高校一年 07/30(水)


「百八式…波動球!」


石田くんの撃ったビームが、忍足くんの操作するキャラクターに当たって、画面の端まで吹っ飛ばされたところで、忍足くんはコントローラーを投げ出して、そのまま布団にねっころがった。


「あかーん!銀、強すぎやわ」


残りの三人(石田くんと白石くんと一氏くん)はカチャカチャと手を動かしながらテレビの画面に見入っていた。


「忍足くん、負けちゃったね。」


ねっころがったまま、ごろごろと転がってわたしの隣まで来た。


「昔従兄弟に特訓してもろたのにな。」
「従兄弟?仲良しなんだね。」
「んー…どうやろな?」


忍足くんは昔のことを思い出すように、視線を宙に浮かしている。ざわめきが遠くに聞こえて、わたしも少し、東京のことを思い出す。こんなに楽しい四天宝寺での生活が、東京でも出来ていたら。わたしは何も迷わず東京に残ったんじゃないのかな…


「寂しい?」
「え?」
「舞ちゃん、いま寂しそうな顔しとったで。」
「そ、そんなことないよ!すごく、楽しい。」
「せやなぁ…、ユウジもおるしな…」


そんなことを呟いた忍足くんの方が断然寂しそうなのに。え?って聞き返す前に、周りの喧騒が戻ってきた。


「あ、おい白石!卑怯やぞ!」
「よそ見しとんのが悪いわ!」
「あぁ!もう見てられへん!ユウジ交代しいやっ!ついでに飲み物買ってきて」
「はぁっ!?」


コントローラーを奪い取られたあげく、早苗ちゃんにパシられる一氏くんが不憫に思えた。可哀相になぁ、なんて他人事のように考えていると、早苗ちゃんが勢いよくこっちに振り向いた。


「舞、ついてったり」
「えっ?わ、わたしも?」
「あたしカルピス!蔵は?」
「あーせやったら俺は緑茶。」
「ワイも同じの頼みます。」
「アタシもカルピスー!」
「俺はコーヒーお願いします。」
「俺シークヮーサー!昨日誰かさんに取られたし!」
「頼むで、ユウジ!舞!」


なんだかもう、無理矢理感が満載すぎて…。なのに一氏くんはぶつぶつ言いながら財布を持ってさっさと部屋から出てってしまった。


「舞も、はよ行き?」
「えっ?う、うん…」
「ちゅーか!あんた謙也といちゃつきすぎ!」
「…えぇっ?」


そんなつもりは微塵もなかったから。わたしも慌てて立ち上がって、部屋を飛び出した。裸足のまま廊下に出て、一氏くんを探す。すると、階段に向かって歩く後ろ姿を見付けて、何の迷いも無しに走り出した。


「ひと、うじ、くん!」
「おわっ!なにほんまに来たん?ええよ俺行くから、部屋戻れ。」
「えっと…に、荷物持ち!ね?」


真夜中の廊下は静かすぎて、わたし達の声が響き渡る。あれ、また突き放されるのかな、なんて心配はもうしたくないのに。不安が胸を駆け巡る。


「……分かった。頼むわ。」


がちがちに緊張していた肩から力が抜ける。と、同時に一氏くんはまたすたすた歩き出して、わたしは慌てて隣に並んだ。