ヒーローズ:ライジング



「長閑だねぇ」


那歩島に到着した感想はこれに尽きる。本島の真ん中あたりに山があり、その裾に集落が広がっている。ぽつんと繋がっている小さい孤島には遺跡のようなものがあった。宿泊施設の此処に到着するまでの間に見えたのは海、畑、畑。まさしく『長閑』という言葉が似合うところだ。


「海に入りたーい」
「芦戸くん!ここには遊びに来ているのではないのだぞ!ヒーローとして島民の皆さんの暮らしをしっかりサポートすることが俺たちがここに来ている意味であり…」


長い飯田くんのスピーチが始まり、三奈ちゃんが到着早々口をとんがらせている。確かに本州では肌寒くなり紅葉が始まっているというのに、ここでは未だに海水浴が楽しめる。観光客向けに海の家が多数並んでおり、実に楽しそうだった。峰田くんが暴走してしまわないか不安ではあるが私も正直入りたい。


「でも俺も海入りてー!」
「暇だったらいいんじゃねーの? 息抜きも必要だしな」
「上鳴くん! 切島くん!」
「ずっと気を張ってたら疲れるよね。私も行きたい」
「みょうじくんも職務を放棄するのか!」
「飯田くん、なにもそこまで言ってないよ。遊ぶからと言ってヒーロー活動を疎かにするわけじゃない。でも遊んじゃダメとは言われてないし、なによりこの島の魅力を知りたいと思わない?」


もともとヒーローは1人しかいなかったんだし、クラス全員が休む間もなく走り回るほど事件が多発することもないだろう。
そう言うと飯田くんは少し悩んだ結果、時間があったときにすぐ連絡がつくようにすることを条件に海に行くことを許可した。一斉にヒャッハーと飛び上がり盛り上がり、グッジョブと遊びたがっていた子たちがこちらに向けて親指を立てる。


「ビーチボールやりたい!」
「さっき見たけど焼きそばもかき氷も海の家で売ってたよ!」
「葉隠さん、その、海の家…とはなんですの?」
「浜辺にある売店のことよ」
「やおもも、もしかして海水浴場行ったことない?」
「ええ、海には毎年行きますがいつもプライベートビーチですので…」
「セレブやないかい!」
「あわわわ! お茶子ちゃーん!?」


三奈ちゃん以外の女の子たちも案外ノリノリだが、ここでもやおもものお嬢様が発揮された。さらっと言ってるけど、プライベートビーチってすごい。「今度皆さんをご招待いたしますわ」と嬉しいお誘いを受けたので、代わりにここでは皆でやおももに「庶民の海水浴を教える!」と約束した。


「諸君!まずは荷物の整理と食事の準備だ!」


委員長である飯田くんが話に夢中になっていたみんなに声をかけ、施設の中へ誘導する。なんとも1年A組らしい光景だ。
こうして私たちの那歩島でのヒーロー活動がスタートしたのである。


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