが主人公さんと海燕さんに一つ謎を突き付ける役割を果たせたので良しとしましょう(?)。

オリキャラといえば、この合同遠征篇では金矢、閃、太、持地さん、それと名もなき十番隊隊士にも活躍してもらいました。一人は監視用の菌を飲まされたうえに左腕を失くし、一人は土手っ腹に穴を開けられ、一人は虚化実験の餌食となって自害を選び……残り二人は元気ですけれど。原作キャラクターにもまぁ酷い怪我を負わせている筆者ですが、これらの役割は特に、オリキャラでないと中々好き勝手できませんでした。
果敢に戦った彼らは私の中では立派な英雄です。『このほの』を読んでくださったあなたが少しでも心を動かしてくださったなら、それ以上に幸いなことはありません。生き残っている彼らにはこの先も何処かに大切な出番が待っていますので、温かく見守ってやってください。

ところで、血を流して戦いに明け暮れる話のなかで色恋模様を見せつけてきた異色なやつがいましたね。ええ、弓親さんのことですね。割と時間をかけて表してきたつもりですが、どうでしたでしょうか。これも筆者自身は上手く描写できていたかどうかイマイチよく分かりません。
彼は主人公さんと6話で初めて出会い、白焔の力を間近で目にして、その不可思議な点に誰より早く気付きました。そして戦う彼女に自分たちと同じものを感じて仲間に誘い、同僚になってからは仕事からご飯のことにまでさりげなく気を回してくれるようになります。十一番隊の不穏分子たちから守るために陰で動いてくれていたのも彼でした。
多分、これまでで彼女が頑張る姿を一番「よく見ていた」のは彼だったんじゃないかなぁと思います。最初は「不慣れで大変そうだし手助けしてあげようかな」くらいの気持ちだったのが、少しずつ、だんだん目が離せなくなってきて、二人で窮地に陥って、嗚呼、とうとう落っこちてしまったのでしょう。そんなつもりじゃなかったのに、南無三。

19話において十三番隊で五月の花と記念撮影会した時に「そういえば弓親がお香くれたんですよ」という話を主人公から聞いた海燕さんは、その後七番隊の裏山に行って弓親に鬼道を教えつつ「香り贈るとかやっぱ好きなんじゃねぇか」とか揶揄っていそうですね。



では、ここからは各話タイトルや他の話との関わりについてメモを残しておきます。

『悠かならざる征途』
「遥かなる征途」の捩り。穏やかにはいきませんよ、という不穏な意味を込めて。

『夜駆け反攻記』
「夜駆け」は「夜討ち」・「奇襲」とも言い換えられますが更にそのまま「夜を駆ける」とも掛けたりなど。「反攻記」は「反抗期」っぽく、返り討ちに打って出る記録の意。
ここで大活躍した金矢は過去拍手ログseason1の一角さんの話と大前田副隊長の話にも登場しています。

『火蓋と血路の露払ひ』
火蓋は濡れていたら切って落とせませんから、乾かしておかなければなりません。血路を開くにも、誰かが立たなければ始まりすらしません。露払いしてさあ始めるぞ!……そんな雰囲気。

『渇けば切るがよし』
前話と連動して「火蓋」が乾いたなら切って落とせ、「血路」が乾いても戦いを「渇望」するなら斬ってまた血で濡らしてしまえ、とかそんな感じ。
ザエルアポロのキャラソンを聴いたことはありますか?始まる総勢強制SHOW!

『散らせ蜘蛛の子綾吊らせ』
「蜘蛛の子を散らす」という言葉があります。しかし劇中では死神を散らすのが蜘蛛、その蜘蛛を「操る」のはザエルアポロだけど実際に「綾吊る」のはロカ。ザエルアポロ>ロカ>死神。皮肉をたっぷり込めて。
蒼純さんが掴趾追雀で『「霊圧の質をよく覚えていて探しやすそうな人」』としてあげたのが隊長二人は分かるけど何故あと二人が主人公と一角なのか?という疑問は、過去拍手ログseason1の蒼純さんの話に目を通していただけると解決します。

『窮まる灯の守り何を噛む』
灯=主人公。灯の守り=弓親。何を噛むかについてはここで言葉遊びもしましたが、ここまでくればお分かりかと思います。
A.瑠璃色孔雀の花
あとでムカついて爪も噛んでいそうですが。

『或る戰の特称命題』
「特称命題」とは簡単に言えば「ある〜とは〜である」と述べることです。劇中では「戦いとは〜である」ということをロカ、ザエルアポロ、閃がそれぞれ語り、更木と一角は体現しています。そして蒼純は護るための戦いに赴こうと走る一方、市丸は戦ってすらいません。捨ててきました。
「戦」ではなく「戰」にしたのは原作リスペクトです。

『十死一生に師父を見た』
「十死一生」は「九死に一生を得る」と同じ意味です。十に及ぶ走馬灯の後、「十」を背負った「師父」が来たお蔭で一生を得ました。「師父」とは師匠と父、またはそのように尊敬する人のことです。21話『鑑みること鏡に如かず』での一心さんと主人公さんの遣り取りに思いを馳せていただけたら嬉しいです。
走馬灯の中で研究室のお花がどうこう言っていたのは過去拍手ログseason2にある涅隊長のお話に目を通すとお分かりいただけます。

『縒り糸転りと片蛇腹』
合同遠征篇の中で一番雰囲気でつけたタイトルがコレです。裁縫や織物のモチーフは今後もぽつぽつ出てきます。いつかその理由もご紹介できる日が来ますように……。一応「蛇」の一字は市丸に係っています。
市丸のキャラソンを聴いたことはありますか?彼の上手な口笛が聞けますよ!

『発たされし帰路』
「岐路に立たされる」の捩り。
藍染「さぁ合同遠征部隊は帰った帰った」

『逆巻ひて逆捩ぢ』
海燕さんの斬魄刀『捩花』の解号は「水天逆巻け」。「逆捩ぢ」は問い詰められるべき人が逆に詰め寄る、という意味の古語です。合体させちゃいました。ノリで。
勇音さんと主人公さんの友情あれこれが気になった方は、過去拍手ログの勇音さんの話をご覧ください。


……こんな長ったらしいあとがき、ここまで読んでくださった方はいらっしゃるのでしょうか。最後までお付き合いくださいまして誠に有り難うございました。お疲れ様です!

京楽「次回『もう逃げられない!?どうする浮竹、頑張れ浮竹、腹括れ浮竹!』」

(※過去拍手ログseason2『青やかなる梅の辜』参照。そして次回、そんなタイトルでも中身でもありません)

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BLEACH 2020/06/25
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