「超〜広い!!クッソ!!」

豹野まだら、ただいま迷子である。


「1-A…1-A…広すぎる…」
前を走っている髪がもさもさの男の子がつぶやいている。
…そうだ!付いていけば!

昨年度に話す人がいなかったためにコミュ症気味になってしまったから、話しかけることはしないけれど後ろから付いていく。

「あった…ドアでか…バリアフリーか」
確かにドアがとても大きい。
「あの受験者数から選ばれた人たち…」
君もそうじゃん!!と思わず言いそうになる。

スイ…とドアを開けたもさもさ君に続いて教室に入れば、メガネの固そうな人がもさもさ君と話していた。
その横を通ろうとすると、メガネの人に話しかけられた。

「俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
韋駄天っぽい名前だ。
「私、豹野まだら、よろしくな」

久しぶりに同い年の子と喋って少し嬉しくなる。
残念なことに無表情スキルが知らぬ間に培われていたようで、笑顔は作れなかった。

「はっ!君!どうしてスカートの下にジャージを履いているんだ!!」

疑問に思うのもわかる。
私は尻尾で平衡感覚を掴むから尻尾がよく動く。だからスカートがめくれてしまう可能性がある。
それははしたないと思うので学校側に説明し、ジャージを履く許可を得ているのだ。

「ちょっとダサいねんけど…」と付け加えて説明すると、飯田くんはなるほどと頷いた。

座席表を確認すると、私はいちばん後ろのいちばん端の、そう、一人席のようだ。
(うわあ、ぼっち極めてしまいそうやなあ…)


席に着いてカバンを下ろす。
雄英だからきっと中学生の頃のように嫌がらせなんかする人いないだろうと思う。
誰か話しかけてくれないかなあとソワソワしていると、前の女の子が振り向いて話しかけてくれた。

「初めまして。私、八百万百と申します。あなたは?」
八百万さんは美人で凛としていて、とても品のありそうな人に見える。
「私は豹野まだら。八百万さん、よろしく」
八百万さんは緩やかに微笑んで、再び前を向いた。
とてもいい人そうだ。心がほかほかしてきた。


入口付近にふと目をやると、もさもさ君と可愛らしい女の子が話をしている。


「お友達ごっこしたいなら他所へ行け」

突然声が聞こえた。

「ここは…ヒーロー科だぞ」

ゼリー飲料らしきものを吸ったその人は寝袋からヌーっと出ると、
「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね」
と言う。

私はこの人に見覚えがある。
あの時、私の両親が殺された時のあのヒーローだ!

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

私を助けてくれた時のキリッとしたヒーローらしい雰囲気はどこへ行ったのか、とてもくたびれた人に見える。

相澤先生は、ゴソゴソと寝袋から体操服を取り出した。

「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」

入学式は?