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酉祭


 酉祭(みのるまつり)は、この村で昔から営まれてきた新年を寿ぐ催事だ。口にする生き物、ここでは特に鶏に対して感謝を捧げるのが習わしとなっており、毎年1人、祭稚児が選ばれる。同時に、選ばれた少年の成人の儀でもあった。
 祭稚児は、15歳の白髪の少年だ。不思議なことに、この土地では必ず年に1人、白髪の赤ん坊が産み落とされた。遺伝ではない、突然変異の子。
 それ以外に特異点はなかったが、自然と村の者はどこか彼らを遠巻きにした。

 今年の祭稚児に選ばれた少年・鳴(なる)は、幼い頃から酉祭を訝しく思ってきた。村人達は祭稚児同士を引き離すように努めているようだったし、どこかよそよそしかった。それに男達の視線は何か──その思いは今、祭壇に向かってゆっくりと歩いているところで確信に変わった。
 贄だ。俺は、生贄なんだ。
 手首に荒縄を巻かれ、赤い衣1枚を素肌に羽織って、鳴は緊張した面持ちでしずしずと歩を進める。和服は膝ほどの長さがあり、腰の帯はしっかりと締められていたが、その下には一糸纏っていなかった。下半身を生温い風が撫でて、心許ない。
 木造の神殿には、村の男達が20人ほど座している。俯いている鳴も肌で感じられる、異様な熱視線。室内は蝋燭の灯だけに照らされ、少年の赤い衣服と白い頭髪だけが部屋の中央で煌めいている。
 鳴は耳に取りつけた羽根飾りが、歩く度にガサゴソと頭に響くのが煩わしかった。白髪の上、頭頂部から前髪にかけて染めた赤い鬣は鶏を模したものだが、なんだかその様相も馬鹿げている。
 早く終わりにしたい。終われば、俺も成人だ。
 シャン、と鈴が鳴って、鳴は顔を上げた。床に膝をつき中腰になると、村長が薄い皿を鳴の眼前に差し出す。
「神の盃だ」
 両手の不自由な鳴は、首を伸ばして器の端に口づける。村長の手が器を傾け、中に入った液体が鳴の喉を潤した。コクン、と飲み込むと、習った通り両手を合わせて礼をする。
 男が2人前に進み出ると、鳴の隣に跪き祝詞を上げた。鳴は長いその口上を聞きながら、頭がふわふわしてくるのに気づく。
 少量とはいえ、初めての酒だ。自分はこんなにも酒が弱い体質だったのか──思っているうち、身体がぐらりと揺れた。いけない、と思った時にはもう遅く、鳴は横ざまに倒れる。
「はっ……あ……? な、に……俺のから、だ……、」
「大丈夫だ、害はない。おとなしくしていればお前も好くなるさ」
 段取りでは、この後村を回って終わりのはず──しかし、複数の男の手が伸びるや、鳴の身体を引き倒し仰向けに押さえつけた。元より自由の利かない手は、床に打たれた鉤爪のような鋲に縄を通され固定されてしまう。
 飲まされた酒のせいで抵抗する力もない鳴は、男達のなすがまま両足を開かれ、薄闇に恥部を晒した。
「や、やめ──」
 かっ、と顔が熱くなる。肌が赤いのは蝋燭の炎を反映したばかりではないだろう。帯を緩められ、胸元も開かれると、鳴は赤い衣服の上に裸体をしどけなく横たえ蝶の標本のようになった。
「さて……では、村長」
 促され、中年の男が前に進み出ると、鳴は目を見開き息を詰める。
 還暦を越えた村長は年の割りに引き締まった身体をしていた。さらに、いつの間にか剥き出しにした下半身にそそり勃つ男性器は、鳴が見たこともないほど大きく、長かった。
「お前は忌み子だ。もうわかっているだろうが、生まれた時から祭りの贄にされる運命だった。この村の繁栄のためにな」
「なに、死ぬわけじゃない。神に成り代わって、ここにいる全員と交わるだけさ」
 村長の息子がニタリと笑う。その表情には、神事など関係のない俗物めいたいやらしさが滲み出ていた。
 鳴はぞっとして、掴まれた足をばたつかせる。もはや、ここで何をされるかは明らかだ。
「いやっ……いやだ!」
 押さえろ、と村長の声が飛ぶや、男達の手が鳴の細い身体に伸びる。鳴が叫んでも男達は関せず、下卑た笑みを浮かべながら、少年の肌の手触りを愉しむかのようにベタベタと撫でた。
「まずは卵を産んでもらうぞ」
 祭壇に飾られていた壺から、コロリと丸いものを3つ取り出す。男の手の平に乗るそれは、普段食している鶏卵と変わらない大きさの卵だったが、何か特殊な液体に漬けられていたのか表面は薄黄色く妙な粘り気を帯びている。
「交合は、これで中を広げてからだ」
「やっ、やめ……ッ!」
 鳴の足を押さえる男達の手にますます力がこもる。中には鳴の乳首を指で、舌で嬲る者もあり、少年の身体は悲しくも昂る。
 村長の手が卵の1つを握ると、鳴の窄まった秘部を探り、頭の部分をつぷりと押し当てた。
 ひっ、と息を継ぐ間もなく、鳴は尻を抉じ開ける異物に身体を硬直させる。痛い、痛い──はず、なのに。
 鳴の肛門はずっぽりと卵を受け入れていた。それどころか、卵を飲み込んだ腸内は粘液も手伝ってじんと馴染み、村長が指で押すとグングン飲み込んでいく。
「う、そ……っなんで、やだ、やあぁっ」
「さっき飲んだ酒のおかげだ。卵を漬けていた薬と呼び合って、中でお前の具合も好くしてくれる」
「いや、いやっ……ああっ!」
 説明しながらも村長は容赦なく次の卵も後孔に埋めた。
 信じられない──あんな大きなものが、尻の奥に。鳴ははくはくと息を吐きながら、気づけば涙を流していた。
「む、り……おな、か痛い……も、苦し……」
「まだだ。ちゃんと3つ入るようにできているんだから」
 これが入らないと私のが入らないだろ? 当然とでも言うように、村長が微笑む。そして最後の1つが突き入れられると、鳴は喘ぎながら仰け反った。
 3つ目の卵はきっと、尻の穴から顔を覗かせているだろう。1つ目は信じられないほど奥深くに入り込み、内蔵を圧迫している。異物感で吐きそうなのに、鳴の性器はびんと勃ち上がり、先走りの汁を溢れさせていた。
 恐怖と、羞恥と。抗えない快楽に全身を震わせながら悲鳴をあげる。
「もういいだろう。力んで、卵を産んでごらん」
「いっ……ひ、ひぃ……っ」
 早く出したい、けれど力が入らない。それに、衆目の前で排泄をするようで、こんな状況に追い込まれてもまだなけなしの羞恥が躊躇わせる。
 尻をひくつかせるばかりの鳴の腹に、男の手が伸びた。
「あっ!? いや、いやあぁッ!」
 男の手が鳴の薄い腹を揉む。卵が腸壁をゴリゴリと刺激し、鳴のペニスからはビュル、と精液が飛び散った。同時に、勢いよく卵が連続して穴から弾き出される。
「ああ、あっ……!」
 鳴はべそべそと泣きながら、荒く息を吐いた。
 まさか、こんな──姿を消した少年達は、皆ここで慰み者にされたというのか。その後どうなった? 殺されたのか、あるいは自ら命を──一瞬にして、想像が巡る。こんなことをされるくらいなら、死んだ方がましだ。
 思った時、空洞になった体内にズンッ、と勢いよく楔が打ち込まれる。
「ひぎっ──」
 村長の大きな肉棒が、鳴の後孔を貫いた瞬間だった。卵で開かれた奥まで一息に突き上げられ、鳴はその1回きりで激しく極めていた。達している身をがっちりと抑え込まれ、男の腰が揺れる。ゆっくりと抜かれ、勢いよく奥を突かれ──思考力が奪われていく。
 狂宴はまだ、始まったばかりだ。

2017/01/03

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