飾りでしかないのなら
難しいことはよくわからない。
だけど、あの軍師がじいちゃんの影を必要としているのはよくわかった。
もしくは、じいちゃんの右手にあったらしいこの紋章が。
みんなが必要としているのはぼくじゃなくて、
「英雄」と呼ばれたじいちゃんの存在を背負うひと。
だから、それはぼくじゃなくてもいいってこと。
熊みたいな心優しい傭兵団長もだから僕に無理強いをしないのだろう。
あの軍師が考える時間をくれたってのもそれが理由なのかもしれない。
正直いうと、ぼくらは「裏切りもの」と呼ばれていたじいちゃんの姿しか知らない。
もしくは無いものとして扱われていたじいちゃんの姿しか。
だから、「英雄」のじいちゃんなんて想像することもできない。
じいちゃんは優しくて、厳しくて。
たぶんぼくはじいちゃんのようにはなれない。
「英雄」とよばれたじいちゃんのようには絶対に。
それでもここで先頭に立つことがじいちゃんとつながることになるのなら、
ぼくは喜んでそこに立とう。
飾りでしかないのだとしても。