第1種目:50m走
飯田くんがとても速い!
やっぱり韋駄天っぽい名前なだけあるなあと感心する。
私の個性を使うと走るのは格段に早くなる。
なんていったって、豹だから!
「5秒49!!」
個性を使わなければ10秒もかかっていたが、受験前に鍛えたこととこの個性のおかげでこんなにも速く走れた。
とても嬉しい。
口角がニヨニヨと上がった。
「ケロ、あなた、とっても嬉しそうね」
横から声が聞こえた。丸い大きな目をした、舌を少し出している女の子に話しかけられたみたいだ。
「うん、あの、個性使わないとすごく遅いから、嬉しかってん…!」
「あなたの個性、猫かしら?」
「や、違うよ!豹なん。黒豹だから、耳と尻尾だけだったら猫に見えるよなあ」
猫の個性だと思われることは多々あった。黒豹なんて珍しいからだと思う。
「黒豹なのね。教えてくれてありがとう。私、蛙吹梅雨っていうの。個性はカエル。梅雨ちゃんと呼んで」
うん、カエルっぽい。ニコニコしながら柔らかい声で話すので、私の緊張も解けた。
いい友達になれそうだ。
「梅雨ちゃん。私は豹野まだら。よろしく」
今年度はじめての、人へ向けての笑顔だった。
良い気分だ。
「まだらちゃん。あなた、どうしてウインドブレーカーを着ているの?」
「ごっごめん!内緒!あ、でもあの、学校に許可は貰ってるで!」
「わかったわ」
ちょっとヒヤッとした。
第2種目:握力
これは個性の使いようがない。
ぐっと力を入れて握るも、左23キロ右25キロという、このクラスではきっと底辺だと思われる数値であった。
「すげぇ!!540キロて!!あんたゴリラ!?タコか!!」
540キロはもうなんだか怖い。
たくさん腕がある人、540キロの握力なのか……怖い……。
第3種目:立ち幅跳び
個性が活かせて5m47cm。
第4種目:反復横跳び
前進しない横跳びは苦手なので36回。
第5種目:ボール投げ
もさもさ君と話してた可愛い子が∞という記録を出した。
重力を無くす系統の個性だろうと思う。
私は個性を使ってようやく30m。
みんな良い個性を持っているようだから、私は結構まずいのではなかろうか。
しかしそれにしても、体力テストごときでヒーローとしての適正を判断するのは間違っている気がする……。
「緑谷くんはこのままだとマズいぞ…?」
「ったりめーだ、無個性のザコだぞ!」
もさもさ君は緑谷というのか。
「46m」
個性を消されたらしい。
緑谷くんは個性を制御できずに行動不能になってしまうらしい。
なんてハイリスクな個性なのだろう。
個性を戻された緑谷くんの放った球は、空高く飛んで行き、705.3mで落ちた。
指が変色しているが行動不能ではない。
相澤先生が少し嬉しそうだ。
死ねという掛け声でボールを投げた人が突っかかって先生に捕縛されていた。
やっぱりあの人怖そうだ。近寄らないでおこう。
持久力はないので、持久走は散々な結果に終わった。
長座体前屈は、豹の個性でしなやかさを得てなんとかなった。
上体起こしは個性が使えないが私の十八番だ。女子にしてはすごい回数である。
でもこれ、結構まずくないか……?
結果は16位。最下位ではなかったが、除籍は嘘だった。合理的虚偽だそうだ。
八百万さんが、「ちょっと考えればわかりますわ…」と言っていた。
嘘だとは思わなかったけれど、それが間違っていることには気付いたので八百万さん見捨てないでねと心の中で弁解した。
そして私はまたトイレでひっそりと着替えて教室へ戻るのだった。
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