外れたストッパー

教室へと戻ればちょうど良いタイミングで午後の授業がスタートした。授業が終わっても席が離れているため何か話しかけられることもなく、無事に帰れそうとそそくさ玄関へ向かっている途中の廊下で事件は起きた。


「おい」


ひぃ!と情けない声が出てしまったのは仕方ない。また腕を掴まれるとか、あれ、デジャヴ。振り返ればやっぱり怖い顔の爆豪くん。もしかしてさっきのこと怒ってるのかなぁ。逃げてきちゃったしな…やばいなぁ…
頭の中でぐるぐる考え事をしていたが、そんなことお構いなしの爆豪くんに「ちょっと来い」と引きずられてやってきたのは、先程すったもんだがあった中庭。


「な、なんでしょうか…」
「一度しか言わねーからよく聞けよ」


そう言ってどんどん迫ってくる爆豪くん。距離を保つために後ろにさがる私。数メートル後ずさったところで足を止めたのは本意ではない。ただ校舎の壁に背中が当たってしまったためである。これ以上さがれないぞ。やばいやばいどうしようと慌てていた私は言われた言葉をすぐに飲み込めなかった。


「…好きだ。付き合え」
「……?」


しばらく黙って反応を待っていたが、ハテナマークを浮かべる私を見て、眉間にシワが寄った爆豪くん。あ、この体勢でそれはちょっと怖い。


「だから付き合えって言ってんだろ」
「さっき一回しか言わないって言ったよね?」
「うるせぇ」
「ていうか、、え? 私のことが好きなの?」
「だからそうだっつってんだろ!」
「なんで? いつから? どうして?」
「知らねーよ!!」


爆豪くんが私のことを好きだってことが信じられなくて聞き返してたらキレられた。怖。しかも知らないって。知らないってどゆこと。恥ずかしくて言えないのか、本当に分からないのかどっちだろ。
とか思ってたら腕がこちらへと伸びてくる。


「イエスしか認めねー」


痺れを切らした爆豪くん、ついに壁ドンというシチュエーションに踏み切った。顔の横に逞しい腕がある。わお。
でも、うん。今超トキめいてる。なんて俺様なんだ…とは思うけど。やっぱり私って爆豪くんのこと好きみたい。認めたらモヤモヤがストンと心の中に収まった。三奈ちゃんに否定しまくってたのが阿保みたい。ごめん三奈ちゃん、あなたの言う通り恋してた。

悩みが解消されたからなのか、なんだか楽しくなってきた。好きな人に壁ドンされてるって。幸せだなぁ。
ふと余裕かましてるその顔を崩してみたくなって、甘い匂いのする首に抱きついてみた。


「な、」


一文字発して動かなくなったと思ったら、カァアアと赤くなる顔。予想以上の反応である。


「…ウフフ」
「笑うんじゃねー!!」
「アハハハハ可愛い!!」
「黙れクソ!」


言葉は汚いけど、照れを隠すために抱きしめ返してくれた。2人の心臓がドキドキうるさくて、ここにきて緊張し始めてしまった。いや、私、いきなり積極的すぎるでしょ、と。それを隠すためにさらにギュッとしてみた。そしたら向こうもギュッと強くしてきたので、こちらも抱きしめ返す……と繰り返すうちに圧迫されすぎて、いよいよ呼吸が危うくなってきたため、背中をポンポン叩いて終わりの合図。


「じゃあ、その…よろしく」
「……ああ」


腕を外して我に返ったら、お互い恥ずかしくて、目を合わせないまま解散。さっきの勢いはどうしたよ、と自分で自分に突っ込むが、アレです。完全にノリというんでしょうか。場の雰囲気に流されました。
というかお付き合いってなにするの。デートってやつ? ……あれ、待って。私まだ爆豪くんの連絡先知らなくね? まずそこからか。わあああ前途多難というかなんというか、急にまたドキドキしてきちゃった! でも楽しみでもある。大丈夫。これから2人の関係を作っていけばいいんだ。よし、明日聞こう!


ちなみに数日後、三奈ちゃんにバレたときは本当に大変だったとだけ言っておきます。

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