中学二年 12/19(火)


早苗は俺から見ても不器用で、女の中でうまくやれてへんのは明らかやった。たまに呼び出されていろいろ文句言われとったみたいやし。そういうんを見とったから、二年の冬にみんなで喜んだんや。


「ユウジ!聞いてやっ!あたし、友達できたで!」


こん頃はまだ白石とは付き合ってへんかったし(けど惹かれ合っとたかな)、一番付き合い長くて一番近いとこにおる俺は、たぶん早苗の一番やった。あいつは俺のとこ来て、今日はあの子と何をした何を話したっちゅーどうでもええこと楽しげに話しとって。せやから俺も安心しとった。


「マネージャー、一緒にやることになった!」
「よろしゅう!」


早苗の隣で笑顔を振り撒く女に、俺は感謝しとった。友達になってくれておおきにって。アホみたいに感謝しとった。けど、実際はそううまくはいかへん。


「白石くん、はいタオル!」
「おおきに!」
「今日も調子よかったね!がんばって!」
「おん。マネージャー業はどうや?慣れた?」
「ええ調子!早苗もみんなも優しいし!」


俺らに、主に白石に笑顔を振り撒く女。俺はやっとったダブルスを中断し、コートから出た。


「ちょ、ユウジ!?」
「あーあ、謙也さんのせいや」
「財前!?俺ちゃうやろ!」
「ユウくん…」


いろいろ言われとったけど、全部無視。ユウジ?、と白石に愛想振り撒く女も無視。馴れ馴れしいんじゃボケ。もうこの違和感を感じずにはおれんかった。


「早苗…?」


テニスコートから少し行ったとこにあるグラウンドの脇の水道。そこで両腕の裾を上げて、テニス部のタオルを洗っとる早苗がおった。近付いてみると、水が冷たいんか、手が真っ赤やってん。


「あれ、ユウジ?どないしたん?」


俺が水道の蛇口捻って水止めると、困ったように顔を上げた。胸が締め付けられた。あぁ、なんや気付いとったんか。


「…手ぇ真っ赤やん。」
「ん。まぁしゃあないなぁ。みんなのマネージャーなんやし。」


思い返してみれば、早苗はあいつがマネージャーになってから洗濯とかドリンク作りとかしかせえへんかった。タオルやドリンクが俺らの手に渡るとき、それはいつも早苗からやなかった。


「……すまん。」
「えぇ?どないしたんユウジ。らしないなぁ」
「…気づかんかった。すまん。」
「ユウジ…」


早苗は泣いとった。いつも負けん気で強い女やったのに、泣いとったんや。抱きしめたなったけど、それは白石の仕事や。俺やない。


「また、ダメだった…」
「…もう、ええんやないかな。」


これが初めてやない。何回もあったことやから。もう早苗が傷つくん見たない。


「早苗には白石もおるし、俺らもおるやろ。」


そう言ったら、早苗は泣きながら頷いたんや。せやから、俺は早苗のために…