Long StoryShort StoryAnecdote

いなりむすび


 シャン、シャン、ドンッ。シャン、シャン、ドンッ。
 村祭りの始まりを知らせる神楽が、厳かに空気を震わせる。
 朝霧の立ち込める山村を、したしたと足袋で駆ける足音──目を凝らせばその音の主は、白装束に狐の面をつけた少年達だった。1人、2人……性の判別も曖昧な影が、神社の境内から大きな赤い鳥居をくぐりあちらこちらへと散開していく。
 それから半刻ほどを経て、今度は先ほどよりも少し重みのある足音が。
 狐を探して辺りを見回すのは、赤や青の鬼の面をつけた男達だ。少年達と同じく白い装束に足袋を履いているが、その肉体は鍛え上げられ逞しい。がっしりとした肩に担いだ木の棍棒は真っ赤に染まっている。まるで血のように見えるそれは染料だ。棍棒に紅ガラを染み込ませた布を巻きつけてある。
 この村には、10から15歳の少年が狐の面をつけて鬼から逃げる「いなりむすび」という風習があった。大まかに言えばいわゆる「鬼ごっこ」である。狐は、鬼に捕まらずに逃げ切ればその年の厄を払える。捕まった場合は村の繁栄祈願として、その身を鬼に捧げる。
 その年ごとに1人だけ選ばれる「ウカノミタマ」という五穀豊穣を司る神の役を担う少年は、通称「お姫(ひぃ)さん」と呼ばれ、内布に朱色の組み紐をつけている。15歳の狐の中で、前年に最も鬼に「気に入られた」者が選ばれることになっていた。
 一般の祭りと様相が異なるのは、祭りに参加しない者達は家に閉じ籠り一切これに与しないことだ。衣装を身につけた狐と鬼だけが早朝から神社に集まり、定刻の6時になると神楽とともに祭りをはじめる。

 神社を出て竹林を進んだ赤鬼は、その奥の井戸の影に小狐の姿を見出した。
「──見ぃつけた」
 鬼は少年の腕を捕らえると、棍棒の先を少年の身体に押しつけて白い着物を赤く染める。ただ怯えるばかりの少年はされるがままで、鬼は面の内側でほくそ笑んだ。
「坊主は今年が初めてか?」
 聞けば、狐の面がコクコクと必死に頷く。素直に応じれば逃してもらえるかもしれない、とばかりに。
 しかし鬼は少年を羽交い締めにすると、容赦なく白衣(びゃくえ)の衿に手を差し入れた。
「ひ、やっ……!?」
「最初が初物とは今年はツキがあるな」
 少年のきれいな尻が剥き出しになると、鬼は自分の股間に手をやり内布を暴いてボロリといきり勃ったものを取り出す。
「この祭りのことをよーく教えてやるからしっかり覚えろよ、坊主。お姫さんになれるかどうか、まずは俺が味見をしてやろう」
 言うと、少年の両足を肩に担ぎ上げてその間に身体を捻じ込んだ。がっちりと少年の身体を押さえつけると、双丘の境にズブリと性器を突き挿れる。
「ふぁっ……!」
 面をつけた少年の喉がぐっと晒される。鬼に掴まれた両手首は紅ガラで赤くなり、まるで躊躇い傷をつけたかのようだ。
「う、くっ……、少し力を抜けよ」
 鬼は呻きながらも低く笑うと、自身の欲望のままガツガツと腰を振りはじめた。
「あ、……あっ、いやぁ……っ!」
 足袋を履いた少年の爪先が宙空で揺れる。面で覆われくぐもった声が、ひっきりなしに小さく喘いだ。
「は、ぁっ、あっ! や、あんっ! いた、……ぁっ、」
「これで慣れんと後がつらいぞ」
 パン、パン、パン
 葉のさざめきに、肌のぶつかる乾いた音が重なる。
 鬼は狐の抵抗がないと悟ると細い手首を解放し、その手で少年の胸元を開いた。しみひとつない真っ白な薄い胸が現れると、鬼はそこに自分の所有印を示すかのようにべたりと手を触れ、紅ガラを塗りたくる。
「ふっ……! ん、はぁっ……!」
 そのまま小さな乳首を刺激すれば、狐は背中を浮かせてよがった。
「──っ、締めつけやがって……」
 鬼は乳首も虐めながら腰を突き上げ、まだ何も知らない身体に快楽を植えつけていく。
 少年もいつの間にか勃起し、先端からは先走りが溢れていた。鬼はそれに手を伸ばすと扱き、そうしながら自分の快感を満たすこともやめなかった。
「んや! あんっ! んふっ! ふあぁっ!」
 太く長い性器が少年の前立腺をこすり上げる。鬼は息を詰め、低く呻いた。
「うっ、おぉ……!」
「んひ、あはぁ……っ!」
 切なげな喘ぎをあげると、少年は爪先をピンと引き攣らせた。同時に、下腹をビクビクと震わせる。鬼が少年の中で射精すると同時に、少年も絶頂したのだ。
 鬼が性器を引き抜くと、狐は股を大きく開いたままのみっともない姿で、後孔から子種汁を溢れさせながらガクガクと震えた。
「あ……、はぁ、はっ……ん、」
 鬼に触れられた部分は血塗られたように赤く汚れ、そうして胸を波立たせる様はまるで重篤な怪我人のようだ。
「どうだった? 今日はみんなに可愛がってもらえよ」
 ぐったりとした狐を満足げに見下ろすと、鬼は次の獲物を求めて踵を返す。
 狐もまた、震える手で着物の前を合わせると、うまく閉じられない足を励まし立ち上がった。精液の垂れる足を引きずり、ゆっくりと歩き出す。
 逃げなければ、また別の鬼に捕まえられてしまう。そしてまた、今のような「繁栄祈願の契り」が繰り返されるのだ。

 続いて、赤鬼は蔵の中に先程よりも少し年上と思しき少年を見つけた。少年の白衣にはすでに紅ガラがつき、汚れた手が這い回った跡が明白に残っている。ことに、太腿の内側に残ったこすられたような跡は、鬼の身体が何度もそこを出入りしたのを物語るかのようだ。
 鬼が少年の肩を掴み上向かせると、少年は面をつけていなかった。憔悴しきった顔で鬼を見上げるがその瞳に力はない。
 鬼は少年をその場に押し倒すと、すっかり着崩れた着物をさらに剥いて片足を肩に抱え上げた。露わになったそこはすでに濡れそぼっており、一体何人の鬼に使われたものか、後孔は拡がり微かに腫れている。
 鬼は、そんな少年の悲惨な姿にも少しも躊躇せず、前に倣うように性器を押し込んだ。
「いやっ……! もうやだぁ、」
 少年は苦しげに眉を寄せると高い悲鳴をあげたが、肉体はそれに反してぎこちなく腰をくねらせた。
「あ、はっ……! んはっ、やっ……、やめっ、」
 無理な体勢で犯されながら、少年は首を振り必死に鬼の胸を押し返そうとする。しかし、その程度の力では鬼の身体はびくともしない。必死の抵抗がいじらしく、鬼はかえって興奮を煽られた。
「好いぞ坊主……、好い締めつけだ」
「ん、あっ……あんっ! も、やめ……さっき達ッて……あ"はぁンッ!!」
 好いところを突いたか、少年がビクンと跳ねて鬼の性器をきつく締めつけた。目尻からホロリと涙を零し、大きく開けた口からは淫らな甘い声。
「はぁんっ! やはぁっ、らめっ、らめぇっ! やぁっ、いやぁあっ!!」
「さっきもさんざん可愛がってもらったんだろう? え?」
 ズン、ズン、ズプッ、ジュプッ
「あっ! だめっ、だめぇっ、……んひぃっ!!」
 鬼は少年が快感を得ていることに喜色を見せると、背中を抱え上げ自分の上に跨らせた。下から鬼の剛直を自重で受け止めることになった少年は顔をくしゃくしゃにして喘ぐ。
「ひああぁ──〜〜ッ!! ふか、あ"……っ! りゃめ、お、おくっ、あた、て……やあ"ああぁぁぁ……っ!!」
 少年は鬼の肩にしがみつくとまるで自分からねだるように腰を揺らす。先までよりも奥の狭いところがギュッと締まる感覚に、鬼も喉を反らした。
「うっ……くは、すげぇ……っ」
「あ、あ、あっ……、そんな……あ"っ、りゃめ、うごかないれぇっ、」
 グズグズと泣き縋る姿が愛らしく、鬼はますますものを昂らせると少年を抱え上げて立ち上がった。
「いやっ、い"や"あぁぁ──〜〜ッ!!」
 自重でさらに深いところを責められることになった少年は堪らず、悲痛な叫びを迸らせたが、赤子のように抱き上げられては逃げることもできない。
「そんなに大きな声で鳴いたら他の鬼が来ちまうぞ」
 赤鬼は意地悪くそう嘯いたが、快感に晒されながら泣きじゃくる少年の耳には到底届かなかったことだろう。そのままガツガツと突き上げ、蔵の中央にある柱に少年の背を預けるとさらに激しく責め立てた。
「ふぐ、んっ……!! んぶ、ふうぅっ……!!」
 泣き崩れた少年の顔つきが気に入った鬼は自分の面をずらすと少年の唇に自分のそれを重ね、舌を絡ませ口内までも我がものにしてしまう。くちゅくちゅと唾液を交わして絡み合う舌と、少年の熱い肉襞と戯れる欲望の楔──少年とともに快楽に飲み込まれる気持ち好さに、赤鬼も呻くと堪えていたものを吐き出した。
「ぐ、ンッ……!! ふぅッ……ン、」
 背中に柱のすり傷をこさえた少年は気を失ってしまったようで、全身をだらりと弛緩させて鬼に体重を預けた。赤鬼は涙に濡れた少年の顔を少し拭いてやると、落ちていた狐の面を払い少年の顔にかぶせてやる。
 蔵を出る時、入れ違いに3人の鬼が暗がりの中に入って行ったが、中から聞こえてくる嬌声は半ば正気を失くして、悲鳴はやがて甘いすすり泣きへと色を変えていくのだった。

「離せ! 離し……やめっ、」
 少しの休憩の後、路地の奥から少年の声が聞こえたことに赤鬼は足を止めた。覗き込むと、猫1匹通る程度の細道の壁際に押さえ込まれた狐と、襲う青鬼の姿。少年はこれまでの狐よりも体格がよさそうだ。力もあるのか、青鬼も苦戦している。
 揉み合う2人に近づくと、赤鬼は少年の一方の腕を取った。
「くそっ……2人がかりとは卑怯だぞ!」
 鬼同士は頷き合うと、少年の非難など聞き流して押さえつける。少年を地面に引き倒し四つん這いにすると、青鬼が上向かせてその口に性器を捻じ込み、口淫を強いる。息苦しさに抵抗が弱まると、赤鬼が少年の後孔を貫いた。
「ぐ、うっ……!」
「はっ、なんだ。今までよく逃げ回ったもんだ」
 まだ誰にも汚されていなかったそこはきつく、異物の侵入を拒む。赤鬼は喉の奥で嗤うと、少年の腰を引くようにして強引に押し入った。
「ンン"──ッ!!」
 くぐもった悲鳴をあげながら、少年は後ろからの激しい突き上げを受け止めるしかない。味わったことのない痛みに苦しみながら、やがて訪れる奇妙な感覚に少年の頬は紅潮していく。
「ふうっ、んっ! んぶ、んぐっ、んっ」
 鬼の手が少年の身体を弄り、白い肌はたちまち紅ガラで染まっていく。奥を突き上げられて呻いた時に喉が窄まり、口の中に青鬼の白濁が迸った。
「ぐっ……げぇっ! ごほっ、かはっ……あ、ぐ、うぅ、やめ、もうやめ……っ、」
 涙に濁った鼻声で嘆願する声も虚しく、鬼の抽挿は容赦なかった。少年の声は高くなり、鬼も低く喘ぐ。腰だけを高くした少年は膝を震わせながら達していたが、まだ絶頂に至らない鬼は極めている少年の中の具合を堪能した。
「む、り……! も、やめ、て……達ッてるぅ……っ!」
 少年の直腸はビクビクと痙攣し、鬼の性器を悦ばせていた。きつい締めつけを味わいながらも奥を容赦なく責め立てれば、少年はヒィヒィと喘ぐ。
 それから少ししてやっと鬼も果てたが、少年は絶頂に次ぐ絶頂を繰り返し、ビクビクと腰を跳ねさせた。性器を抜き取った穴から勢いよくしぶく白濁を見届けると、赤鬼はまたその場を離れていく。残された青鬼のもと、少年はしばらく自由にならないだろう。

 村のあちこちから、狐の鳴き声が聞こえる。甘く響くものもあれば、絶叫に等しいものもあった。身体を傷つけるようなことはしていないはずだが、とは言え紅ガラまみれとなった身体では例え流血するような傷をつけられても、それを見分けることはできないだろう。
 赤鬼は自身の左手の甲にある赤い傷痕を撫でる。傷口に紅ガラが残ったまま治癒したそれは、稲妻の刺青のように見える──どの鬼も、かつては狐だった。赤鬼はウカノミタマには選ばれなかったが、悪鬼に襲われ犯されながら左手まで傷つけられたのだ。
 ぱん、ぱん、ぱん、
 その時、手を打ち鳴らすような音がして赤鬼は神社の境内まで戻って来た。果たしてそこに、今年のお姫さんことウカノミタマの狐の姿があった。
 聞こえていたのは肌を打つ音だったらしい。狐は四つん這いになって鬼に犯されていたが、ちょうどことが済んだのか、鬼は性器を引き抜くと身支度を整えてその場を去って行った。
 赤鬼は身を起こそうとしている狐の肩を掴むと、まだ快感の余韻にふらついているのをいいことに押し倒した。朱色の組み紐を確認する。
 いきり勃ったものを少年の尻に押し当て、焦らすようにその肌をこすった。肌と肌のあわいがぬめり、くちくち、と卑猥な音がする。
「は、あっ、」
 鬼の性器が少年の性器に添うと、狐の肩がビクンと揺れた。ヌリュヌリュと性器をこすり合わせ、少年の性器が緩く勃ち上がったのを確認すると2つの性器を握り、亀頭部を手の平の腹で撫でるように愛撫した。
「ひっ……!?」
 一方で、まるで女の乳房を揉むように少年の小さな尻を揉みしだく。
「やぁ、あっ、あんっ……!」
 びく、びく、とか弱く震えながら抵抗もできない様子に鬼は暗く嗤うと、少年の乳首にも手を伸ばした。
「はっ……あ、やっ……」
 少年の装束は乱れ、鬼の手で赤く、土塊で黒く、その純白を汚しながら腰を揺らす。まるで雄を求めるようなその仕草に急き立てられるように、鬼は先までより硬く漲ったものを少年の菊門に押し当てた。
「"お姫さん"」
 耳元で鬼が囁く。それは、ウカノミタマと交合する時の合言葉だ。少年は微かに震えながら顔を斜向けると、濡れた声でポツリと応えた。
「……"お入んなさい"」
 瞬間、赤鬼の剛直がずぶり、少年の後孔を貫き直腸をこすり上げた。
「ふっ……ン"あああ──ッ!!」
 少年は弓形に仰け反った。押し込まれた異物は、華奢な造作の少年の身体には無体だ。性器をこすり合わされてその大きさや熱を認識させられていたとはいえ、衝撃に少年は悲鳴をあげた。
「あんっ、あっ! あ、ぁ、待っ……ゆ、くりっ……ゆ、くり動いてっ……!」
 ガツガツと抉るような突き上げに、少年は己の役を忘れてそう懇願するも、鬼は聞く耳を持たない。変わらぬ速さと激しさで少年を背後から小突きあげる。時に浅いところを執拗に責め、時に深いところを強く突くと、少年の苦鳴も甘さを帯びていく。
「はぁっ、はぁんっ! あっ、やぁ、あんっ、」
 鬼の性器は自身の先走りと少年の体液で濡れ、結合部からは湿った音が。
「いや、や、ひぁあんっ! あんっ、あっ! あーっ! はひっ、ひぃんっ、あ、あああっ、はぁんっ!」
 鬼が少年の細腰をグンと引き上げ、叩きつけるように犯すと少年はうなじまで真っ赤になって首を打ち振った。
 鬼の性器は、もはや少年の結腸口にまで届いている。その狭い入口をトントンと叩かれて、狐の面の下からポタリと涎が落ちた。
「んはっ! あっ……! ぁ、はぁ、だめぇ、そこ、いやっ……ふかい、ふか……っ、こわ、いぃっ、」
 次にポタポタと落ちてきたのは涙か。少年は恐怖と快感がないまぜになって、全身鳥肌を立てながらよがった。
「うあっ、あ、あああ……っ」
 ぐじゅ、ぐじゅ、ぐじゅ、
 先までよりも淫らな音がするのは、鬼がすでに少年の中で射精しはじめているからだった。少年は自分の中が白濁で満たされていくことにも気づかぬまま、雌猫のように高くした腰をカクカクと振りたくる。
「あ……ぃっ、あっ、あん! は、はぁっ、あ、ん! んひ、ひぃ……っ!?」
「お姫さん……、中に、俺の子種をたっぷり……飲んでください」
「ん、んっ……! いや、やあぁぁ……っ」
 耳元で囁くと狐がガクガクと震える。射精しながら腰を振っていた鬼もとうとう動きを止めた。最後の一滴まで振り絞るかのようにがっちりと狐の腰を押さえつけ、その奥に大量の子種を仕込む。
「が、ひっ……、ひ、ひうぅっ……!!」
 少年の結腸口にはめられたものから勢いよく吐き出された熱い精液は、その狭い粘膜の壁を縫うようにして奥の奥まで届けられた。
 鬼は熱い息を吐いてやっと腰を引いた。ヌポォ、と熱い肉棒を引き抜かれた穴はぽっかりと口を開け、その縁をヒクつかせては中に出された精液をだらしなく吹きこぼす。何度も打ちつけられて真っ赤になった小さな尻を、白濁が伝う様はあまりに淫らだった。
 清潔にして不可侵を湛えていた少年の白装束は見る影もなく、鬼の手で掻き乱され赤く汚れていた。
「はっ……、はぁ、はっ……ぁ、」
 狐の面の隙間から切なげな吐息を漏らしていた少年だが、ギュッと拳を握ると震える膝を叱咤してなんとか立ち上がる。よろめきながら、鬼から1歩、また1歩と距離を取りはじめた。
 赤鬼は自身の身支度を整えながら、その小さな背中を見送る。ウカノミタマに選ばれたということは、あの少年が昨年最も鬼に愛玩されたのだろう。15歳のしなやかな身体は、これから大人の男へと変化していく。
「……頑張りな、お姫さん」
 赤鬼はそう言って、逃げる狐に背を向けた。

 頼りない足取りで歩む少年の前に、今度は青い面をつけた鬼が現れると、少年を木の幹の前に追いやった。少年の着物を捲り上げ、露わになった後孔を見ると面の中で「うへぇ」と声をあげる。
「先を越されたか」
「んひっ……、」
「なぁ、言ってみろ。今年だけじゃない、今までどんだけここで鬼を悦ばせた? なぁ、お姫さんよっ!」
「やああっ!!」
 合言葉もなしに突き入れられたものの大きさに、少年は目をパチパチと瞬いた。すでに何人もの雄をそこに受け入れたとはいえ、この行為に慣れることはない。立った状態で後ろから抉られて、もはや膝はガクガクと震えて倒れそうなのだが、木に抱きつくような姿勢を強いられそれすらも叶わない。
「あっー! あ、やあっー!」
「どうだいお姫さん、俺のものは? 今までの比じゃねぇだろう?」
「ひっ! いっ! 待っ……やめっ……、うっ!」
 鬼の言う通り、規格外といっていい大きさの肉棒に直腸を乱暴にこすり上げられてはひとたまりもない。長大な性器で中を責め立てられるだけで意識を飛ばしそうなのに、乳首まで捏ね回されて狐はとうとうガクンと膝の力を抜いた。
「おっと! ……好過ぎちまったかい? ああ、今年はいっとう可愛いお姫さんだ」
 鬼は狐の面を取って現れた少年の面立ちに、ヒュウと口笛を吹いた。
 上気したきめの細かい肌はしっとりと汗をかき、キラキラと輝いているようにさえ錯覚する。涙に濡れた睫毛は長く、薄く開かれた唇の隙間からは整った歯列が覗いた。形のいい弓形の眉が微かに皺を寄せているのが悩ましく、血管を薄く透かせるまぶたが開かれるのを待つ。
「……ぁ、」
「お目覚めかい? お姫さん」
 少年が目覚めると、そこには5人の鬼達が取り囲むようにして少年を覗き込んでいた。
「可愛いお顔と声を愉しみたいから、起きるのを待ってたよ」
「祭りの最高潮だ、みんなで繁栄祈願の契りを結ばんとなぁ」
 言うと、1人の鬼が少年の後ろに座り、少年の腰を持ち上げる。そして――。
「ひんっ!!」
 ずん、と下からの突き上げに、少年は高い悲鳴をあげた。
「おおっ……! く、また締めつけがきつくなって……!」
 背後に回った鬼の性器が、少年の後孔に突き入れられたのだ。
「あっ……あ、いっ……、」
 背面座位の形で強引に交わらされた少年の細い腰は、鬼の手でがっちりと押さえつけられていた。
「ああ、好い……っ、好い、お姫さんのおめこ、熱くて……俺のイチモツに吸いついてくるみてぇだ……っ」
「やああっ……あんっ、あっ! 待っ……動いちゃ、ぁ、あ、あっ!」
 ガクガクと強引に揺さぶられ、少年の身体が鬼の上で踊る。出し挿れされる性器に弱いところを抉られ、少年はそれだけで数度気をやった。
「おい、1人で愉しむな。お姫さんはみんなのもんだぞ」
「はは、悪い悪い。なんなら、一緒に挿れてみるか?」
 少年の中をさんざん味わっていた鬼はまだ譲る気がないのか、そう言うと結ばれたまま狐の身体を抱きしめて仰向けになった。当然、2人の結合部が衆目に晒される。
「はっ……! んあ、あっ……見な、いでぇ……っ」
 装束はもはや、肌を守る役目を果たしていなかった。胸元は開かれてほとんど半裸の状態、下半身は腰帯のところに着物がわだかまっているものの、太腿は露わだ。そしてその晒された白い肌は快楽に染められて、さらには紅ガラや体液で汚れている。
「見られたくないなら塞がなけりゃあ、なっ!」
「ッ──〜〜!!」
 ズブ、と押し入った性器は、少年の肛門を縦に広げた。なにせ、少年の下で仰向けになっている鬼の性器も食んでいる状態なのだ。2人目はその、ない隙間に捻じ込むようにして少年を貫いた。
「ひっ……! ぃっ……ぐ!!」
「くっ……さすがにきついな」
 3人が折り重なったような状態で、2人の鬼が間に挟まれた小狐を犯す。少年はそんな非道な行為にも快感を得て、突き上げの度に高い声をあげた。
「ああっ、あんっ! あっ、やあぁっ! ひはっ、ああっ、あひっ、ひぃいっ!!」
 身も世もなく泣き叫ぶ少年に構わず、鬼達は自らの快楽を満たすためだけに腰を振りたくる。下になっていた鬼は少年の中で果てると身を起こし、他の鬼に代わると今度は立ったままで3人の交合が繰り広げられる。
「ぐ……う、あ、は、はぁ、あっ、」
 子供が小便をする時の姿勢で後ろから膝を抱え上げられて、2つの肉棒が少年の中をゴリゴリと責める。狐の子は髪も乱れ、体内に出された精液をポタポタと滴らせながら犯され続けた。
 少年の菊門は鬼達に使い込まれ、すっかり元の様相を失っていた。擬似的な繁殖行為の儀式で身体が作り替えられてしまったかのように、性器が出入りする度に内壁は淫らに吸いつき、締めつける。さらにはもっと肉棒を食みたいとばかり、その口から唾液と見まごうような白濁を垂らす。
「ああ、お姫さん……っ、すごい、お姫さんの中、たまらねぇよぉっ」
「は……、あ、……んっ、あ……」
 少年は見た目の反応こそ鈍くなっていたが、中の具合は少しも衰えず鬼達の精液を搾り取っていく。1人、また1人……少年の中で果てては代わり、それぞれが欲望の尽きるまで少年の身体を味わった。
 日が暮れてきた神社にはいつの間にか他の鬼達も集まり、それぞれの捕まえた気に入りの狐と儀式を繰り返していた。
 夕刻、5時の神楽が鳴ると、祭りは終わりだ。鬼達は先に各々の帰路につく。ウカノミタマに選ばれた少年は神殿へ運び込まれ、この後は村長や村の上位衆の相手をすると言われている。
 他の狐達もまた、神社の外に用意された水場でお清めをして家に帰って行く。しかし、ほとんどの少年がまともに歩くこともできなくなっていた。

 今年、初めて「いなりむすび」に参加した少年──竹林の奥、井戸の裏手で純潔を散らした少年は、ぼんやりとしたまま、足を引きずり歩く。
 一体自分の身に何が起きたものか……普通の着物に着替えた我が身を振り返り、あちこちに残るすり傷や消えなかった紅ガラを認める。
 もし、自分がお姫さんに選ばれてしまったらどうなるのだろう──神殿に運び込まれた今年のウカノミタマは、この後……? 考えて、ぞくりと背中が震えた。
 その時、遠くから「おーい」と声がした。
「叔父さん……」
「やぁ、初めての祭りはどうだった」
「うん……、」
 少年はそれきり黙ってしまう。とても、口で説明できそうにない。少年は自分の身体をまさぐった鬼の汗ばんだ大きな手を思い出して身体を震わせた。
「……叔父さん、手を繋いでもいい、」
「ん? どうした、怖かったのか?」
 笑いながらも、叔父は手を出してくれる。少年はその手に縋りつくようにギュッと握った。
「怖くなんかないよ。怖くなんか……、ぁ……っ!」
 少年は一瞬、顔を引きつらせると咄嗟に立ち止まり蹲った。下腹がじわんと疼いたと思うや、着物の内側が濡れる感覚。鬼が少年の腹の奥で出したものが、今になって溢れてきたのだ。
「……歩けるか?」
 少年は涙を飲んで頷くと、毅然として再び立ち上がった。叔父に手を引かれながら、足を引きずり歩く。
「偉いぞ」
 叔父のもう一方の手が、汗で少し湿った少年の黒髪を撫でる。その手の甲には、稲妻のような赤い傷跡があった。それはまるで、紅ガラで入れた刺青のようだった。

2020/10/18

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