高校一年 04/09(水)


授業をサボるという行為は初めてだった。昼休み、担当の先生に一氏くんと一緒に呼び出された。怒られるのも初めてだ。何を言われるんだろう、と不安になりながらも、実は少しだけ、ワクワクしてた。教員室に向かう間一氏くんはまた不機嫌オーラ全開だったけど、わたしは終始にこにこだったと思う。でも、先生のところに行った瞬間、一氏くんは大声で叫んで、びっくりした。


「はぁっ!?オサムちゃん!」


先生に指を差し、目を真ん丸にしている。知り合いなんだろうか。ここでも疎外感を感じなければいけないらしい。ちょっと、この学校嫌だなぁ…


「一氏はほんまえぇ子やったのになぁ。あの頃の一氏は何処へ」
「ちょ、え、なんでオサムちゃんおんの。中学教師やろ?」
「あんなぁ、感動の再会やろ?そない言い方あかんわ。ちゅーか、なに俺の授業サボっとんねん。コレか。このかいらしい子は一氏のコレか。」


先生は自分の小指を立て、一氏くんに突き出した。わたしはあわわわと焦って慌てていろいろ否定とかしたけど、先生はニヤニヤ笑ってるだけで、身体中がかぁって熱くなった。一氏くんも、何か言ってほしい、とちらちら彼を見たけど、なんかだるそうにしている。わ、わたしだけだ、こんなにドキドキしてるの…。そりゃそうだよね。一氏くん、わたしのこと嫌いだもんね。


「ちゅーか、なんでオサムちゃんおるんすか。」
「あぁ、転勤や!転勤!」


アホや、と一氏くんはぽつりと呟いた。いたたまれない。わたしは黙り込んで俯いた。


「で、何の用やねん。」
「おぉ。高校テニス部はマネージャー一人増やしたいんやけど。誰でもえぇからみんなで相談して決めてや。」
「……嫌やで。」


今テニス部の話とかしないでほしい。わたし全く関係ないし、話の内容もイマイチ分からない。先生、その話するんだったら、わたし要らないじゃん…!


「白石は賛成やったんやけどなぁ。」
「けど俺は反対や。」
「…そか。まぁ、そういうことやから、一週間以内に決めぇや。」


話、終わったのかな。恐る恐る顔を上げれば、先生のニヤニヤしたのではなく普通の笑みを浮かべていた。


「話は終わり。ほい解散!」


とくに説教とかはされなくて、腑に落ちないんだけど。わたしは一氏くんの後に続いて教員室から出た。一氏くんは何も言わず、振り向きもせずに先を歩く。わたしは思わず足を止めた。でも全然気付かないでどんどん先に行っちゃって。視界が歪んだ。一氏くんはすごくて、やっぱり憧れるけど。その背中は遠くて、追い掛けても全然届かない。だんだん小さくなる一氏くんの背中。なんでかな。すごく悲しくて、届かない。視界の歪みは最大級。ごめんね、菊丸くん。約束、守れなかった…