高校一年 04/14(月)
本日、4月14日は白石の誕生日。もうなんかの祭なんかっちゅーくらい、四天宝寺は騒がしい。主に女の声で。何故かいつもより気合い入って色めき立つ女どもに言ってやりたい。白石は早苗の彼氏やで、って。そんなん、自分に言い聞かしとるようなもんやけどな。アホ。見せ付けのためやろうけど、早苗は今日一日白石とひと時も離れんやろ。若干幸せそうな二人を横目に、俺は教室を出た。向かう先は階段の踊り場の窓。あそこは人通りも少ないし、風通しもよくて和む。まぁ、何故かあの窓の下が呼び出しスポットになっとんのが腹立つけど。
窓を開ければ、ぶわっと風が舞い込んできた。おん、きもちい。窓の外で花を散らした桜の木が枝葉を揺らしとった。
(白石の誕生日か)
昨日は日曜やったし、俺もプレゼントは用意できた。って言っても、俺の場合はお笑いDVD以外やるもんないけどな。去年はお笑いに関してまだまだな白石を思って俺のお気に入り『お笑いキング』をあげた。中古やけど。小春は確かコスプレ衣装のナース服やっとったな。ついでに今年は王道メイド服らしい。去年部室で白石に早苗ちゃんと使ってねと語尾にハート付く勢いで渡しとった。部日誌書いとった早苗は顔真っ赤にして…、懐かしいなぁ。
「ユウくん?」
窓枠に肘を立て、頬杖をついて物思いにふけっとった俺の背中にかけられた声。小春やった。小春は何故か少し寂しそうに、俺の隣に来て顔を覗き込んだ。小春、愛しとる。
「大丈夫?」
「小春、愛してんで。」
「ほんまに、大丈夫?」
「なんや小春ぅ〜、たまには俺の愛に応えてやってや。」
小春が何言いたいんかは分かる。去年も、一昨年もそうやったから。小春はいつも、俺が悲しいときにはそばにおってくれる。せやから、大好きなんや。
「……もう、恒例やなぁ」
「ん?」
「こうやって、白石の誕生日に二人がずっと一緒におって、それ見て落ち込む俺を小春が慰める。毎年恒例やろ?」
言ってて自分が、情けない。俺、もう諦めたはずなんやけど。なんやろ、もやもやする。
「…けど、ユウくん今年は落ち込んでへんやろ?」
すとん、と胸に落ち着く小春の一言。あれ、なんやおかしい。恐る恐る小春の顔を見ると、いつもの愛しい笑顔を作っとった。なんやろ、落ち着く。そんで、今年は落ち込んでへんって言葉に妙に納得。せやって、去年も一昨年も、白石の誕生日は俺にとって嫌な思い出になっとる、はずやし。や、みんなでパーティーとかは楽しいんやけど。そうやなくて、早苗関係で。あれ?でもちょっと待ち。俺、さっき去年の早苗を思い出してなんて思った?懐かしい、って…
「ユウくんなぁ、気付かんうちに、早苗ちゃんより舞ちゃん気にしてんねんで。」
「はぁ?それはない。ありえへんわ。」
「え〜?やって、舞ちゃん、うざったいやろ?」
「へ?こ、小春?」
小春はこんなん言う子やないで?好き嫌い激しい俺を横で諌める役やろ?小春がうざったいとか…
「アタシは思ってへんで?今はユウくんの話してんねん。」
「あ、納得。」
「舞ちゃん、嫌いな気持ちも分かるわ。昔っから人見知り激しいし、帰省やって毎年毎年一年間ブランクあるから初対面のときみたいにぴりぴり緊張しとったし。正直、はよ慣れてくれへんかなぁってしんどいときもあったで。今は全然そんなんあらへんけどな。せやから、あぁこの子ユウくんの嫌いなタイプやって思とった。」
「ん、否定はせーへん。」
「けどな、今はもう昔の面影全くないんやで?」
え、あれでか?どんだけやねん。確かにあいつはうざったいけど、それが早苗より弥栄を気にする理由にはならん。っちゅーかそないなことあらへんし。俺の気持ちを汲み取ったように、小春は言葉を続けた。さすがや。
「実際なぁ、クラスでおるときとか、早苗ちゃんに対する切ない想いより、舞ちゃんにイライラする方が大きいやろ?」
少し考える。そんなこと、ないような気も……いや、そんなこともあるんか?
「…分からん。」
「ほら!今まで誰もユウくんの心に入り込む女の子おらんかったやろ?」
「おん、小春でいっぱいや。」
「嫌い嫌い言うても、自称一氏ファンクラブの子らは少しも気にならんやろ?」
「……無視か。」
「それでええんやで、ユウくんは。」
どれでええんや。結論もないのに諭すように言うと、小春はスキップで階段を下りてった。え、話終わり?妙にもやもやしたまんま、俺は視線を窓の外に戻した。
早苗のことは特別。弥栄のことは嫌い。それで、ええんかな。ほんまに?小春は俺に謎だけ植え付けてさっさと姿をくらましてもうた。