高校一年 04/09(水)


自分の席が恋しいわけじゃない。身体が鉛みたいに重くて、屋上なんて全然行きたいと思えなくて。わたしは入学以来初めて、自分の席でお弁当を食べた。やっぱり親友はお弁当かな、なんて内心嘲笑。隣の席をちらりと見ても、そこに菊丸くんはいない。苦しい。菊丸くんが大好きで、会いたくて、助けてほしい。わたしはこうやって頼ってばっかりで、だから

変われないんだ。


「フンが切れた。」


くすくすと笑う女の子の集団が窓際にいた。わたしのこと、言ってるのかな。そうだ、さっきの男の子にも言われた。


「テニス部目当てで折原に近付いても、無理やったんやろなぁ。」
「あたしら全員無理やったしな。」


あたしら、全員…?わたしはお弁当から視線を上げ、集団を見た。中には同じクラスの子もいるけど、たぶんほとんどが違うクラスの子。もしかして、みんなテニス部狙いで早苗ちゃんに近付いたのかな…?まさか、そんなことあるわけない。


「弥栄さん!」
「え…白石くん?」
「屋上、けーへんの?みんな待っとるで。」


教室がざわつく。ほっといてくれていいのに、なんて嘘でも言えない。うれしい。誰かが来てくれるなんて思わなかった。でも、疎外感を忘れられない。


「わたし、行ってもいいのかなぁ…」


お箸をお弁当の上に載せ、手を机の下におろした。膝の上でこぶしを作っていた。びっくりするほど強く。でも、まだ何日かしか一緒にいなかったけど、わたしはもうみんなのことが大好きで。どうして屋上に行きたくないのか、何に悩んでいるのか自分でも分からないのに。何をそんなにぐじぐじとためらっているんだろう。疎外感、なんて中学のときは常に感じていたものなのに。でも白石くんは、そういうわたしの得体の知れない想いを簡単に打ち砕いた。


「弥栄さん、早苗と一緒にマネージャーやらへん?」


ざわざわって、教室中が騒いでいて、同時にわたしの思考も止まった。ぐるぐると脳内を駆け巡る白石くんの言葉は、破壊力絶大。


「……ぇ」
「俺の独断やけど。顧問にな、マネもう一人増やせ言われたんや。これは一部員としての考えなんやけど、俺は弥栄さんにやってもらいたい。」


押し付けられる雑用じゃなくて、誰かに必要とされる雑用がしたいって何度思ったことだろう。こんなことを言われたのは初めてのこと。真剣な表情をしてる白石くんは、テニス部だった。顧問って、今さっきの帽子かぶった人かな。


うれしかった。白石くんの言葉は純粋に、うれしかった。でも、


「わたし、…マネージャーは……やりません…」


か細い声が、わたしの性格を表していた。でも、見えちゃったの。4組の教室の入り口で、早苗ちゃんの表情が曇っていたところ。その隣で早苗ちゃんを一氏くんが慰めていたところ。わたしが入り込める隙間なんて、何処にもなかった。