「何処だここは」
「あー、幻の部屋だよ。提示されたお題をクリアしないと出られないの。あ、これお題『足を一本差し出さないと出られません』だって」


数日前、諏訪さんと閉じ込められた部屋に今度は太刀川と閉じ込められた。任務が終わり、帰ろうと思っていたところでばったり太刀川に出会ってしまい、そのままランク戦に連行されている途中だった。
太刀川は最初キョロキョロしてたけど、私が妙に落ち着いているのを見て不思議に思ったみたい。なんでそんなに落ち着いているのかと尋ねてきたので、数日の出来事を話した。恥ずかしいからお題の内容とかは言わなかったけど。

ちなみに今回のお題は比較的見つけやすいところに書いてあったので、すぐに見つけることが出来た。ボーダーだからこそなのか、ちょっと物騒なお題でびっくり。足を一本差し出すって、足を切れってことだもんね。トリオン体じゃなきゃ出来ないことだもの。


「足一本って……トリオン体で良かったな、お前」


いつのまにか孤月を構えた太刀川が、私の足をジーっと見つめていた。


「え、なに。私の足切るの?」
「え、逆に俺の足切るのか?」


嘘だろ?とお互いにお互いの顔を見つめあう。


「私、痛覚設定高いの」
「いつもと変わらないだろ」
「レディに優しくしてよ」
「どこにレディがいるんだよ」
「ここだよ」
「お子さまの間違いだろ」
「喧嘩売ってるの?」
「事実だろ」


つまらない言い合いを続けるうちに闘争心に火がついてきた。太刀川の目にも、微かに火が灯ったように見える。


「ヒゲが譲らないなら強硬手段とる」
「ああ、いいぜ。差し出すのはお前の足だ」
「足ちょん切って跪かせてあげる」


私もトリガーを起動して、斬りかかった。少し狭いけど、もしこの部屋が壊れたら足を切らずに外に出れるわけだし、もともとランク戦をしようとしてたのだから、場所が変わっただけだと思うことにした。

結局部屋を出る頃には2人ともボロボロで、足一本とかいう状態ではなかった。むしろ同じくらいボロボロになったから、2人とも足一本置いてきた。勝負はつかなかったけど、これで平等だ。

というか、あの部屋すごい。あんなに太刀川が孤月ぶん回したり、私がメテオラぶっ放したりしたのに傷一つついてないんだもん。どういう構造してるの。

足を一本差し出さないと出られない部屋
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