Long Story|Short Story|Anecdote救えない人
「お前って本当に淫乱だな」
言いながら、集(しゅう)ちゃんは冷めた目で笑って、僕の乳首をぎゅっと押し潰す。
「いっ……痛、い……っ」
集ちゃんので尻の穴をめいっぱい広げられて、何度も何度も、気がおかしくなるくらいしつこく何度も、奥を突き上げられて。僕は泣きながら、でも「やめて」とは絶対に言わない。もっと、もっと。集ちゃんの気が済むまでめちゃくちゃにして欲しい。
「はぁ……ンッ! あぁ、ン、あっ、あっ、――ひっ、あぁッ!」
奥を突かれながら乳首を乱暴に抓られ、時々噛まれる。僕の乳首は真っ赤に腫れていた。
「あ、血出た」
ぶ、と唾を吐く音がする。僕は薄目を開けて、涙で歪んだ視界に集ちゃんの不敵な顔を見る。
「お前、痛いの好きだから好いんだろ?」
言いながら、集ちゃんの手が僕のをきゅっと握る。
細い指先。小さい頃、集ちゃんはピアノが上手だった。中学生に上がる直前にやめてしまったけど。あの繊細な手が、僕を責め立てる。
「ひゃあッ、ああンッ、やあぁ――ッ!」
親指の腹で先っぽをぐりぐりと弄られて、僕は涎を垂らしながら、あられもない悲鳴をあげてしまう。
「好きぃ……集ちゃんがするなら……何でも、いいよ……ッ」
「……バーカ」
「あ"ンッ! あ、あッ、はぁ、……あ"ッ! ――ひぁ、ン!」
自分の手で口を塞ぐと、集ちゃんは僕の頬を強く打った。ビリビリと耳の奥まで痺れて、一瞬音が聞こえなくなる。はぁはぁと荒くなった息を整えていると、耳朶をぐいと引っ張られた。
「いっ――」
「声抑えるなって言ってんだろ」
「っ……でも……、恥ずかしい……、」
「今更何言ってんだ? 俺のチンポ嵌めて、自分から腰振ってる色狂いが」
「しゅ、ちゃ……あっ……ンはぁ、あ"っ……!」
中を擦られて、背中が震える。腹の方を突かれると、しこりに当たって僕の足の爪先はビン、と伸びた。
集ちゃんとしてるうちに、僕は女みたいな身体になっていく。最近は胸を弄られただけで勃つし、オナニーだって、後ろも一緒に弄らないとイけない。
もう最初の時の痛みは思い出せないけど、痛いのが好きな僕はそれが少し寂しい。
集ちゃんと僕は小さい頃同じマンションに住んでいて、僕がまだよちよち歩きの頃からの仲だ。一人っ子の僕にとって、集ちゃんは実の兄弟みたいだったし、集ちゃんにとっての僕も、昔はそうだったと思う。
でも集ちゃんが中学生になってから、僕達は疎遠になった。集ちゃんはマンションに女の子を連れて来るようになった。集ちゃんとは違う学校の制服。僕が見る度に違う子だった。
集ちゃんが高3の時、集ちゃんの部屋から女子高生が泣きながら出て行くところに、ちょうど中学校から帰って来た僕はばったり出くわしてしまった。集ちゃんの頬は少し赤くなっていて、多分、女に叩かれたんだと思う。
暗い笑顔で僕に笑いかけると、集ちゃんは両親不在の家に僕を呼んだ。僕は集ちゃんの部屋で服を脱がされて、集ちゃんのをしゃぶった。何度かそういうことがあって、ある日そのまま、最後までした。
女みたいに扱われても僕は構わなかった。恥ずかしかったし、痛かったけど、女だって最初はみんなそうだって聞くし、何より、僕は集ちゃんのことがずっと好きだったから。
少し早くなった集ちゃんの心臓の音とか、少し高くなった体温とか、上擦った吐息とか。僕がそうさせたんだと思ったら、胸が踊った。
でも、集ちゃんとは恋人同士になったってわけじゃない。集ちゃんはその後も彼女を作っては別れ、作っては別れしていた。僕はそれについて何も言わず、集ちゃんが求めれば集ちゃんの言われるがままに身体で応えた。
最初の時から5年が経って、集ちゃんは今はバイトをしながらアパートで一人暮らしをしているけど、この関係はまだ続いている。
「ほら、お前の好きなの、またたっぷり出してやるよ」
「っ……、あ、集ちゃ……、」
「お前はマンコ突かれて中出しされると感じるんだろ」
「ぁ……、中……ちょ、だい、」
奥に熱いのが入ってきて、僕は全身を震わせた。
「くっ、うっ……キツ、」
「あ、ぁ……、はぁっ……ン、」
「男のくせに、種付けされて悦ぶなんて本当に変態だな」
後で腹の調子が悪くなるから、本当は中出しされるのは苦手だ。でも、集ちゃんがしたいなら僕は受け入れる。
「ちょうだい、集ちゃ、の……、もっと欲しい……、」
「だから、なんで泣くんだよ。イラつくからやめろって言ったよな」
「いひゃ、い……っ、ふぁ、ひゃめひぇ……、」
ほっぺを思い切り抓られ、捻られて、頬がちぎれるんじゃないかと思う。
そうしたまま何度も激しく中を突かれて、僕は達していた。気持ち好い、気持ち好い――頭の中が真っ白になる。集ちゃん、集ちゃん、……大好き。
「――うっ……!」
中に集ちゃんのが出されるのを感じて、ぞくぞくと背筋に快感が走った。集ちゃんの精子が僕の腹の中でいっぱいになる。腸壁を叩いて、溢れて、お尻の穴から少し漏れ伝う。
集ちゃんは射精が済むと腰を引いてすぐに僕の中から出て行こうとした。僕は無意識に中で締め付ける。
「……なんだよ、まだ足りないのか? 淫乱」
痛いのに、この痛みが気持ち好くてやめられない。泣きながらコクコクと頷くと、集ちゃんの手が乱暴に僕の顎を掴んだ。
「どうして欲しいんだ? 遼(りょう)、」
「……抜かないで、」
「もっとエロく言って、俺を誘えよ。得意だろ? 変態」
集ちゃんに詰られると興奮してしまう。お腹の奥がカッ、と熱を持つ。
「はっ……ン、集ちゃ、の……おっきいチンポ、僕にハメて……ズボズボ、もっと奥まで突いて……何度でも、イかせて、」
集ちゃんはまた、一瞬冷めた顔をした。
集ちゃんはいろんな女とするけど、ひどく潔癖なところがある。身体じゃなくて……心の方が。
やることやったら次、という具合に二股でも三股でも平気でする様は、ほとんど肉体の自暴自棄に見えた。こんなことなんでもないって、虚勢を張ってるみたいに。
その実、集ちゃんは女とのセックスが嫌いなのだ。
「じゃあお前が勃たせろ」
集ちゃんは胡座をかいて、萎えたのを僕の前に晒す。僕は身体を起こすと、それを口に咥えた。
「……躊躇とか、本当にねーのな、」
集ちゃんは呆れながら僕の髪を掴む。時々強く引っ張ったりするのは、気持ち好いからだ。僕は一生懸命集ちゃんの先っぽを舌で舐めて、喉の奥まで挿れたり、窄めた唇で吸ったりする。
「上手くなったじゃん」
「ん……っ、ふ、」
褒められて嬉しい。僕はまた中に挿れて欲しくて、腰を捩りながら集ちゃんのをしゃぶった。
集ちゃんの指が強引に穴に入ってくる。中のを少し掻き出されて、長くて細い指に入口を捏ねられて、僕は鼻の奥でクゥン、と犬のように鳴きながら、いっそう腰をくねらせた。
「……犬。雌犬」
「くぅ……ン、」
ぐぐ、と2本の指が折り曲げられて、僕の足がガクガクと震えた。集ちゃんの指だけでイきそうになって、唇から集ちゃんのを取りこぼしてしまう。
「あ、……ごめ、」
「もういい。ほら、自分で挿れろよ。自分で動け」
「え……、」
いいの? と目で伺う。集ちゃんはにこりともせずに言う。
「来いよ」
集ちゃんが主導権を僕に渡すなんて初めてのことだった。僕はドギマギしながらも、そそり勃ったそれの上に跨る。
早く、早く欲しい……入口に先端を当てた。ちゅぶ、と音がして、身体が震える。少し焦らしたくて、腰を引こうとした途端、集ちゃんの手が僕の腰を掴んだ。
「――ひゃうっ!!」
自分のタイミングでするつもりが、不意打ちで奥まで集ちゃんのが入って来た。それだけで僕は呆気なく射精してしまう。
「はえーよ、バカ」
「あっ……ああン……ッ、深、ぃ……っ、」
僕はガクガクと震えながら、もっともっと奥に来て欲しくて後ろに手を突くと自分からも腰を激しく打ち振った。
じゅぷ、じゅぷ、ずぬ、ぐちゅ。いやらしい音が狭い部屋中に響く。集ちゃんがたくさんの女を連れてきた部屋。ベッドは時々、甘い化粧品の匂いがした。
僕は彼女達に妬いたりしない。集ちゃんは僕を1番乱暴に抱くのを知っているから。身体に鞭打ち、ゴムも着けずに中に何度も注いでくれる。いやらしい言葉で詰りながら、僕の中にだけ、たっぷりと白い怒りを。
「んっ、あ"、あ、あ、はぁン、しゅ、ちゃ、集ちゃ、ん――あ"ッ!!」
「く、ぅ……ッ、は、遼……お前ってホント……救えねーヤツ、」
「しゅ、ちゃん……ッ、」
――それは、集ちゃんの方だよ。
僕がまだ6歳で、集ちゃんはまだ12歳の時、僕達は一緒に近所のピアノ教室に通っていた。本当に小さな、生徒も全部で5人くらいの小さな教室で、若くてきれいな女の先生が自宅で開いていた。
先生は、もうすぐ結婚するんだと言って、細い薬指に嵌めた指輪を見せてくれたことがある。照れながらも幸せそうな先生を、僕達は幼いながらに祝福していた。
それなのに――ある日、先生は僕が見ている目の前で、集ちゃんのまだ幼いものを舐めしゃぶり、華奢な身体に跨って、腰を振った。そう、まるで今の僕みたいに。
まだ小さかった僕は、一体何が起きているのか全然わかっていなかった。遼くんはここにいてね、と言われた部屋の隅から、ポカンと口を開けて2人を見ていたんだと思う。先生は愛おしそうに集ちゃんを撫でて、褒めていたから、僕はそれがひどいことだと理解できなかった。
集ちゃんも、ただ驚いたような引きつった顔で、時々苦しそうに眉を顰めて涙ぐみながら、その場をやり過ごした。
それがいけないことだと、集ちゃんはわかっていただろう。でも、相手は大人の女の人で、未知の体験と感覚が怖かっただろうし、優しい集ちゃんは、それよりも先生を傷つけてしまうことを恐れたんだと思う。だから、集ちゃんは泣いたり叫んだりせず、ただされるがままだった。
帰り道、集ちゃんは静かに泣いた。僕に、絶対に誰にも言うな、と言って。
後の顛末は、僕がある程度大きくなってから人づてに聞いた話だ。先生の婚約は、だいぶ前に破棄されていた。それはもう、僕達に指輪を自慢したよりもずっと前に。先生の恋人だった男の人は、他の女の人との間に子供ができて、先生を捨てたのだという。先生の心は、その時に砕けてしまった。
今度は本当なの、本当にできたの。だから彼も戻って来てくれるはず――保護施設の職員に腕を引っ張られながらそう言って笑っていたのが、僕の記憶にある最後の先生の姿だ。
先生は、集ちゃんの子供を妊娠していた。
状況から、無理強いされたのが集ちゃんだったのは明らかだったし、まわりの大人達も当然集ちゃんを庇った。けれどこういう時には耳年増な子供達の方がよほど残酷だ。
集ちゃんは入学した中学校で、小学生にして大人の女を妊娠させたと噂になった。それも、集ちゃんから無理強いしたかのように。話に尾ひれがついて泳ぎ出すまでに、そう時間はかからなかった。
本当は集(つどい)と読む名前を「つがい」と読まれ、「次のつがい相手は誰だ?」とか、「つがいに近付くと妊娠する」といった悪質ないじめも、僕の耳に入る範囲で起こった。
そして集ちゃんは、まわりが被せた濡れ衣を自ら着込むことで、自分を守ったのだ。
僕はあの悲しい行為の一部始終を見ていたというのに、幼くて無知で、集ちゃんを助けてあげられなかった。僕はそのもっと前から集ちゃんのことが好きだったけど、今こうして集ちゃんのすべてを受け入れることは、罪滅ぼしでもある。
もっとも、この行為を悦ぶ僕が許される日は、きっと来ないけれど。
「あっ、は、あぁ、ン"あッ!!」
中に集ちゃんの雄を感じながら、僕は集ちゃんがどんなに中で果てても、孕むことのない身体で雌を演じる。
「集ちゃ、集ちゃんッ……、きもち、いよ……ッ、奥、ン、当たって……ッは、」
「……っ、淫乱……の、変態ッ、」
パン、パン、と肌のぶつかる音。ぐずぐずに蕩けた中はもう、集ちゃんのでいっぱいだ。僕は怒られるのを承知でまたポロポロと泣く。
「ほら、お前ん中……ッ、もう、俺のチンポの形だろ、」
「あ、……は、うん……ッ、しゅ、ちゃの……チンポしか……知らな、からっ、――あ、ンもっと、もっとッ」
僕は集ちゃんの身体に涙の雨を降らせながら、もっと激しく、乱暴にされるのを望んだ。そうしたらいつか、集ちゃんのことを救えるんじゃないかって。そんなの、僕の勝手なエゴだってわかってる。でも、少しでも集ちゃんの気持ちが済むのなら、僕を嬲り殺しにしてくれたって構わない。
「あ、はぁ、あッ、――集ちゃん、集ちゃ、ごめ、ね……ッ、集ちゃん、」
「っ……、遼、……っ、」
集ちゃんの出した精子が、僕の中で弾ける。ドクドクと脈打って、僕は腹に手の平を当てた。
「ああ、あ……ッ、はい、てくぅ……、せーし、集ちゃんの……、」
僕は奥に集ちゃんの熱を感じながら、腹を撫でさすった。薄い、白い腹。でもそこにしっかりと、集ちゃんのが収まってる。
先生は結局、集ちゃんの子供を産まなかったらしい。だから集ちゃんには何も残らなかった。ピアノの才能も、誰かとの愛を信じる気持ちも、何もかも。
「しゅ、ちゃ……好き、僕……集ちゃんが好きだよ」
「――お前、やっぱ狂ってるよ」
僕の救えない人はそう言って、小さく舌打ちした。
2016/11/10
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