純粋で残酷な、(3)

「この右手にはね、君と同じように真の紋章が宿ってる。君のものとは正反対の性質をしている、ね」

君の持つその紋章は「守る」ためのもので、僕の持つ紋章は「奪う」ためのもの。

生と死を司る紋章、という正しい名より「ソウルイーター」という俗称のほうがこの紋章のことを正しく表した名のような気がするのは気のせいではないだろう。

「この紋章はね、宿主の親しい人の魂を喰らうんだ」

最初は解放軍を組織した力強い女性を。
次は母代わりの金髪の従者を。
最愛の父を。
そして最後に親友を。

帝国の解放を見届ける前に亡くなってしまったあの軍師ももしかしたらこいつが喰ってしまったのかもしれない。

「テッドは、ずっとひとりでこの紋章を守ってきた。300年間もずっとひとりで」

案外寂しがり屋な奴だからきっと辛かっただろう。

元来明るい奴だったから本当は誰かを傷付けるようなことはしたくなかっただろう。

意外と泣き虫だから自分の無力さに幾度も泣いたことだろう。

「今でも思うんだ。僕にもっと力があったら、テッドは今でも僕の隣で笑っていたんじゃないかって」

そんなことないって分かってるのに。

今でも夢に見る。

雨の降りしきる夜。
窓から見えるのはどんよりと重い色をした曇り空。
物理的な獲物では決してつかない無数の傷からはとめどなく血が流れている。
いつもは馬鹿みたいに明るいくせにその顔には笑顔の欠片さえ見えない。
「申し訳ない」そう言って涙を流すんだ。

僕はただ立ち尽くすだけだった。
彼の必死の形相に掛けるべき言葉が見つからなかったんだ。

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