雨が降ってる中の登校はかなりだるい。

傘をさしてぺたぺた歩いた。

途中で小学生に
「あっ!その上着!体育祭の豹野!」
と呼びかけられた。
体育祭の豹野とは何だ失礼な奴だなと思ったけど、そうだよと答えれば、
「なんでずっと上着着てたの?」
と聞かれて焦った。
「いろいろあるもんなんやぞ、学校遅れるなよ小学生」
と言って手を振りながら登校路を急いだ。



学校に着くと、みんな声をかけられたとわいわいしていた。
近くの家を借りたからやっぱり私はあの小学生以外には声をかけられなかった。



チャイムが鳴って、相澤先生が入ってきた。

「相澤先生、包帯取れたのね。良かったわ」
と梅雨ちゃんが言うのを、
「婆さんの処置が大ゲサなんだよ」
と返していた。


「んなもんより今日の"ヒーロー情報学"ちょっと特別だぞ」

特別……?


「『コードネーム』。ヒーロー名の考案だ」
「胸ふくらむやつきたああああ!!」

皆が一斉に沸いた。


「というのも先日話したプロからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される2,3年から…。つまり今回来た"指名"は将来性に対する"興味"に近い。卒業までにその興味が削がれたら一方的にキャンセル、なんてことはよくある」

峰田くんが
「大人は勝手だ!」
と机を叩いた。

「頂いた指名がそんまま自身へのハードルになるんですね!」
と透ちゃん。

「そ。で、その指名の集計結果がこうだ。例年はもっとバラけるんだが二人に注目が偏った」





A組指名件数

轟 4,123
爆豪 3,556
常闇 360
飯田 301
上鳴 272
八百万 108
切島 68
豹野 36
麗日 20
瀬呂 14




私に指名が入っている!!




「さすがですわ、轟さん」

「ほとんど親の話題ありきだろ…」


「とろろ!やおもも!聞いて!私なんか1件も入らんと思ってたんに!!2桁指名来とる!!」

「あら、まだらさんにはもっと来てもいいはずですわ。目立った試合ではなかったもののまだらさんもきちんと活躍していましたもの」

「やおももぉ……大好き……」

「豹野はしゃぎすぎだ」

こいつ冷たい。





「これを踏まえ…指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう。おまえらは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りのある訓練をしようってこった」


「それでヒーロー名か!」
「俄然楽しみになってきたァ!」

ヒーロー名か。今まで考えたこともなかった。


「まァ仮ではあるが適当なもんは…」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」

相澤先生の言葉を遮って教室に入って来たのは……

「この時の名が!夜に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!!」
「ミッドナイト!!」

ミッドナイト先生だ。


「まァそういうことだ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん。将来自分がどうなるのか、名を付けることでイメージが固まりそこに近づいてく。それが『名は体を表す』ってことだ。"オールマイト"とかな」



名は体を表す…か……。












* * *

15分後。

「じゃ、そろそろ出来た人から発表してね!」

発表形式とはこれまた厳しい。



最初に教卓まで来たのは青山くんだ。

「輝きヒーロー "I can not stop twinkllng"」
「短文!!!」

流石というかなんというか…。
目立ちたがり屋の青山くんらしい。



「じゃあ次アタシね!エイリアンクイーン!!」
「2!!血が強酸性のアレを目指してるの!?やめときな!!」

三奈ちゃんはちぇーなんて言っているがこのセンスはヤバい。


しかし最初2つに変なのが来たせいで大喜利っぽい空気になってしまっている。
実は15分の内に思い付いているけれど、とても発表出来る空気ではない。




「じゃあ次、私いいかしら」
「梅雨ちゃん!!」

梅雨ちゃんならこの空気を変えてくれるに違いない。


「小学生の時から決めてたの。フロッピー」
「カワイイ!!親しみやすくて良いわ!!皆から愛されるお手本のようなネーミングね!」

期待通り空気を変えてくれた。
フロッピーなんて、とっても可愛くて梅雨ちゃんにぴったりだ。



「んじゃ俺!!」

切島くんだ。

「烈怒頼雄斗!!」
「『赤の狂騒』!これはアレね!?漢気ヒーロー"紅頼雄斗"リスペクトね!」

聞いたことはあるけど、全然詳しくはないヒーローだ。

「そっス!だいぶ古いけど、俺の目指すヒーロー像は"紅"そのものなんス」

「憧れの名を背負うってからには相応の重圧がついてまわるわよ」
「覚悟の上っス!!」

かっこいいなあ。
私にとって憧れのヒーローとは誰だろう。




私は轟の次に発表した。

「ブルーパンサー」
「なかなかにかっこよくて良いわね!」

良かった……。







授業後。

「職場体験は一週間。肝心の職場だが、指名のあった者は個別にリストを渡すからその中から自分で選択しろ」

渡されたリストのヒーロー事務所それぞれをインターネットで検索することにしようと思った。
それか、ヒーローオタクの緑谷くんに相談するのも良いかもしれない。

「今週末までに提出しろよ」
「あと二日しかねーの!?」

ものすごく急がなくてはならないみたいだ。


目を通してみると、私でも聞いたことのある事務所が目に入った。

「プロヒーロー『プッシーキャッツ』の事務所や…」







その日の晩に、緑谷くんにプッシーキャッツどう思う?とLINEを送ると、
『いいと思う!山岳救助等をメインに活動して今年で12年!ベテランだよ!豹野さんそこから指名来たの?すごいね!』
と返信をもらった。


ついでに他の事務所もネットで少しだけ調べてみると、なんとほぼすべてが副業で売り出している事務所だった。
ツインテールだったのがまずかったのだろうか。