高校一年 05/24(土)


府立高校は土曜も授業があるときがある。第二土曜日と第四土曜日。今日は四週目の土曜やから、普通に授業があってん。なのに朝からだるい。昨日寝たの遅かったし…や、でもあれは夢やったのかもしれん。っちゅーか、あないなことしてたとか、誰にも言われへんなぁ。恥ずかしすぎやわ。それに幸村に変なこと言われたし。なにが、気になっとる、や。全然まったくこれっぽっちも気にしてへんわ。はぁ…


「よっ、一氏!」


背中をバシッと叩かれ、振り向くと2組のテニス部員(名前知らん)がおった。なんやめっちゃニヤニヤしとって気持ち悪い。俺、背中叩かれるほど仲良かったか?一、二回くらいしか話したことないで?


「聞いたぞ、一氏〜」


馴れ馴れしく肩に腕を回してきたから、すっと避けた。なんやねん、ほんま。けど、そいつの何気ない一言が、頭ん中を一掃した。昨日の幸村のことやって、どっか飛んでった。


「一氏、折原さんのこと好きなんやって?」


一瞬やった。そいつの胸倉掴んで、近くの壁に押し付けた。汗で手が滑る。けど、そんなんどうでもええ。


「なんで…」
「ちょ、落ち着けや」
「なんでお前が知ってんねん!」
「い、今…すごい噂やねん。白石の彼女が三角関係って…。とりあえず離せって。」


嘘、や。力が抜けて、そいつは俺の腕からするりと抜けてった。そのまま誰もおらん壁をガン、と殴る。一番最初に思い浮かんだのは、弥栄がこれを知っとるかどうかってこと。早苗のことは二の次やった。けど納得。やから最近避けられとったんか。あーバレるくらいやったら、告白しとけばよかったなぁ…


「…なんやろなぁ」


誰もいない廊下に、俺の沈鬱な声が響いた。なんで、どっから漏れたんやろ。小春も財前も言い触らす訳ないもんな。なんやろ、今すっごいむなしい。ずっとこの想いを隠して友達やって来て、やっと過去に出来たら、今度は根も葉も無い噂でバレてもうたなんて。俺、何してんやろ。


誰にも会いたない。放課後でよかった。今日は雨で部活も休みんなって、後は帰るだけやった。小春とも約束してへんし、ほんまによかった。俺はぼんやりしたまま、雨の中に出た。行き先は校舎裏。常連の呼び出し連中も弥栄も、こない雨やったら来ないやろ。誰もおらんとこ行きたい。雨に打たれて、何もかも流してしまいたい。五月は水浴びにはまだ早い。少しぶるっときながらも、俺は壁伝いにしゃがみ込み、弥栄がようやってたように、膝を抱えて顔を埋めた。