正午になると、建物の扉が開いた。
見えるのは1組の男女。
どうやらさっきまで聞こえていた唸り声のような音は、この男性のお腹の音らしい。
「どお?おなかは大分すいてきた?」
「聞いてのとおりもーペコペコだよ」
「そんなわけで二次試験は料理よ!!美食ハンターのあたし達2人を満足させる食事を用意してちょうだい」
まさかハンター試験の課題に料理が出るとは。
「まずはオレの指定する料理を作ってもらい」
「そこで合格した者だけがあたしの指定する料理を作れるってわけよ」
「つまりあたし達2人が"おいしい"と言えば晴れて二次試験合格!!試験はあたし達が満腹になった時点で終了よ」
「オレのメニューは豚の丸焼き!!オレの大好物!森林公園に生息する豚なら種類は自由。それじゃ、二次試験スタート!!」
森に入っていくと豚はいた。
しかし想像していた豚と違い、凶暴そうな見た目で鼻が大きかった。
とりあえず襲いかかってきた豚を横から回し蹴りするが、豚は倒れない。
それでは頭を殴ろうと思い、豚に飛び乗って斧の柄で額を突くと簡単に倒れた。
あとは豚を焼いて持っていくだけだ。
──ゴォォン
「終ー了ー!!」
「豚の丸焼き料理審査!!71名が通過!!」
「あたしはブハラと違ってカラ党よ!!審査もキビシクいくわよー!二次試験後半、あたしのメニューはスシよ!!」
周りがざわざわしている。
スシは私の出身国の伝統料理だ。
みんな知らないのだろう。
「ヒントをあげるわ!!中を見てごらんなさーい!!ここで料理を作るのよ!!最低限必要な道具と材料は揃えてあるし、スシに不可欠なゴハンはこちらで用意してあげたわ。そして最大のヒント!!スシはスシでもニギリズシしか認めないわよ!!それじゃスタートよ!!あたしが満腹になった時点で試験は終了!!その間に何コ作ってきてもいいわよ!!」
「ニギリ…か。大体料理のカタチは想像がついてきたが、肝心の食材が全くわからねーぜ」
「私の生まれ故郷の料理だよ」
「本当か!」
「具体的なカタチは見たことがないが…文献を読んだことがある。確か…酢と調味料をまぜた飯に新鮮な魚肉を加えた料理のはずだ」
「魚ァ!?お前、ここは森ん中だぜ!?」
大声をあげたレオリオにクラピカがキレてしゃもじを投げつけたが、周りにはもう聞こえていたようで、全員一斉に走り出した。
「川魚かぁ…自信ないなぁ、臭いかもしれないじゃん。海水魚以外食べられる味になる気がしないな〜」
とボヤきながら素手で魚を掴もうと川の中に立っていると、声をかけられた。
「君、スシを知ってるの?」
「ヒソカ!!うん、知ってはいるよ…」
「ボク魚2匹持ってるし、教えてくれるなら君に1匹あげちゃう{emj_ip_0834}」
交渉成立だ。
2人で料理場へ向かうと、レオリオが「食えるかぁ」とメンチさんに皿を投げられていた。
「手から体温がうつらないように気をつけてね」
「ボクの手そんなにあったかくないから大丈夫{emj_ip_0835}」
ヒソカの手を触ってみると確かに私の手よりずっとひんやりしていた。
問題なさそうだ。
「まずは魚の切り身を作らないといけないんだけど…」
「だけど…?」
「私、魚さばけない!」
てへ、とおどけてみせるとじとっと睨まれた。
仕方ないからヒソカがさばいてくれることになった。
その間に私はご飯に酢をまぜた。
「いい?ご飯は口の中に入れるまでは一体になってて、口に入れたらほどけるくらいの固さに握るの」
「それ結構難しくない?」
ヒソカが困ったような顔をする。
困った顔もかなり可愛い。
「かわい……じゃないじゃない!!ええっと、スシは十年くらい修行を積まないとおいしいものは作れないって聞いたことあるからね」
ウソだろ…と困り果てているヒソカの横で一貫握って皿に置いた。
その時、ハンゾーというらしいあの忍者の怒鳴り声が聞こえてきた。
「メシを一口サイズの長方形に握ってその上にワサビと魚の切り身を載せるだけのお手軽料理だろーが!!こんなもん誰が作ったって味に大差ねーべ!?」
「うっわー!!みんなに作り方バレちゃったね!早く持って行こ!!」
結局私のスシもヒソカのスシもシャリの固さがダメだと言われた。
「二次試験後半の料理審査、合格者はゼロ!!よ」
ヒソカが隣から試験官の2人に殺気を飛ばしているのが分かるので、かなりヒヤヒヤする。
ドゴォンと大きな音がした。
見ると255番トードーが料理台を壊していた。
異論を申し立ててメンチさんに殴り掛かるトードーをブハラさんが平手打ちで張り飛ばした。
「どのハンターを目指すとか関係ないのよ。ハンターたる者誰だって武術の心得があって当然!!あたしらも食材探して猛獣の巣の中に入ることだって珍しくないし、密猟者を見つければもちろん戦って捕えるわ!!武芸なんてハンターやってたらいやでも身につくのよ!あたしが知りたいのは未知のものに挑戦する気概なのよ!!」
『それにしても合格者ゼロはちとキビシすぎやせんか?』
そう声が聞こえた直後、上空のハンター協会のマークが描かれた飛行船から老人が飛び降りてきた。
「審査委員会のネテロ会長、ハンター試験の最高責任者よ」
さっきまでの尊大な態度のかけらもなく緊張している様子のメンチさん。
ネテロさんとメンチさんの話し合いの結果、新たに試験が設けられメンチさんが実演という形で参加することとなった。
ゆで卵が次の試験の課題だそうだ。
* * *
ここ、マフタツ山に生息するクモワシの卵でゆで卵をつくることになった。
崖から飛び降りたメンチさんはクモワシの糸につかまり、卵を取って戻ってきた。
楽しそうにキルア、ゴン、クラピカ、レオリオが飛び降り、私もそれに続いた。
出来上がったクモワシのゆで卵はとても濃厚でおいしかった。
市販の卵も大好きだけれど、全然比べ物にならない。
二次試験合格のうえ、おいしいものが食べられて万々歳だ。
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