高校一年 05/23(金)
部活はもう最悪だった。早苗ちゃんはずっと落ち込んでて、白石くんは機嫌悪くて、わたしは居心地悪いし。更に雨が重なって、今日は体育館の二階で筋トレ。部長が、せっかく考えた練習メニューが…、と嘆いていた。じめじめした空気が、わたしの思考回路まで湿らせていた。
「舞、あたしドリンク作ってくるわ。」
うん、と返事をする前に早苗ちゃんは行ってしまった。わたしはその後ろ姿を見て、小さくため息をついた。
「辛気臭いな、おまえ。」
目の前を覆った影に、顔を上げると一氏くんがいた。反射的にのけ反る。すると、すっごい機嫌悪そうに額にシワを寄せていた。だ、だって一氏くんが話し掛けてくるなんて、もしかして初めて?ってぐらい珍しい。ちょっとだけ、ドキッとしたけど、
「あのさ、早苗、何かあったん?」
あぁそっか。一氏くんはいつもいつも早苗ちゃん。頭の中、それしかないんじゃないのかなって思っちゃうくらい。なんだか、自分がすごく惨めだった。
「……さぁ。」
「はぁ?何やそれ。」
知らないよ。自分で聞けばいいじゃん。早苗ちゃん早苗ちゃんって、馬鹿みたいにそればっかり。そんなに好きなら、さっさと告白すればよかったじゃん。白石くんの手伝いとか、しなきゃよかったじゃん。言えないようなことばっかり、頭に浮かんではどこかへ行った。なんでかな、すごく泣きそう。わたしは今にもつかみ掛かろうとしている一氏くんを置いて、部長のところに行った。力強く、拳を握り締めているのが見えた。
「部長、」
「んー?どないした?」
「お手洗い、行ってきます。」
「ん?おお、行ってらっしゃい。」
筋トレをしながら、部長はひらひらと手を振った。逃げた。弱いわたしは、一氏くんから逃げた。でも、
「あ、弥栄さん。」
階段を降りようとした時、下から上ってきたのは白石くんだった。咄嗟に目をそらして通り過ぎようとしたけど、白石くんはあろうことかわたしの腕を掴んだ。
「弥栄さん、話あるんやけど。」
「え…わ、わたし?」
身が縮こまった。だって白石くんがわたしに話?早苗ちゃんのことだろうけど。また聞かれたら、次はもう知らない振りなんて出来ない気がした。