Long StoryShort StoryAnecdote

いい子にしてたら


「おにいさん、ちゃんといい子にしてました?」
「もちろん、してたよ。キミに会えるのは1年に1度きりなんだから」
 そう言って俺は少年の細い腰を抱いた。
 少年はサンタクロースの赤い帽子に、上衣も赤いベロア生地に白いモールで飾られたコスプレ風のデザイン。下は赤いショートパンツを穿いて、黒いストッキングにロングブーツという出立ちだった。コンパニオンみたいな衣装だけど、間違いなく彼は男の子だ。
 「サンタクロース・サービス」はアンドロイドのデリヘル・サービスだ。2040年代に入って、アンドロイドとの生活はごく一般的なものになった。最初は簡単な掃除、洗濯といった家事の代行をするくらいだったけど、マニアでなくてもセックス用のアンドロイドを利用するようになったのは2060年代から。まぁ、この子みたいな小児タイプはそれから10年経った今でも公けには認められてないけど、許可されている国もある。
 ネットでのデータの買い物は自由だ。男の子のボディに、海外で買ったそうしたルートのデータを入れてしまえばセックス用の少年アンドロイドとして問題なく使える。そして俺は、その法的にはかなり怪しげな手段を使っている企業のサービスを利用しているというわけ。
 最初の挨拶を交わしたが、この少年と会うのは初めてのことだ。俺がこのサービスを利用するのはこれで3度目だけど、その容貌は毎年違う。最初の年は北欧系の金髪碧眼の美少年を選んだし、去年は茶髪をヘアワックスでツンツンにセットしたちょっとマセた感じの男の子。そして今年は、純和風といった風情の黒髪に白い肌をした日本人形みたいな男の子だ。
 俺は普段は子供なんて買わない。法的にNGというのももちろんあるけど、別にそれほど子供に興味があるわけじゃないのだ。
 ほんの遊びで手を出した最初の年、このセックス・ファンタジーが大当たりしたというだけ。セックス・ファンタジーっていうのはつまり、他人には言えないけど自分だけの秘密のオカズっていうか……恋愛対象とかとは別に抱いている妄想のことを俺が勝手にそう呼んでいる。
 この前まで彼女もいたし(彼女がアンドロイドのアイドルにハマり過ぎて別れたが)、これはあくまでクリスマスだけのスペシャル・イベントなのだ。
 しっかり暖房を効かせて暖めておいた部屋で、少年は真っ赤になった鼻をしゅん、とすすって微笑む。本当はアンドロイドには気温なんて関係ないんだけど、外気によってそう反応するようにプログラミングされてるんだからすごい。
「メリー・クリスマス。今日は一緒に楽しい夜を過ごしましょう」
 そう言って俺の手を握る少年はまるで天使みたいで、俺はそれだけで1年の労苦が報われるような気さえした。
 俺は少年と一緒にピザやチキンを囲んで団欒する。アンドロイドはメシを食わないけど、少年は料理の見た目について1つ1つ丁寧に感想を挙げて嬉しそうにしてくれる。そういうサービスだとわかっていても可愛いし、気分がいい。
 腹拵えをしたところで一緒にシャワーを浴びる。少年は自分で脱ごうとしたけど、俺はその手首を掴んで止めた。
「俺が脱がせたい」
 欲望丸出しで言うと、少年は少し恥じらったように頬を染めて、俯くとそろりと両腕を上げた。どうにでもしてというポーズに俺はますます興奮を高めながら、少年の首筋にキスをして上衣に手をかける。少年の首筋は細く、爽やかないい香りがする。
 上着のジャケットを脱がせると、中に着ていたシャツもするりと脱がした。1番下に着ていたタンクトップは赤く染めたシルクで、子供の姿ながら急にエロスを感じた。その薄い生地の上からもわかるくらいに少年の乳首はピンと勃っていて、俺はそのスルッとした布の上から可愛い突起をやわやわといじった。
「あっ……、待って、そんな……」
 少年はくすぐったそうに笑った後、ン、と鼻の奥で鳴いた。クニクニ、コリコリとやや刺激を強くしていくと、それだけで少年はだいぶ感じてきたのかはぁはぁと荒い息を吐きはじめた。
「あ、おにいさん……、きもちぃ……っ」
 潤んだ目で、上目遣いで言う。
「乳首好きなんだ? 去年の子もこれ弱かったんだよな」
 少年はモジモジと股間の前に組んだ手を合わせた。少し勃起してるのかな?
 顎を取り、上向かせると唇を奪う。辿々しい舌遣いはうぶを装った演技かもしれないけど、それでも興奮した。純真無垢な子供に性を教え込む……悪い大人。
「じゃ、入ろうか」
 ショートパンツを下ろすと、少年は「あっ」と声をあげた。「ん?」と見ると、少年は顔を真っ赤にしている。改めて少年の細い足を見ると、今度は俺の口から「あっ」と声が出た。
「うわっ……ちょっとこれ……やらしー……」
 なんと、少年は下着を履かずに直接ストッキングを履いていた。やや硬くなっている小さな性器は、ストッキングをじんわりと濡らしてテントを張っている。
「何これ、店の指示?」
「ちが……くて、おにいさんが……喜んでくれるかなって……」
 恥ずかしそうにそう言うので、俺は俯いている少年に優しく口づけた。
「ありがとう。めちゃくちゃ嬉しい」
「んっ……ふ、あっ……む」
 舌を絡ませ、下唇を甘く噛む。そうしながら少年の性器をストッキング越しに撫でた。
「ひあっ! あっ……だ、だめっ、あ、こすっちゃ……ああっ!」
 先走りで濡れている先端がストッキングの素材で擦れると、亀頭部への刺激が強過ぎるのかもしれない。少年の表情は艶っぽくもやや辛そうで涙目になった。少しばかりSっ気のある俺はその表情に昂って、脱衣スペースにも置いておいたローションを少年の性器にトロトロと垂らす。グチャグチャと音を立てながら性器を揉みしだくと、少年はもう立っていられないというように俺の腕にしがみついた。
「やあっ、もうだめ、だめ、出ちゃう……っ! 先っぽ、じんじんし過ぎてぇ……っ!」
「気持ち好い? いいよ、イッて」
「あ、あ、クる、イく、イッちゃ……ああッ……!」
 ストッキングの中で少年が射精したが、ローションで濡れているからあまりよくわからない。
「……意地悪です」
 少年は今にも泣き出しそうな目で俺を睨んだが、その顔もまた愛らしかった。
 風呂場では少年が俺にフェラをしてくれて、素股で軽く抜いた。少年の肌はスベスベで、シャワーで濡れた肌は吸いつくようだ。
「は、あっ……はや、く……挿れてくださ……ぃ」
 少年は振り向き艶かしい表情で俺を誘うが、俺は首を横に振る。
「まだ、ベッドに行ったらな」
 少年は恨めしげな顔をしたけど、指を挿れてやるとそれだけで甘い悲鳴をあげた。
「ああっ……! あ、んっ……は、はぁ、あっ……!」
 前立腺を見つけると、そこを重点的に刺激する。
「ん、んんっ……!」
 少年はビクビクと震えながら何度か達して、フラフラと俺に凭れかかった。少年は感じ易いのか、俺がその肩に手をかけるだけでもピクン、と愛らしく震えた。
 互いの身体を洗い、一緒に湯船に浸かると少年の肌は綺麗なピンク色になるのが艶かしかった。俺はその細い首筋に何度もキスをして、マーキングするようにしっかりと情痕を残した。
 膝の上に少年を乗せて後ろから抱き締める。少年はくすぐったそうにしながら、俺の手を自分の股間に導いた。
「……してもらえますか?」
「いいよ」
 湯船の中で、少年の可愛らしい性器を刺激する。一方で乳首を摘み、こねて、耳を甘噛みすると、少年は腰を捩って快楽を貪った。
「あっ、あっ……! きもちぃ……っ、ん!」
 俺の性器も誘うようにカクカクといやらしく尻をこすりつけてくるが、やっぱりここで挿入はしてあげない。
「おにいさん……意地悪しないで……っ」
 少年は1度そこで果てると涙目になって俺を責めたが、俺はその誘い文句に満足すると少年を抱き上げて風呂を出た。
 少年はまたストッキングとタンクトップだけ身につける。これは俺の命令だった。髪の毛も生乾きのまま、全体に水分を含んでしっとりとしたピンクの肌の少年は、訪問時よりもすっかり仕上がっている。
「こんな格好……恥ずかしいです。あんまり、見ないで……」
「可愛いよ。すごいエロい」
 言いながら少年を抱き寄せ、また深い口づけをした。うっとり顔の少年を後ろ向きにさせると、ストッキングをひっぱって肛門のところをビリッと破く。少年は驚いたが、俺は構わずベッドに仰向けに寝転がると大の字になった。
「自分で挿れて、動いてくれる?」
「は、……ぃ」
 少年は躊躇いながらも返事をすると、ローションを使って軽く準備をして、俺のそそり立つ性器の上でM字に足を開いた。まるでツイストゲームをするかのように両手を後ろについて、両足で身体を支えながら、ゆっくりと腰を落としていく。
「はぁ、はぁ、はっ……ん、」
 ずっと欲しかった切先がストッキングの裂け目を抜けて縁に触れただけで、少年は「ふあっ、」と甘い声を漏らした。そこから一気に、腰を落とす。
「あ、あ……っ、あ"あッ!!」
 ズププ、と先端が飲み込まれて、少年の身体が俺を受け入れた。自重で繋がった結合部は俺の視界からバッチリ見える。破いたストッキングの繊維にローションが絡みついて、必要以上にヌチャヌチャと卑猥な音を立てた。
「は、はぁっ……んっ! す、ごい……おにいさんの……おっきぃ……っ」
 少年は恍惚とした表情でそう言うと、潤んだ瞳で俺を見つめながらキュッと唇を噛んだ。俺の勃起した性器は長く、まだ半分ほどしか収まっていない。それを根元まで受け入れるのは、少年にとって覚悟のいることだろう。
「うご、きますね……っ、」
 少年はそう言ってぎこちなく腰を使いはじめた。
「んんっ、んあっ、……は、はあっ、」
 少年の目元はみるみるうちに生々しく赤く染まっていく。時折唇を噛み、感じ入るように目を細めて腰を落とし、捩り、自分の好いところに俺を導く。
「んひっ……! んっん、んっ、」
「声、我慢しなくていいよ」
「はあっ、あんっ! あっ、ああっ、あーっ!」
 言った途端、無遠慮に可愛らしい声が。少年は顔を真っ赤にしながら必死に腰を振りたくったが、俺を翻弄しているというよりは自分で自分の首を絞める行為のようだった。
「すご、い……、おにいさんの、どんどん硬く、なって……」
 少年がいやらしく腰を上下に振ると、ヌチヌチと卑猥な音が部屋を満たす。
「んんっ、きもちぃ、きもちぃです、……イッちゃ、イッちゃいまひゅ……っ」
「まだ、全然入ってないよ。もっと腰を落としてくれないと」
「ひっ」
 俺がぎゅっと少年の性器を掴むと、少年はビクンと肩を震わせ、俺のものをきゅうっと締めつける。
「い、や……イきた……ぃ、」
「まだ、待って」
「あっ!」
 形勢逆転とばかり、俺は少年の腰を掴むとむくりと起き上がり、今度は俺が上にのし掛かるような形で少年を責め立てた。
「あ"ーっ! あ"っ、あっ、待って、待っ……あ"! そんなダメッ、深い、深いぃ……ッ!!」
 少年のそこは喘ぎ声が高くなるのと比例するようにきゅう、きゅう、ぎゅっ、と断続的に強い締めつけで俺の性器を快楽へと落としていく。その度に射精しそうになりながら、俺も必死に堪えた。
「はぁ、はっ、ああ、すご、ぃっ……あうっ、深過ぎますぅ……!」
 パン、パン、パン、じゅぷ、じゅぷ、じゅぷ
 汗ばんだストッキングが擦れる感触に俺はますます興奮して、少しずつ、けれど確実に腰を進めていった。根元までぐっぽりと飲み込ませると、少年は苦しいのかギュッと目を閉じて高く叫んだ。
「痛い?」
「はっ、……は、……っ、だ、ぃじょぶです……っけど、奥……じんじんして……っ」
 ポロポロと流れる涙があんまりにも美しい。俺は朦朧としている少年に口づけ、舌を絡ませた。少年にはそれすらも堪らないのか、腰を使わずとも俺を食んだ内壁がビクビクと震えているのがわかる。まるでねだるようなその痙攣が少年の幼さに見合わず淫らで、俺は鼻息を荒くすると少年のタンクトップの上から乳首を甘く噛んだ。
「はんっ……あっ!」
 布の上からも存在を主張しているのがわかる突起はいやらしく、俺の舌で舐め上げるとさらにピンと張り詰める。上体を屈めるために性器は少し浅いところを責めて、焦らされる下半身に少年は身を捩った。
「ああっ……! あ、だめ、乳首、そんなにしたら……っ!」
 少年は喘ぎながら腰を振って俺の性器を導こうとするが、俺は乳首だけを重点的に責めた。薄い布越しに、唾液をたっぷり混ぜながら執拗に舐めしゃぶる。じゅじゅ、と啜り上げるように吸うと、少年はビクビクッと震えて鳴いた。少年は射精せずに乳首だけでイッた。
「はっ……! はぁ、んっ……! は、」
「焦らしてごめんね。こっちも気持ち好くしてあげるから」
「ぇ……? ま、待って、今動いたら……──ッ!?」
 ドチュッ、と奥を突き上げた瞬間、少年は大きく目を見開いたが声を発しなかった。弓なりに背を反らしてガクガクと痙攣する。1打、2打、3打と容赦なく突き上げると、少年の喉から嬌声が迸った。
「ひあぁぁぁ──〜〜ッ!! あ"ーっ♡♡ あ"っ♡あ"っ♡あ"っ……ン!! だめ、だめっこんなぁ……イッて、イッでるのにぃ……っ!」
「イっていいよ、ずっと、イッて……!」
 俺が性器を引き抜く時には食い締めの強い少年の中は逃すまいと吸いついてくる。そのせいで少年の腰は少し浮く。それを押しとどめるようにまた貫けば、少年は堪らないとでもいうように真っ赤な顔をフルフルと振った。
「んぎ、いっ……! お、ひり……溶けちゃ、ぅ……っ♡」
 少年の相好は涙と鼻水でぐちゃぐちゃに崩れて、強過ぎる快感がほとんど苦痛に近いのが伝わってくるかのようだ。
「ごめん、もう少し……奥、イかせて」
「だめ、らめらめ、もう……ひ、ぃっ──!!」
 狭い結腸口を張り詰めた亀頭で抉じ開けると、先端を舐めしゃぶるような熱い粘膜の感触に俺もふっと意識を失いそうになるような快感に包まれた。雄のエクスタシーに、白目を剥きそうになりながら、よだれを垂らしながら本能のまま腰を振り続ける。
「くうっ、うっ……!! はぁ、あっ……気持ちぃ……すごい、奥までドロドロにして……っ!」
「んひっ、ひっ♡ひんっ♡あ"ひっ、ひぃい……っ♡♡」
 少年は全面降伏するかのように、大股を開いて全身を俺に委ねていた。俺は少年の足腰がどんなに悲鳴をあげたとしても、今は貪欲に貪ることしかできないほど野獣と化していた。少年の赤い衣装に猛突進する姿はさながら闘牛のようだろう。
「はあっ、はぁ、はっ……!! ううっ……すごい、君の中、ギュウギュウ締めつけて……っ、」
「ひうっ、ひんっ……♡お、く……きもち、くて、あたま……おかし、くなっちゃ……あ"っ♡♡」
 少年が喋るのを無碍にして突き上げると、締めつけはさらに心地好いものとなって俺の性器を愛撫してくれる。
「ひゃううっ……!! んあっ、あっ、だめ、おくっ、ゆ、くりっ、そんな……っ、こわれちゃうぅ……っ♡♡」
 ストッキングはもうボロボロ、というよりドロドロで、何度も太い肉棒を抜き挿しされた穴の縁は先走りを溢れさせながら真っ赤に熟れていた。自分がこんな風にしてやったのだと思うと征服欲が刺激され、もっと、もっと、言葉通り壊れるほどに貪欲に求めたくなってしまう。
「あああ〜〜っ! あ"──ッ!!」
「はあっ、うっ、くっ! ……声、可愛い」
「んひっ……ひぃ、い……っ♡」
 俺は絶頂し続けている少年の片足を肩に担ぎ上げると、横抱きに押し開くようにして律動した。松葉崩しというやつで、より挿入は深まり、腸壁の摩擦の具合も変化が出てまた違った快感が味わえる。
「ふあ──〜〜ッ♡♡もうだめぇ、許して……っ、もぅイ、イッて……!!」
 まだ次の段階があることに、少年はほとんど泣き喚くと言っていい具合に喘いだ。
 この体位も少年の足腰に負担がかかる。でも俺は構わずに腰を振りたくり、自分の快楽を貪った。
「らめ、えっ、えぐっ、ひ……っ! も、やめ……ぇ、」
 少年はとうとう、ズリズリと這って逃れようとしたが、俺はそれを阻止すべく足首を掴みうつ伏せに捩じ伏せた。片足を高く持ち上げると今度はつばめ返しの体勢でガンガンと責め立てる。結合部が丸見えになることに興奮した俺は、さらに激しく腰を突き上げた。
「がひっ♡♡も、無理……ッ♡♡ゆぅし、で……っ♡」
「イくよ、俺も……出る……っ」
「んひっ……ナカ、いっぱいにして……っ、おにいさんの精子で僕のナカ、ぐちゃぐちゃにしてくらひゃい……っ♡」
 少年は無理な体勢のまま俺の首にしがみついた。
「う、おっ……!」
「んっ……!う、うっ……あ、あっ……すご、ぃ……っ♡あ、あっ……! ナカに、出て……っ♡♡」
 ドクッ、ドクンッ、ビュク、ビュルルル……。
 少年は腹の奥に俺の精液を蓄えながら、恍惚とした笑みを浮かべてビクビクと痙攣した。俺はがっちりと少年を抱きしめる。一滴だって逃さず少年の身体の奥深くに注ぎ込もうとでも言うかのように。
「は……ぁ……っ♡すご、ぃ出てる……っ♡」
 少年の内壁もまた、俺の性器をキュウキュウ締めつけ、いやらしく絡みついた。搾り取るようなその動きに、俺はドクドクとすべてを注ぎきった。
「はぁ、はぁ……っ、あー、こんなに好かったの久しぶりだな……」
 俺が性器を引き抜くと、裂け目の広くなったストッキングから覗いた白い尻は何度も打たれたために赤くなっていた。そして、俺を飲み込んでいた穴からはコプリと白濁が溢れてきた。コプ、コプ、ドプッ、ドロドロ……あとはだらしなく放尿するかのように止めどなく。
 少年は情欲に蕩けきった顔を、気怠そうに上げながら微笑む。
「おにいさん……キス、して欲しい」
「ん……」
 少年の望むようにしてあげると、少年はふにゃりと笑った。
「やっぱり、おにいさんのキス大好き。1年の間、ずっと楽しみにしてたんです」
「……え?」
 俺が怪訝な顔をしていると、
「僕、おにいさんに会うのはこれが初めてじゃないです」
 俺は面食らった顔をしていたのだろう、少年は涙を拭いながらクスクスと笑って、
「去年も一昨年も、僕。ボディは違うけど、お兄さんのところに来てるのはずっと"僕"なんです」
「それって──」
 昨年の茶髪の少年、一昨年の金髪の少年──はっきりと顔を思い出せるが、今目の前にいる黒髪の少年とは似ても似つかない。でも、最中に見せる表情、仕草……そこには確かに既視感があった。
「でも、どうして?」
「お兄さんが好きだから。クリスマスの時以外は、他の人のところにも行くけど……それはあまり好きじゃない」
 少年は俯く。その表情は翳り、今まで見たことのない悲しみに彩られていた。
 俺がこのサービスを利用するのは確かにこのシーズンだけだ。それ以外の時も、彼らには同様の仕事があるのだろう。そんなこと今まで考えもしなかったけど、少年の表情を見ていたら胸がチクリとした。
「今年もまた注文が来たらいなって思ってたんです。いい子にしてたから、願いが叶ったのかな」
 そんな可愛いらしいことを言ってくれるから、俺は少年をぎゅうっと抱きしめた。
「最高のプレゼントだよ、サンタさん」

 一夜が明けて、少年は身支度をするとドアの前に立った。名残惜しそうに瞳を潤ませて、でも商売としてまずいと思ったのか、慌てて視線を落とす。
「ごめんなさい、湿っぽいの……よくないですね」
 年に似合わない物言いに、俺はクスと笑った。
「俺も君と離れたくないよ」
「よかったら、また来年もよろしくお願いします」
 やっと顔を上げた少年は、俺の顔を見るとやっぱり泣いてしまった。
「ごめ、ごめんなさい……、笑ってお別れしなきゃって、わかってるのに」
「いいんだよ、」
 俺は少年をギュッと抱き竦めた。
「君は今日からずっと、ここにいていいんだよ」
「……え、」
「今朝、君を買い取った」
 決して安い値段ではない。一大決心と言っていいものだし、まわりに話せば呆れられるだろう。でも、こんな健気で可愛らしいサンタクロースからプレゼントを貰いっぱなしというわけにもいかない。おまけに今の時代、それをスマート・デバイスにタップ1回で気軽にできてしまうのだ。
「君をうちに迎え入れたい。……他の人のところに、もう2度と行かせたくないんだ。もちろん君の返事次第だけど、これからもずっと、ここに、いてくれるかい?」
 言うと、少年はまた新たに涙を溢れさせた。
「そんな……そんなことって、」
「俺は本気だよ」
「でも……僕は、こんな……セックス用のアンドロイドです。料理や掃除もできないし、いろんな人と……そういうことをたくさんしてきた。世の中では軽蔑されてる仕事を、」
 時代が進んでも、悲しいかな差別や偏見はなくならない。人間同士はもちろん、アンドロイドも迫害されてきた。ひと昔前なら確かに彼らはほとんどオモチャと変わらなかったのだろうけど、今の彼らには思考や、思想がある。最近ではアンドロイドを迫害することへの抗議デモも起きているくらいだ。彼らを大切にしたいと思っている人間もたくさんいる。
 そして俺も、そのうちの1人に名乗りを上げたい。
「君がいいんだ」
「……っ、」
 少年は顔をくしゃくしゃにすると、俺の胸に顔を押しつけた。
「よろしく……お願いします……っ」
「こちらこそよろしく」
 その丸い頭を撫でてやりながら、果たしてこれでサンタクロースの少年の願いを叶えてやれただろうか、と思う。……そうだったらいいな。

2021/01/25

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