Long StoryShort StoryAnecdote

あとのまつり


 濃緑の浴衣に下駄を履いた翼(つばさ)は、神社の境内で幼馴染みで2つ年上の龍之介(りゅうのすけ)と落ち合った。
「それじゃあ龍ちゃん、よろしくね」
「うん、ちゃんと家まで送ってくから大丈夫だよ、おばさん」
 龍之介は元気よく言うと、にっと白い歯を見せて笑う。
「行こうぜ、翼」
「うん」
 龍之介は恥ずかしげもなく翼の手首を掴み、夏祭りの雑踏をズンズンと掻き分けていく。
 近所の子供達もこの祭りに繰り出して来るだろうに、中学生になっても兄貴分と手を繋いでいるなんて、友人に出くわせば冷やかされるかもしれない。
 翼の懸念などお構いなしの龍之介に、取り縋るように掴み返すと握った手を離させた。龍之介は暇になってしまった右手をきょとんと見て、釣り気味の眉の上に溜まった汗を拭う。
「暑かったか?悪い」
「そうじゃなくて……手なんか繋いでたら知り合いに見られた時にからかわれる」
 それに、龍之介が同級生の少女達に目をかけられていることも翼は知っていた。高校受験を控えた今夏が最後のチャンスとばかり、龍之介と親しんでいる翼にまで根回ししてくる輩もいるほどだ。
「そうか?他人の目なんか気にするなよ。俺はお前にもしまた何かあったら、」
「わかってる」
 生真面目な顔で言い募る龍之介の言葉を、翼はピシャリと遮った。熱くなる顔を少しでも冷まそうと、逆手の甲を頬に当てる。
「……ごめん。夜の待ち合わせに母さんまで着いて来るの、僕も恥ずかしいんだけど」
「俺は気にしないよ。俺がお前のこと守るって決めたんだから」
 決然と言い放つ龍之介が眩しい。翼はぎこちない笑みを作ると、龍之介の手首をぎゅっと握った。
「……ありがとう、龍」

 5年前、翼は夏祭りの途中で龍之介とはぐれ、一時行方不明になったことがある。
 当時まだ小学生だった2人が夜中になっても帰宅しないと知れるや、町内会の大人達がこぞって捜索に出た。
 程なくして2人は神社の裏の竹林の奥、少し下ったところで発見されたが、そこで大人達が見たのは意識をなくして倒れている翼と、それを抱いて泣きじゃくる龍之介の姿だった。
「死んじゃう、翼が死んじゃうよ……っ」
 呻きながら翼を掻き抱く龍之介の手を引き剥がすと、露わになった少年の姿に皆息を飲んだ。
 藍染の浴衣の帯はたわみ、真っ白な胸を踏み躙るようにつけられた鬱血痕も露わに、着崩れた衽(おくみ)から覗いた細い足の内股からは、血の混じった白い液体が膝裏まで伝っていた。翼が何者かに凌辱されたことは、まだ幼かった龍之介を除いて誰の目にも明らかだった。
 その時の龍之介は翼の身に何が起きたのか正確に理解できていなかったが、少なくとも自分が目を離したせいで親友がひどく傷付けられたことは間違いなかった。
 病院に運ばれた晩も、付きっきりで看病すると泣き喚くのを何とか宥めたが、夏休みの間毎日翼を見舞うという健気な子供を止められる者はいなかった。
 龍之介が翼を見つけた時、犯人はすでにその場におらず、目を覚ました翼にどんな男だったかと問うても、目隠しをされて顔が見えなかったと言って、年齢も背格好もわからずじまいになってしまった。それらしき犯人はまだ、捕まっていない。
 以来、龍之介は翼を守る役を買って出ている。

 浴衣の袖に腕を通して感じる夏の温気、幾分涼やかな夜風に、あの晩の記憶が呼び覚まされて身体が震える。翼は粟立つ皮膚を袖の内で撫でると、カラコロと下駄を鳴らして龍之介の背中を追った。
 あんず飴、たこ焼き、フランクフルト……大食らいの龍之介は次々と胃の中に収めていく。美味しそうに平らげていく姿を見るのが楽しくて、翼は横から少しつまむだけでも祭りの雰囲気を存分に味わった。
「なぁ、親父のとこ寄ってこーぜ。きっとサービスしてくれるよ」
 龍之介の父親は鉄板焼き屋を営んでおり、祭りではいつも店の若い衆を引き連れて焼きそばの屋台を開いている。
 人だかりのより厚くなったところから、金属ベラをカンカンと鳴らす小気味好い音が響いてきて、龍之介は人の壁を掻い潜ると出店の最前にひょいと身を乗り出した。
「親父、繁盛してるか?」
「お、来たな!」
 龍之介の父親・虎次(とらじ)は2人の姿を認めると、握っていたトングをカチカチと鳴らした。できあがったばかりの焼きそばをパックにたっぷり詰めると、龍之介に差し出す。
「持ってけ。2人で食べな」
「サンキュ、親父!」
「龍にばっかり食わせてるなよ、翼。しっかり食べて大きくならなきゃな」
 虎次は龍之介によく似た釣り気味の眉毛をひょうきんに持ち上げて、カッカッカ、と豪快に笑う。半袖のシャツを肩まで捲り上げて覗いた逞しい褐色の腕、タオルをかぶった髪は短く刈り込まれていて、虎次の全身からは男らしいエネルギーが溢れている。
 龍之介は今はまだひょろりとしているが、もしかしたら将来こんな男になるのかもしれない。翼はくすぐったいように目を細めると、小さな声で礼を言って俯いた。
 その時、もぞりと尻の辺りに違和感を感じて翼はびくんと身を竦ませた。
 浴衣の薄い布地を、大きな……おそらくは大人の男の手が、いやらしく這う。声も出せずに身を強張らせていると、尻たぶをぐっと揉み込むように掴まれ息が詰まった。
 振り返ることもできず、瞠った目を虎次に向ける。彼の立ち位置なら、翼の背後の人間がよく見えるはずだ。しかし虎次は翼の異変に気付いた様子もなく、にこにこ笑い言った。
「翼は浴衣がよく似合ってるなぁ」
「親父、毎年それ言ってねぇ?」
「はは、だって本当のことだもんなぁ。なぁ、野洲(やす)?」
「ええ、本当にそうですねぇ」
 頭上から聞こえた声に、翼はハッとなって振り仰いだ。
 翼の背後に立ち、値踏みするような目で彼を見下ろしていたのは、虎次の下で働いている野洲という中年の男だった。虎次にも勝る屈強な肉体は、建設現場のバイトで培われたものだと聞いている。無精髭も相まって、よく言えばワイルドだが、どちらかというと粗暴な印象を翼は抱いていた。
 恐る恐る視線を下げると、翼の尻を撫で回しているのは野洲の手に間違いなかった。翼は必死に悲鳴を殺す。とてもではないが、この体躯のいい男に抗える気がしない。
 男は少年の怯える様を楽しむように下卑た笑みを浮かべると、翼の横に並ぶようにして龍之介からの視界を遮った。恋人のように翼の腰に手を回し、浴衣の合わせに汗ばんだ手を滑り込ませる。股間に直接触れられ、翼の薄い肩はビクンと跳ねた。
「あ、いたいた、龍!」
 その時、浴衣を着た3人娘が顔を覗かせた。龍之介の同級生だ。浴衣を着て髪を上げているせいか、龍之介よりも大人びて見える。
「何、今日は龍が焼いてくれるの? わたしそれ食べたぁ〜い!」
 甘えたような声を発しているのは、翼に龍之介の進学先を尋ねてきたことのある少女だった。
 龍之介はその下心にも気付かずに弱ったような顔をしていたが、虎次に肘で小突かれると渋々ヘラを握った。
「ったく、しゃーねぇなぁ……」
「可愛い子にねだられちゃ、龍も男見せねぇとな。お前はしばらくここで俺と焼きの練習だ」
「あの、僕……、あっ」
 翼が口を開くと、野洲の指先が翼の幼い性器の先をぐり、と刺激した。ふらつきそうになるのを抱きとめられ、翼も野洲の腰にしがみついてしまう。
「どうした翼、人に逆上せたか? しょうがねぇな……野洲、休憩所に連れて行ってやってくんな」
「はいよ。――翼、俺が面倒見てやっから、安心しな」
 翼は振り返り振り返り視線を送ったが、早速作業に取り掛かった龍之介はそれに気付かず、虎次は翼と目が合うと無邪気ににっと笑った。

 野洲の強い力にほとんど引っ張られるようにして、翼は人の波を逆流する。休憩所は神社の階段を下りた先、商店街の近くにあるが、野洲は階段の半ばで道を折れると茂みの中にずんずんと入って行く。
「あ、あの……野洲さん、休憩所はこっちじゃ……」
 震える声を振り絞ったが、野洲は無言のまま足を止めない。しばらくして辺りを見回すと、かつて翼が連れ込まれたあの竹林の奥深くだった。囃子の音は遠く、心細さに足が震える。
「まったく、聞いてた通りいやらしいガキだな」
 野洲は乱暴に翼の腕を引くと楓の木に身体を押し付け、再び浴衣の上から股間に手を伸ばした。
「いっ……ゃ、」
 翼はきゅっと目を閉じながらも無抵抗に身を委ねる。男の手が衽を割ると、翼の性器が剥き出しになった。
「下着も着けないで浴衣で男誘うなんて、ガキがやることかよ」
「これは……言われた、から」
「あいつに言われたら本当に何でもやるんだな。淫乱め」
 乱暴な言葉で詰られて、恥ずかしさと恐ろしさで翼の大きな目が潤む。
「自分から物欲しげな顔で誘い出しておいて泣くのか? それも男が喜ぶからだろう」
「ちが……」
 否定する翼の滑らかな頬を、透明な涙が滑り落ちる。野洲はニタリと笑うと長い舌を出しその涙を舐め啜った。翼はひゅっ、と喉を鳴らす。
「あれからずっと抱かれてるんだってな、いろんな男に。そんなに好きか? ケツマンコ犯されるのが」
 翼を手篭めにした男は、それからも翼を何度もここに呼び出した。やがて別の人間も混ざるようになり、一体何人の相手をしたかなど知る由もない。
 野洲の手が浴衣を捲り上げ、翼の下半身が夜気に晒される。鳥肌の浮いた尻たぶを掴むと、ぐっと割り広げた。
「ひぅっ」
 あれから5年――無理矢理身体を奪われたあの夜、翼は変わってしまった。否、変えられてしまったのだ。
 怖くて痛くて苦しくて、助けを求めて泣き叫んだ。熱く硬い剛直で何度も奥を突き上げられて、自分の知らない快感の扉を抉じ開けられて、身体の奥を汚された時には抵抗も諦めた。
 やがて、あられもない声を発しながら男の欲望を自ら受け入れ腰を捩り、快楽に飲み込まれると――お前は物覚えがいいな――あの男はそう言って翼の耳元で笑った。
「あれから何人のチンポ咥え込んだんだ? 言ってみろ」
「わ、かんな……」
「わからないだと? まだ13だったか……ガキのくせに相当ハメてんだろう。さんざん突きまくられて、可愛いエロ穴も緩くなっちまってるんじゃねぇか?」
 立ったままの体勢で、野洲は翼の尻の窄まりに手を這わせると無骨な指を1本強引に押し込んだ。
「ひぁっ!」
 翼の先走りで濡らしたとはいえ、太い指の押し入る感触に声を詰まらせる。もう一方の手で前を弄ばれて、内股気味になった足がガクガクと震えた。
「ちゃんと立ってろよ。俺のデカチンポじゃいきなり挿れたら裂けちまうかもしれねぇからな。こうやってゆっくり解して……へへ、指だけでも十分好いみてぇだけどな」
「ふっ、んぁ、あ、いやっ……」
「どんだけヤり込んでんだか、女みてぇに濡れてきやがる。お前のここ、男を食うためにできてるみてぇじゃねぇか。いやらしく指に絡みついて……早く突っ込んでくれってせがんでるぜ」
「そんな、じゃ……はっ……ん、あっ!」
 言葉で嬲られて、それだけで感じてしまうのが悔しい。翼は顔を真っ赤に染めながら涙を零す。
 何度も雄を受け入れさせられたそこは、刺激を受けると腸液が分泌されて潤う。心では拒絶したくとも、翼の身体は無惨に作り変えられ、浅ましい淫獣と化してしまった。こんなこと望んでいない、無理強いされているんだと取り繕いながら、腹の底はこの行為を渇望するように切なくなる。
「あ、あっ……! そこ、だめぇっ……ん、あ、あ、あはぁっ」
「まだ1本だぞ。これはどうだ?」
「やぁンっ!」
 ぐぷん、と男の指が2本に増え、後孔が押し広げられる。翼は野洲の腕にしがみつきカクカクと腰を揺らした。
「はは、雌犬みたいなマネしやがって。もうちょっとだ、我慢しな」
「は、あんっ! あ、あ、あひ、やぁっ!」
 指先が翼の好いところを掠める。呼吸は速くなっていく。
「あっ、あ、あ、……はや……く、もっと……太くておっきいの、欲しいっ……ふぅン!」
 赤く色付いた唇ではしたなく言い縋ると、その口を野洲の唇が塞いだ。長い舌が狭い口内を圧迫し、舌を絡ませる。
 息苦しくて挿入された2本の指を食い締めると、さらに腸壁を刺激され快楽の渦に飲み込まれた。けれど翼の身体はもうすでに知っている――快楽の坩堝はまだ、この先にあることを。
 男の指がより深く出し挿れされるように腰を前後に動かすと、野洲の分厚い唇が離れた。だらしなく垂れた唾液を拭おうともせず、翼はトロンとした顔で野洲を見上げる。
「や、すさん……も、挿れてくださ……」
「そう言われると焦らしたくなるのが男の性(さが)ってもんだよなぁ」
 意地悪く笑うと、野洲は自身のジーンズに手を掛けファスナーを下ろした。下着をずり下ろすと赤黒い極太の性器が曝け出される。その立派な一物に翼は思わずゴクリと生唾を飲んだが、男のシンボルはまだ勃ち上がってはいなかった。
「挿れて欲しかったらどうすりゃいいか、わかるな?」
 その言葉は、翼にとっては命令のようだった。すぐさま野洲の足下に傅き、グロテスクな性器に手を添える。小さな口を開くと、細い舌で先端を舐めた。
「ん……ふ、」
 ちゅ、ちゅ、と亀頭部分に口付け、唇の先で甘く包み込みながら、じょじょに口内に飲み込んでいく。野洲はゆっくりと地面に膝をつくと、四つん這いに屈み込む翼の後孔に嵌めた指を抜き挿しし始めた。
「ふぅっ……ん、ンふっ……ふ、」
「ああ、上手いぞ……その調子だ。もっと喉の奥まで挿れるんだ。じゃないと根元まで届かないだろう」
 後頭部を押さえつけられ、ぐぅ、と呻く。吐きそうになりながらも翼は茂みに鼻先を突っ込んで根元まで飲み込み、喉の奥の粘膜まで肉棒を受け入れた。
 後頭部から滑らせた手が首筋をねっとりと撫で、ゾクゾクとある予感が身体中を走る。この熱い大きな手が、自分の身体を侵略していく――その想像に、翼の身体は震える。
「ぐぶっ……ふ、ぅ゛……っ」
「凄いな。一体どう調教したらこんなエロい身体に育つんだか」
 中で指を折り曲げられて、翼は堪らず高く鳴き、口からチュポン、と音を立てて男の性器を吐いた。
「ゲホ、ゴフッ! は、はぁ、はっ……! あ、あぁっ……ん、あ、そこ、やめ……っ! あ、あはぁっ」
「ここが好いのか? ほら、もっとしっかり腰振ってみろよ、エロガキが!」
「あンッ、あ、あ、あ、いやあぁッ!」
 翼は達してしまいそうだったが、自ら腰を動かすと野洲は指を引いてしまう。刺激して欲しいツボはわかっているのに叶わないもどかしさに、翼は気が狂いそうだった。
「お、ねが……! 野洲さん、僕……も、ください……っ」
「もっといやらしく誘ってくれよ、翼」
 ハァハァと獣のような荒い息を吐いていた翼は涙で濡れた顔を上げると、よろりと立ち上がり木の幹に手をついた。自ら着物の裾を捲り上げ腰を突き出すと、白い尻が闇夜にぼんやり浮き立つ。
 野洲に施された前戯だけで、翼の尻の穴は男の欲望を待ち侘びる性器へと姿を変え、挿入を待ち侘びてヒクついていた。
「野洲さん、僕のマンコ……おっきいチンポで奥まで突いて、ぐちゃぐちゃにしてください……っ」
 野洲は返事もなく躙り寄ると、翼の細腰をがっちりと掴んだ。熱く硬い塊を後孔に感じるが早いか、入口を亀頭が押し広げる感覚。翼はぎゅっと目を閉じる。
「は、ぁ――ッ!」
 ズロロ、と内壁が抉られ、肉襞が熱い肉棒に引きつれて激しく擦り上げられる。1度の挿入だけでビリッと背を走る快感に、翼の白い肌は粟立つと同時にほの朱く染まった。
「ひひ、すげぇや……っ! この狭い肉筒、トロトロに熟れて締めつけてきやがる……っ、味わったことがねぇくうらいの上玉じゃねぇか!」
「ひぅっ……ひ、はぁ、あ……あっ!」
「大人の男を食い物にしてるだけある、上等なエロ穴だッ!」
「ひゃあんッ!!」
 引き抜き、再び激しく突き上げられ、ゴチュンッ、と亀頭が前立腺を叩く。そこが好い――強く当たるように腰を捻ると頭が真っ白になる。快感を逃したくなくて震えながらじっとしていたが、野洲は自分のテンポで律動を開始した。
 ぐぷ、ぐぷ、ぬぷ、ぬぷ、ぐちゅっ、ぐちゅっ、ごちゅんッ!
 一突きされるごとに頭の中に星が瞬く。野洲の性器からも先走りが漏れて、結合部の縁からは精液がダラダラと溢れ出した。それが潤滑油となって、ますます挿入は深まっていく。
「は、は、すげぇ、すげぇっ! キュンキュン吸い付いてっ、女の膣より好いぜっ!」
「あぅっ、あ、あ、あンっ、ひぁ! や、あっ! すご……い、そこ、そこぉっ! あ、あ、あ! やっ、深っ――ああっ!!」
 とうとう野洲の性器は根本までぐっぽりと飲み込まれ、パンパン、パチュンッ、と湿った空気に肌を打つ音が響く。結合した肌の間は汗と体液が飛沫となって地面に散る。
「へへ、すげぇ、全部入ったぞ! こんな細ぇ身体に俺のデカいのが……はは、どうだ俺のチンポは?」
「あああっだめ、だめだめッ! おなか……っ、いやあぁッ!!」
 男の性器が収まっている下腹部をグニグニと手で揉まれ、翼はいやいやと首を打ち振るう。翼の両足はガクガクと震え力が入らず、ほとんど男との交合でのみ支えられていた。
 野洲の手は翼の小さな性器をきゅっと握り込み、もう一方を浴衣に滑り込ませると乳首をも責める。コリコリと捏ねられて、2つの突起はあっという間にピンと張り詰めた。
「んあっ、は、ああンッ」
「ほら、ちゃんと木に手をついてろ。天国見せてやらぁ!」
 ずちゅっずぢゅっ、どぢゅっどぢゅっ、ごぢゅんッ!
「ひぁ、あああ! あっあっあっん! あん、あはぁ!! いや、いやっ、いやぁっ!」
 抽挿は激しく、翼の喘ぎはもはや女の悲鳴のように高い。いやいやと言いながら、野洲の律動に合わせて翼の腰も揺れる。
「チンポ好きのエロマンコ、お望み通りぐちゃぐちゃにしてやるよっ!」
「あああっ、ら、めきもひぃ……っ! らめ、らめぇ、こわれひゃ、あ、あ、あっ! ひッ――!!」
 ぐぢゅんっ、ぐぢゅんっ、と精液混じりの音と体内に響くゴッ、ゴッ、という突き上げが翼の思考を奪っていく。欲望を堰き止められている性器は暴発寸前だったが、翼は射精しないまま極めていた。
「ぐぅッ! く、すげぇキツ……っ手の中のショタチンポもビンビンだっ」
「い――ッや、離し――!! やぁ、……あっ、あンッ! あはぁ、あああッ!」
「もっと、もっと泣け、鳴けッ!」
「ひぁッ! いや、いやあぁっ! まって、まってぇもうイッ――いあ、だ、いあ、あッ、あああーッ!!」
 翼は野洲の望みを叶えるように悲痛な声で激しく泣き叫んだ。
 野洲の腰の動きはいよいよ速く小刻みになる。ゴリュッ、としこりを激しく突かれると肉襞の痙攣が止まらない。
「ら、めっそこ、そこぉ、ゴリゴリッて、やああっ、ひぎっ!」
「は、は、お前のトロトロのマンコ、俺のザーメンぶちまけて妊娠させてやるッ!」
「あ、はぁ、あっ! はっ! はぁっ、あッ――!!」
「ザーメン垂れねぇようにしっかりケツ穴締めろよ! 孕め、孕めッ――ううっ!!」
 野洲は後ろから翼の身体をぎゅうっと抱き竦めた。同時に、腹の奥に嵌めた性器から精液を迸らせる。
 ビュクビュク、ビュルルルッ――!!
 強引に身体を後ろに反らされた翼の手は木から離れ、助けを求めるように宙を掻いた。腹の奥に叩きつけられた爛れた欲望を全身で受け止め、ビクビクと痙攣する。
「あああ、あっ……! おなか、おくぅ……出てぅ、あつ、あちゅい……よぉっ……」
 犬のような息を吐きながら、突き上げられたままの下腹を押さえた。ドクドク頭の中にまで響く脈は自分のものか、それとも――男の性器から溢れ出る精子で腸内が熱く満たされると、翼の下腹は受胎したかのように薄っすらと膨らんだ。
「ふぅ、うぅ……すげぇ、いっぱい出たな……お前の大好きな精子でたっぷり種付けしてやったぜ」
「はふ……ひゅぅっ、あ……」
 ジュポ、と音を立てて性器が引き抜かれると、後孔からドクドクと大量の精液が溢れた。男が幼い性器から手を離すと、翼は楓の木に勢いよく精液をぶちまけ、ガクリと膝をつく。どちらのものとも知れなくなった体液をボタボタと垂らしながら蹲り、ぎゅうっと自分の身体を抱き締める。
 まだ脈が速い。剛直で執拗に擦られた内壁はじくじくと熱を持ち、翼の好きなところは強い快感を湛えたままズキズキと痛いくらいだ。後孔は大き過ぎる性器の抜き挿しに、陰唇のように微かに赤く腫れて捲れていた。
「は……、はぁ……っ、あ、はぁ……っ」
「好かったぜ、翼……噂通りな」
 乱れた衣服と髪を整えながら、野洲が呟く。
「てっきりあいつが脅してマワされてるんだと思ってたが、お前も相当なスキモノってことか。知られたら困るのはあいつよりお前の方だな」
 その時、遠くで名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
「翼ーっ! 翼、どこだ! 返事しろー!」
 切羽詰まった必死の声――龍之介だ。
 一体ここでどのくらいの時間が過ぎたのかわからないが、休憩所に親友の姿がないと知るや慌てて飛び出して来たのだろう。
「……りゅ、」
「おっと、こんなところ龍に見られていいのかな?」
 詰るように言われ、翼はぼんやりと自分の身体を見下ろす。浴衣は乱れ、下半身は精液にまみれていた。今しがた野洲に出されたばかりの精液で膨れた腹を撫でると、さっきまで犯されていた後孔からコポリと精液が溢れる。
 翼は唇を噛み、それから小さな声でポツリと言った。
「……犯して」
「――何だって?」
「僕と同じように、……龍のこと犯してよ」
 野洲は目を見開いた。
「お前……自分が何言ってるかわかってんのか?」
 野洲は驚きと呆れと、少しの恐れを歪んだ笑みに交えながら問う。
 不気味なほど静かな顔で、翼はコクンと頷いた。
「ずっとそうして欲しかったけど、あの人には頼めないから」
 翼の幼い身体をめちゃくちゃにしたあの男――目隠しをされてもすぐにわかった。覆いかぶさった男のシャツに染み付いた、ソースの香り。
 あの事件の後、日の落ちた時間に翼を呼び出しても龍之介の咎めを受けないただ1人の人間。
「……虎次さんには、自分の息子を犯すことはできないでしょう?」
 おじさん、やめて――犯されながらそう叫ぶと、男は律動を止めた。翼の目元を覆っていた手拭いが解かれると、そこには虎次の困惑した顔が。翼は泣きながら続きをねだり、虎次は子供の要求に応じた――以来、この爛れた関係は続いている。時に町内の他の大人達も交えながら。
 野洲は目を細めると、ボリボリと頭を掻き毟り、それから大きな身体をのそりと起こした。
「いいだろう、楽しませてもらった礼だ。あの跳ねっ返りがどんな顔してヨがるのか、俺も興味があるしな」
 ニタリと笑うと、男は翼を残しその場を離れた。
 快楽の名残が渦巻く身を抱き締めながら、翼は目を瞑る。
 いつも自分の近くにいてくれた龍之介。親友を凌辱したのが自分の父親だと知ったら、彼はどんな顔をするだろう。もしかしたら、己の罪のように感じて翼の前から姿を消してしまうかもしれない……それでは困る。
 自分が被害者であり続けることで、龍之介を繋ぎ止めておけると思っていた。けれど彼が高校生になったら? 翼だっていつまでも守られているばかりの子供ではいられない。
 あの清廉な瞳を獣の快楽に濁らせ、同じところまで引きずり下ろすしかない。翼はもう、あの快活で無垢な少年には戻れないのだ。
 野洲の姿が消えた竹林の奥、喚き声がやがて高い悲鳴に変わり、切ない喘ぎが甘い呻吟を奏でるまで、翼はじっと耳を澄ました。

2017/08/17

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