さよなら、


時計の針が
チク、タク、チク、タク

静かな部屋に響く
チク、タク、チク、タク



「……うるさい…」


聞こえてくる音に苛立って、時計を一つ投げ飛ばした。

見事、音は消えて
また、静寂が戻る。
それでもう安心だと思ったのに、さっきのとは別に聞こえてくる音がまだある。



「っ、」


また苛立ちが募って、手当たり次第に聞こえてくる音全てを壊し出した。





目覚まし時計。
腕時計。
壁掛け時計。
通知の止まない携帯電話。



リモコンをテレビに投げ付ける。




「ハァ…ハァ……ハァ…」


息が荒れる。
私、何をしているんだろう。


「…ふふ、…馬鹿みたい…」

自嘲気味に笑って、ソファにうずくまる。






部屋の時計を壊したからといって、世界が止まるわけじゃない。
例え、世界の時計を止めても、時は止まらない。
日が沈み、夜が来て、また日は昇る。

止めることなんて、できるはずがない。
そんなのわかりきっていたことなのに。



「…………ぁ、」

そうだ。
世界が止まらないのなら、私の時間を止めればいいんだ。


部屋を飛び出して、屋上へ向かう。








見晴らしは最高。
天気も良好。


「……やっと、だ…」



笑いが少し込み上げた。
今まで、こんな簡単なことを思い付かなかったなんて、不思議。







さよなら、みんな

さよなら、私





「さよなら、世界」







反転する空

重力に従って、下降する

いっそいくなら、
思いっきり飛び散って









真っ赤な花を咲かせて さよなら






さよなら、
(これで願いは叶ったの)

修正:20200105


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