「敵ンン!?バカだろ!?」
「ヒーローの学校に入り込んでくるなんてアホすぎるぞ!」

バカだのアホだの言ってる奴がいるけど、そういうのじゃない。
敵にとって雄英に入り込むのが危険だということは向こう側も分からんことではないと思う。
ということは、こういう風に来ても大丈夫だという自信が持てるような策を練ってきているはずだ。

轟も
「バカだがアホじゃねぇ。これは何らかの目的があって用意周到に画策された奇襲だ」
と言ってるじゃないか。


「13号避難開始!学校に連絡試せ!センサーの対策も頭にある敵だ、電波系の"個性"が妨害している可能性もある。上鳴お前も"個性"で連絡試せ」

「っス!」

「先生は!?一人で戦うんですか!?あの数じゃいくら"個性"を消すっていっても!!イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ、正面戦闘は………」
「一芸たけじゃヒーローは務まらん。13号!任せたぞ」

そう言って敵の方へ飛び出した相澤先生の姿はあの日見たかっこいいヒーローそのままで、私は思わず恐怖を忘れて感動した。



「すごい…!多対一こそ先生の得意分野だったんだ」

「分析してる場合じゃない!早く避難を!!」

次々に敵を倒す相澤先生を緑谷くんが分析しているから飯田くんが注意した。
緑谷くん、こんな状況で分析って……。

「させませんよ」
「!!」

モヤを纏った…むしろ身体そのものがモヤみたいな敵が私たちの退路を塞ぐ。

「初めまして、我々は敵連合。せんえつながら…この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは、平和の象徴オールマイトに息絶えて頂きたいと思ってのことでして」

ウソだろ、と思ってしまった。
どんな手段があればあのすごく強いオールマイト先生を倒せるのかと恐ろしさを感じる。

「本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるハズ…ですが、何か変更あったのでしょうか?まあ…それとは関係なく…私の役目はこれ」

広がったモヤ敵に切島くんと爆豪くんが飛び出して攻撃する。
「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」
と切島くんが言う。

この2人はいきなり現れた敵に臆することなく攻撃を仕掛けられたというのに、私は恐ろしくてさっきから竦んで動いていない。
不甲斐なさをひしひしと感じた。

「危ない危ない…。そう…生徒といえど優秀な金の卵」
「ダメだどきなさい二人とも!」

今度は大きく広がったモヤに私たちは包まれてしまった。




私がモヤから吐き出されたのは土砂が広がるゾーンの空中だった。
シュタッと着地すると、背中に衝撃が来て潰された。

「痛っ!!」

「わりぃ」

轟だった。
敵じゃなくて良かった。痛いけど。


轟は起き上がってすぐにパキパキと全ての敵を凍らせた。

「子ども一人になさけねぇな。しっかりしろよ、大人だろ?」

お役に立てない私も情けない。

「散らして殺す…か。言っちゃ悪いがあんたらどう見ても『"個性"を持て余した輩』以上には見受けられねぇよ」

「こいつ…!!移動してきたとたんに…。本当にガキかよ…いっててて…」

することがなくなった私は後から氷結が溶けた敵が来ないか確認しつつ轟の後ろをついて行く。
完全に金魚のフンだ。

突然轟がストっと腰を下ろした。

「このままじゃあんたらじわじわと身体が壊死してくわけなんだが俺もヒーロー志望、そんな酷え事はなるべく避けたい」

なるべくとか言うあたり容赦ないなあ。
しかしこの場に捕縛に優れた個性の子はいないし、誰か助けに来てくれるまで凍らせておくしか手はないと思う。

「あのオールマイトを殺れるっつう根拠…策って何だ?」



敵から広場にいる奴らがオールマイト先生を殺す役割だと聞き、それなら広場に向かおうかという話になった。

広場の方へ歩き出した時、
「オイ待て豹野まだら」
後ろから呼びかけられた。

「えっ、なんで、私の名前…」

「俺のこと忘れちゃったのかよ、家族に恵まれてない可哀想なお嬢ちゃん?」

「あ、あのときの……!!」

私の名前を呼んだそいつは、確かに両親を殺し私を殺し損ねたあの敵だった。


「久しぶりだなァ、びっくりだぜ。両親殺されて『やっと自由になれた』なんて言ってしまう奴が本当に雄英に合格するとはな」

「どういうことだ豹野」

「ち、違……違…わんけど、だって!!!」

「いっくら酷い親でも、死ぬことを喜ぶなんてお前は薄情な奴だよなァ。そんな奴がヒーローになっていいのかよ?」

「でも、でも…」

「お前、ヒーローには向いてねぇよ」

その言葉に、まだらなんかがヒーローになれるわけがないという母の言葉を思い出した。
でも敵の言うことにも納得してしまう。
虐待、まがいのことをされていてもその両親の死を自分の自由として喜んだのは、ヒーローらしからぬ考えなのではないのか。

スゥっと全身から血が引いて青ざめた私に轟は
「とりあえず広場行くぞ」
と声を掛け、手を引き走り出した。

何も考えられずただただ着いて行った。








広場に差し掛かるところで手を離される。

「落ち着け。後で考えろ。そんなんじゃ行っても戦えねえ、ここで助けを待ってろ」

轟は駆けて行き、オールマイト先生のお腹に指を突き立てている怪物みたいな奴を凍らせた。
オールマイト先生は轟のおかげで敵の手から逃れた。




主犯らしき手が沢山付いた男が何かを話している。

怪物みたいなのとオールマイト先生が戦っている。

オールマイト先生が怪物みたいなのをぶっ飛ばした。

また手の奴とオールマイト先生が話している。

手の奴がオールマイト先生に向かっていく。

緑谷くんが飛び出す。

全部、全部。私は見ているだけだ。
何も出来やしない。
ヒーロー志望なら少しは役に立とうとした方がいいのだろう。
しかし身体のどこだって1ミリも動かない。
やっぱり私って…ヒーローには……



いきなり手の奴に銃弾が刺さった。

「1-Aクラス委員長 飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」
飯田くんだ。

飯田くんも先生たちを呼びに行っていたのか。
なんだ。私以外みんな、頑張ってる。
頑張ってないの、私だけだ。













「17…18…19……、両脚重症の彼を除いて……ほぼ全員無事か」


「とりあえず生徒らは教室へ戻ってもらおう。すぐ事情聴取ってわけにもいかんだろ」




「豹野、後で話いいか?」

ずっと放心状態だったために、肩に手を置かれてびっくりした。
誰かと思えば轟だ。

「う、うん」

見放されたらどうしよう。