「ハァ…ハァ…ハァ……」
聞こえるのは自分の声。
手には、刀。
目の前には、人だった『モノ』。
「どうしたんだ?」
誰もいないと思っていたのに背後から声をかけられ、焦って振り向けば魁がいた。
「………魁、か……」
顔見知りであったことに安堵する俺を魁は見てなぜかふふっと笑う。
「…何が可笑しいんだ?」
「いや………手が震えてるぜ?」
「…武者震いだ」
俺の発言にまた笑う。
だから何が可笑しいというんだ。
「怖いのか?」
「…何が」
「人殺しという行為がさ」
魁の視線の先には血に塗れたモノ。
止まることなく、流れ続けるアカ。
俺が散らしたアカ。
「別に怖がっていんだぜ?それが普通の人間てもんだ。恥ずかしがるこたぁない。なぁ、怖いんだろ?」
「………それでも、俺はやらなきゃいけない」
目を逸らすことは許されない。
これは俺が自分で決めた道だから。
「なら進めよ。何があってももう迷うんじゃねぇ。テメェの手が血に染まってもその体が血に塗れても止まるんじゃねぇよ」
魁の言葉が続く。
「おら、行けっ。いつまで立ち止まってんだ。早くしねぇと奴らが来るぜ」
ドンッと背中を押されて思わず前のめりになった。
「魁……ありがとな……」
振り向かずに礼を言う。
顔は見えなかったけど、魁が笑った気がした。
立ち止まらない。
進む道は前方のみ。
さぁ、歩み出せ。
血刀片手に
咆哮をあげろ。
邪魔する奴ァ、叩っ斬れっ!!
血刀片手に
立ち止まらない
血で染まり続けても
立ち止まらない
−avventurina様よりお借りしました。