高校一年 05/23(金)


俺はどっかに優越感を持ってたんかもしれん。校舎の裏で二人っきりっちゅーシチュエーションも、女が嫌いな俺にとっては特別なことやったし、弥栄にとっても…。そう、思い込んでたんかな、俺。せや、あいつ、菊丸のやつが好きなんやろ?俺には何の感情も抱いてへんやん。う、わ…俺、惨めやなぁ。


って!ちょお待ち!な、な、なんか、俺があいつんこと気になっとるみたいやん。おかしい。そんなんおかしい。ちょお落ち着け。落ち着けや。よ、よし、精神統一のためにちょっとモノマネをしよう。


じゃあ…立海の柳生。あいつなら「落ち着きたまえ、仁王くん。」とか言ってそうやな。冷静やし、きっと俺の乱れた心を鎮めるやろう。えー、じゃあ名前をかえて、


(落ち着きたまえ、一氏くん。)


きっしょ!柳生に一氏くんとか言われるとむずむずする。こしょばゆいわ。っちゅーかみんな俺のこと名前で呼ぶしな。あ、けど、弥栄は「一氏くん」やな。…って!落ち着け!モノマネしとる意味ないやん!あいつのことは今は考えない!も、柳生おわり!次!


えー…せやったら、次は…青学の不二!あのにこにこ顔で俺を落ち着かせてくれ!


(とりあえず、落ち着こうよ。ね?)


…俺、あのにこにこ顔、苦手なんやねんな…。やって、怖いやろ?有無を言わさぬ「ね?」が怖いっちゅーねん。う〜ん、逆にこわなってきたわ。明るいやつにしよ。明るいやつ…菊丸?絶対イヤや!弥栄の好きな男やろ?イヤやわ。べつに深い意味はないけどな!明るいやつはやめよ。んー…


やったら次は、またまた立海で…真田!真田はどうや?あの迫力で俺を落ち着かせることやろう。よし。


(落ち着かんか!このたわけがっ!キエー!!)


…なんやろう、この感じ。脳内でも唾が飛んできよった。迫力ありすぎるわ。


(ちょっと待ってよ、真田。そんなんじゃ全然ダメ。)
(む、幸村。)


ええぇぇぇ!?ちょ、待て、幸村?なんで?幸村は呼んでへんわ!真田に釣られてお召しされんでええわ!帰れっ!神奈川に帰れっ!


(なに?一氏、真田はよくて俺はダメなの?)


ダメやないです…。としか言いようがないわ。むっちゃにこにこしとる。真っ黒なにこにこ顔を俺に向けとる。なんや…不二と幸村って同じ空気発しとるな。


(で、なに?一氏はその弥栄さんって女の子が気になってるの?)


はぁっ!?ちゃうわ。全然まったくちゃうわ!ちゃうちゃうちゃう!ちゃうねん!


(俺、その『ちゃう』っていうの、好きじゃないんだけど。答えはイエスかはいにしてよ。)


は、はい…。


(うん、ほらね?気になってるんだ。やっぱり。よし、じゃあ一氏が認めたところで、俺らはそろそろ帰ろうか、真田。)
(う、うむ、分かった。)
(じゃあね、一氏。弥栄さんと頑張って?)


…神の子って、人の脳にまで入り込めるんか?


って!今何時!?ベッドに入って何時間たった!あかん…明日朝練あるのに。


…寝よう。