Long Story|Short Story|Anecdote神さまなんていない
ディーターはびっこを引きながら、それでもでき得る限りの早足で白壁の教会にやって来ると、重い木の扉を叩いた。
扉は施錠されていなかった。体当たりをするように、体重をかけて押し開き、中に入る。
闇の深まった礼拝堂では、月明かりに照らされたステンドグラスの鮮やかな色彩が、石造りの床に照射されていた。
バタン、と重々しい音を立てて扉を閉めると、ディーター自身の荒い呼吸だけが闇を満たす。
ディーターは、靴を履いていなかった。まして、片方の足は裸足で泥に汚れている。もう一方の足も、グレーのハイソックスはずり落ちて、足首の辺りに留まっていた。
細い足が覗く太腿丈の半ズボンは、ファスナーが上まで上がりきっておらず、無理矢理押し込んだようなシャツの裾がくしゃくしゃになってそこからはみ出している。
は、と息を飲むと、ディーターは扉に背中を預けて自身の身体を強く抱き締めた。ぶるりと身体を震わせると、内股を鮮血が伝う。そして白濁した液体が、ぽたりと真紅の絨毯に落ちた。
「は、……はぁ、……はっ、……は、」
深いグリーンの瞳は混乱と恐怖に揺れ、唇は青褪めていた。内股から伝う血は2本、3本と幾筋にも分かれていく。
ディーターはゆっくりと扉から背を離すと、再びぎこちない足取りで歩を進め、告解室の中に入った。
人が1人入ればいっぱいのその小さな木の小部屋は、日中なら神父が信者の悩みやさまざまな告白に耳を傾ける場所だ。
しかし夜も深まった今、格子網の向こうに人の気配はなかった。静謐に、少年は少し安堵する。
中には椅子も備え付けられていたが、汚してしまうことを恐れた少年はその床に膝をつき、両手を胸の前で組み合わせた。
「天にまします我らの父よ……願わくは皆を崇めさせたまえ、御国を来たらせ給え……」
礼拝の折に唱える主の祈りを呟く。それから胸の前で十字を切ると、少年は告白を始めた。
これはきっと何かの呪いです。悪魔憑きに違いありません。あの優しい神父様が……あんな、あんな恐ろしいことをなさるはずがありません。
神父様はいつも僕達を温かく見守り、優しく説教を説いてくださいました。僕が両親を亡くした時にも、親身になってくださって……僕はあれほど心の美しい人に出会ったことがありません。
それなのに……、僕は今夜、神父様のお家の納屋を掃除しておりました。夕食に招いてくださったので、せめてものお礼をと思ったのです。
僕がランプを灯して手を動かしていると……気味の悪い温かい風が頬を撫でました。そしてランプの灯りが消えたと思うと、開け放しておいた納屋の扉が音を立てて閉まったのです。
驚きましたが、風の悪戯だろうと思いました。ランプを灯そうと手探りすると、その手首を誰かに掴まれました。僕は思わず悲鳴をあげました。
慣れてきた目がそこに認めたのは、神父様でした。僕はそうと気付くと安心……するはずでした。しかし……見上げた神父様のお顔は、今まで見たことがないような相好に歪み、脂ぎって、口元に不気味な笑みを浮かべていたのです。
「神父様……? もう間もなく済みますから……お手を、」
離してください、と言う間もなく、神父様の顔がぐんと近付きました。僕はそのまま食べられてしまうのではないかと思い、目をぎゅっと瞑りました。
神父様は、そんな風に縮こまった僕に口付けをしたのです。僕の頭は真っ白になりました。口の中に……神父様の熱い舌を感じて……、僕は恐ろしくなりましたが、恐怖のあまり身動ぎすることもできず、神父様の腕の中でただじっとしておりました。
神父様は僕の口の中を……、息が苦しくなり、僕は頭がぼうっとしてしまいました。そのまま神父様に凭れかかるように身体を預けてしまうと、神父様は僕の身体を抱きながら木の机の方へ連れて行きました。
神父様は逞しい腕で僕を担ぎ上げると、机の上に仰向けに寝かせました。洗礼の儀式の時の記憶はおぼろげですが、ちょうどあの赤ん坊になったような心地でした。
神父様は胸で忙しく息をする僕を見下ろし、ランプを灯しました。下からの灯りに描き出された神父様のお顔は、やはり僕の知るものとはまるで違いました。黒い目をギョロギョロと光らせて、口を開くと犬歯が剥き出しになり、涎を垂らして悪魔のようでした。
……そうです、神父様は悪魔に憑かれたのです。証拠に、神父様は……神父様の姿を借りた悪魔は、こう言いました。
「この神父は、ずいぶん手こずらせてくれた。田舎者の割りに、これほどの力をつけていたとはな」
発される声も発音も、神父様のものではありません。僕はただ怯えながら、そのしゃがれた声を聞いていました。
「まぁいい。これでやっとお前の身体をものにできる……」
神父様……いえ、悪魔はそう言うと、僕のシャツを乱暴に引き裂きました。ボタンは床に弾け飛び、胸は突然外気に晒されて、僕はその寒さに鳥肌を立てました。
悪魔は僕の首筋に吸いつき、鎖骨を、胸を……臍を舐めました。
恐ろしさもありましたが、僕の身体は何か不思議な力で縛り付けられたかのように少しも動くことができなかったのです。声も出せず、ただ震えていました。
「甘い……、甘いな、」
悪魔は呟きながら、僕の身体中を舐め回しました。神父様の舌は長く、ざらざらとしていて……耳の中や臍の穴を舐られた時には、僕は堪らず悲鳴をあげてしまいました。
それから悪魔は僕のズボンに手をかけました。ファスナーを下ろし、下着をずらすと、乱暴に引きずり下ろしたのです。
「や、めてくださ……い、神父様……っ」
僕は悪魔の中にまだ残っているかもしれない、神父様の心に必死に呼びかけました。しかしその甲斐も虚しく、悪魔は……僕の、……。
「――お前の、何だ?」
俯き黙り込んだディーターの対面、格子網の奥から低く轟くような声が響いて、ディーターは弾かれるように顔を上げた。
そこにはただ深淵が広がるばかり、人らしきものは見えない。しかしそこにいるのが何者なのか、ディーターには嫌というほどわかっていた。
「ど、して……ここ、は……神の家、なのに……」
「話を続けろ。神父はお前のナニを、どうしたんだ?」
ディーターの顎がガクガクと震える。再びあの力が働いて、身体が動かない。唯一動かせるのは唇のみで、その呪縛から逃れたい一心で、ディーターは悪魔の要求に応じる。
「ぼ、くの……ペニスを‥…、神父様、は……口に、」
「口に入れてどうした」
「口に……入れて、舌で、……先を、」
「何の先だ!」
「ペニスの先を! 僕のペニスの先を、舐めしゃぶり、喉の奥まで飲み込んで、吸い……僕の、を……僕の出した精液を、飲んだ……っ」
ディーターの大きな緑の瞳からは、また涙が溢れた。全身から力が抜け、ぺたんと座り込む。
敬愛していた神父のあさましい姿を見るのが何より辛く、悲しかった。きっと彼の魂はその身内に留まり、無力にも悪魔の所業を見ているしかなかったのだ。己の姿をした悪魔が、幼い信徒を凌辱していく様を。
ゴクリと喉を震わせてすべて飲みきった後、神父の顔は醜悪な笑みに彩られて、ディーターは全身総毛立った。そして、腹の底から引きつるような悲鳴を迸らせた。
「ああ、そうだったなぁ……お前の精液は甘くて、最高だった。それからお前の小さなアナルに神父の指を突っ込んでやった。いつも聖書をなぞり、お前のその丸い頭を撫でる、あの手……」
悪魔の声がキュラキュラと気味の悪い笑いを笑う。
「中指を突っ込んだらお前は必死に声を殺して耐えた。人差し指を加えてやったらずいぶん馴染んで……恍惚としていたな」
「そ、なことな……ッ、」
「指でたっぷり広げてやった後、神父のペニスを飲み込んだお前の中は狭くて、熱かった。神父の一物もなかなか立派だったな。女を娶れない職に就いているのが惜しいくらいだった。まぁ、お前の中でさんざん慰めてもらったから、あいつも浮かばれるってものだろう? あいつだって男さ、お前のトロトロの肉筒にきつく締めつけられて、ずいぶん好さそうだったぞ……、デカ過ぎて血が出ちまったがな」
「ひっ……、ぅ、」
ディーターは悪魔の言葉から逃れたくて両耳を塞ぐ。しかし悪魔の声は聴覚ではなく、少年の脳に直接語りかけるように響いてくる。
「お前の中に突っ込んだ時は天にも昇るような気持ちだったよ。人間の身体を借りての性交は初めてじゃないが、今までで1番と言ってもいい。浅いところも、奥深くもたっぷり可愛がってやっただろう。それにお前のその緑の目……それも気に入った。涙に揺らいで……小さなしこりをゴリゴリ虐めてやる度に、淫らに濡れて……」
無理矢理味わわされた悲痛な快楽を呼び覚まされ、ディーターの身内は震える。
悪魔に自由を奪われていたとはいえ、ディーターの聖域を犯したのは間違いなく神父の身体だった。優しかったあの手が、少年の身体を辱めていく。それに神父自身がどれほど苦しんだことだろう――ほんの一瞬だけ、神父の意識が戻ったのだ。
――すまない、ディーター、……許して、くれ。
悔しさを滲ませた神父は涙を流しながら、それでも悪魔の力によって腰の動きは止まらなかった。ディーターは硬い肉棒に奥を激しく突き上げられながら、神父の懺悔を受け留め、同時に、自身も罪を悔いていた。
淫欲にまみれた嬌声を、神父に聞かれてしまった。罪深い背徳の行為に身も心も焼かれ、それでも抗えずに悪魔の望むまま乱れる。
足は悪魔の欲望を受け入れるために限界まで広げられ、太い肉の楔を受け入れた箇所は血を流しながらも激しい抽挿に応える。乳首は硬く張り詰め、唇からは甘い呻吟と唾液が止めどなく溢れた。痛みよりも強い快楽に、ディーターはいつしか自ら腰を振って欲望を受け入れていたのだった。
神父の身体を借りた悪魔は、少年の中に肉棒を嵌めたままその身体を抱き起こすと、対面で貫いた。ディーターもまた、神父の太い首に手を回すと、しがみつくようにして腰をくねらせる。いけないことだとわかっているのに、身体は自然とその快感を追い求めてしまう。
「神父様、しん……っ、」
感じ易くなった内壁は神父のペニスを締めつけ、ぐっぽりと奥深くまで飲み込んでいた。悪魔は好きなだけ狭い肉筒の中を捏ね回し、掻き乱し、突き上げると、やがて奥に精液を弾けさせた。
果てた後、悪魔の気配は霧散した。意識を取り戻した少年は倒れた神父を起こそうとしたが、神父はすでにこと切れていた。悲しむよりも前に、ふらつく足で教会を目指した。
ここならきっと、神様が守ってくれる――そう信じていたのに。
ディーターのいる告解室の扉が乱暴に開かれた。
「ひぃッ」
恐怖に、喉が引きつる。ディーターは身を竦ませドアを見つめるが、そこには何の影も形もない。ただ、何か生暖かい、濁った空気のような圧がすぐそこに迫っているのを感じた。
「か、みさま……ねが、助け……、」
「まだわからないのか? 神などいないことに……」
手首に鋭い痛みを感じた。捻り上げられるような力に引かれて、ディーターはよろけながら立ち上がると、扉の方に背を向けて壁に手をついた。
「うあぁッ!」
手の平に激痛が走る。まるで杭で打ち付けられたかのような痛みに、ガクガクと膝が震える。悪魔の力に戒められて、手を動かすことは叶わなくなってしまった。その間にも衣類を破かれる音がして、ディーターは白い背中を剥き出しにする。
ズボンも下着もずり下ろされ、強いられた行為のために傷だらけになった半身がそこに現れた。
「今度はこのアスモドイス様自ら、お前を可愛がってやろう……」
「かみ、さま……っ、」
ディーターは最後の助けを求めたが、その無意味さに気付くと瞳から光を消した。
形のない熱のうねりが、真綿のように身体を覆っていく。やがてはっきりとした熱の塊が、神父のペニスを受け入れていた場所に押し当てられた。
「ひ、あ、あぁ……おねが、しま……許し、」
悪魔に乞うても仕方がないと知りながら、言葉が溢れる。次の瞬間、熱の塊が身体の中心を貫いた。
「ぎ、ひっ――!!」
ビクビクと仰け反る少年の背中に、ゆらりと蜃気楼のようなものが輪郭をなしていく。それはじわじわと実像を結び、逞しい男の裸体を描いていった。男の輪郭は太陽フレアのように時折渦を巻き、その境界を曖昧にしながらも、はっきりとそこに現れ、大きな人型をなす。2本のがっしりとした腕が、ディーターの腰に添えられた。
ディーターは身体の奥に悪魔の欲望の楔が穿たれている恐怖にガタガタと震える。
告解室で、悪魔との交合なんて――許しを乞うまでもない。今、全身に与えられている苦痛と快楽こそが、天罰なのだ。
「あっ……、あ、はッ……、」
「くく……ああ、お前の中が悦んでいるのが手に取るようにわかるぞ……」
硬いもので擦られる感覚に、幼いペニスがすぐさま反応する。しこりを突かれるような快感が断続的に押し寄せて、乳首にも甘い痺れが走った。
「はぁあッ……! あ、あン……は、みさま……、あ、ンあはッ、」
「淫乱め……上も下も、すっかり蕩けて飲み込みおって……」
少年の口は、傍目にはだらしなく開けられ涎を垂らしているだけだったが、その口は悪魔の手が捩じ込まれ、さらにそれは男根に形を変えて粘膜や喉を刺激しているのだ。
「ん、ふっ……ン、ン、む、ふぅッ……」
後ろから激しく突き上げられながら、ディーターは嗚咽を漏らした。
早く終わって欲しい。いっそこのまま死んでしまいたい。でも……腹の底を満たす淫蕩に抗えない。中で感じる度に細い腰を振り、ヒィヒィと切なく喘ぐ。
やがて、ディーターは壁に向かって精を吐き出していた。
「可愛い神の使いよ……、お前の中にたっぷりと子種を植え付けてやる。俺の子を孕むがいい……ッ」
「あ、ぁ……ッ、ゆぅし、ひぇ……あ、あ、あ、あッ!」
少年の腰が前後に揺れる。ペニスからはひっきりなしに精液が溢れ、やがて尽きた。ほとんど操られるように揺さぶられ、時折意識をなくし、それでも立ったまま犯され続ける。
痙攣する身体の中深くに熱を感じると、ディーターは震えながら達した。その痙攣はしばらく止まず、悲鳴をあげながら長い快楽を貪るほどだった。
少年の腹部はぽっこりと膨れあがり、まるで懐胎したかのような姿になっていた。悪魔のペニスが尽き込まれていた穴から、ドクドクと液体が溢れてくる。すべてが虚妄と言うには、ディーターの体内には汚された実感がこびりついていた。
身体を覆っていた靄のような熱が解かれ、少年の身体がどさりとその場に崩れる。無様に開いた股から、精液が溢れていく。小さなペニスからは、チョロチョロと薄黄色い液体が流れていた。ディーターは失禁していた。
「は、あは、は……っ、はは、あは、あははは……ッ」
虚ろな瞳から滂沱の涙を流しながら微笑み、ディーターはしきりに笑い声を立てる。悪魔は姿を消すと同時に、少年の心も魔界へ連れて行ってしまったのだ。
白痴のような顔をしたディーターの幼い手は、悪魔の種を孕んだ腹を優しく撫で続けた。
2016/10/20
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