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キンキーベイビー


「チンコしゃぶるの、そんなに好き?」
「ん、ふ……っ、う、ン」
 答えられない代わりに、上目遣いでパチパチと瞬く。先輩のペニスを口の中いっぱいに頬張って、俺は鼻息荒く舌を動かした。
「う、あ……っ、ヤバ……ちょ、っとお前マジ……上手過ぎ」
 先輩の声が上擦るのが可愛い。
 バレー部の部室は埃っぽくて汗臭くて、いい環境とは言い難かったけど、運動した後の先輩の匂いを存分に味わえるのが俺には堪らなかった。
 汗ばんだ大きな手が、俺の髪をワシワシと撫でる。俺はそうされるのが好きで、部活が終わるといつも、頭1つ分以上背のある先輩に駆け寄っては額を肩に押しつけた。
 いつからだろう──それが、こういうことをする合図になったのは。
「ん、ふっ……む」
「あっ……は、うっ……」
 先端をチロチロと舐めて、頬の粘膜に擦りつけて、裏筋を舌で責める。唇を窄めて力加減をしながら出し挿れすると、それはどんどん硬くなっていった。
 俺の口で気持ち好くなってくれているのが実感できて、胸が高鳴る。
「ちょっと待っ……あ、ヤバ、いそれ……あ、ぅっ!」
 余裕のなくなった先輩は俺の頭をぐっと押さえつけると、口の中からペニスを引き抜こうとした。でも俺は逃すまいと唇にぐっと力を入れて、先輩が達する瞬間を逃さなかった。カリの部分が引っかかったところを、ちゅう、と吸い上げる。
喉の奥に、ビュルビュルと熱い迸りを感じて、俺のも少し勃起した。
「うっ……わ、悪ぃー……我慢できなかった……」
 恥ずかしそうに顔を覆いながらモゴモゴと呻く。俺はその先輩の表情を目に焼きつけながら、口から溢れた精液を指で拭った。
「いいよ別に。俺、先輩の精子飲むの好きだから」
「うわ、変態」
 先輩が顔を逸らして苦笑する。多分、本当にちょっと引いてる。先輩は多分俺のことキモいと思ってるけど、これをはじめてからは身体が抗えなくなっているのを知っている。卑怯かもしれないけど、俺はこの行為で先輩を縛っているんだ。
 満足感でニヤつく俺の額に、先輩はデコピンを見舞う。
「いっ」
「必死過ぎ。お前、顔真っ赤になってるぞ」
 自分の顔も同じ色になっていることに気づいていない先輩が可愛い。この人は自分の魅力にひどく鈍感だけど、俺はそこがとても大好きだった。
 先輩の手が俺の頬を撫でる。俺はくすぐったくて嬉しくて、先輩の大きな手の平に頬ずりした。
「ホント、犬みたいなヤツ」
 ああ、先輩にもっと触って欲しい。髪や頬だけじゃなくて、腕も、胸も、手も足も全部。喉に絡みつく濃い精液を、全身にぶちまけて塗り込んで欲しい。いつかこの硬くて熱い肉の棒で、尻の穴を突き上げて暴いて、腹の奥にも先輩の熱を。
「何お前、勃ってんじゃん」
「う、ん……先輩のしゃぶってたら、興奮しちゃって」
「バカだな。……しょうがないね、ヌいてやろうか」
「えっ」
 先輩が大きな目をパチクリさせる。多分俺も同じ顔をしてるけど。
「何だよ。人に触られるのは嫌なのか?」
「い、嫌じゃない。先輩になら、触って欲しい。……いいんですか?」
「ふは、何で急に敬語だよ。今更だろ」
 言いながら、先輩の手が俺の股間の膨らみに伸びる。
 ウソ、ウソ──夢みたい、だ。
「あ、」
「……まだ触っただけだよ」
 耳元で、笑いを含んだ先輩の甘い声が囁く。ゾクリと鳥肌が立って、思わず先輩の肩口にしがみついた。
 先輩の手が薄いユニフォームの上から俺のペニスを撫でて、しっかりと掴むと扱きはじめる。最初はゆっくり、じょじょに力強く──汗と先走りで、下着の中はすぐにぐちゃぐちゃになった。
「せんぱ……せんぱい、」
 人にされるのってこんなに気持ち好いんだ。……違う、先輩だから。いつも俺の髪を優しく撫でてくれるあの大きな手が、俺の中心を、敏感な部分を包み込み、昂らせる。
「あ、……は、はぁ……っ、あ、ぁ、だめ、出る、出る出る出る……出ちゃ、」
「いいよ、出して」
「あぅっ……!」
 俺はガクガクと腰を震わせると、布を押し上げる勢いで思い切り射精した。ドクドク、激しい脈を感じる中、先輩の手がぎゅっと俺のを握る。
「せんぱ、ぃ……っ」
「ふは、凄いなこれ……人のなんてするの初めてだけど、結構──興奮するもんだな」
 ペロ、と上唇を舐める仕草がいやらしい。ああ、もう、この人は俺を誘ってるって自覚がないのか!?
「先輩、ごめん」
「え? ちょ、んッ!」
 俺は先輩の顔を両手で包むとその唇を強引に奪った。舌で唇を割って、熱いぬるぬるとした舌を絡ませて。
 時間にすると一瞬のことだったかもしれない。先輩の手が俺の肩を掴んで、俺の身体を引き剥がした。
 ブッ、と唾を床に吐き捨てる先輩に、ズキンと胸が痛む──もしかして、怒った?
「ばっかやろうお前、俺のチンコ舐めた口でキスすんなよな」
「ご、めんなさ……」
 どうしよう、調子に乗り過ぎた。先輩の手があんまり気持ち好くて、先輩の仕草が、吐息が、濡れた目の色があんまりにも愛しくて。
 緊張で急激に冷えていく指先を、先輩の手が乱暴に掴む。俺はビクリと震え、頭の上に手を置かれると恐る恐る見上げる。
 先輩は、困ったように笑っていた。
「……ふは、そんな顔するなよ。俺はお前のことが好きなんだから」
「──せんぱ、」
 強い力で抱き寄せられて、先輩の手が俺の髪をワシワシと撫でる。
「悪い。ちゃんと伝える前にこんなことさせて。お前が最初こういうの誘ってきた時、ホント言うと他のヤツらともこういうことしてんのかなって疑ってた」
「そんな! 俺、先輩としか、」
「わかってるよ。なぁ俺、お前が他のヤツとこんなことするの嫌だぜ。俺だけのものになってくれよ」
「そんなの……先輩、俺は……俺、」
 胸がいっぱいで言葉が出てこない。勝手さに涙が溢れてきて、呼吸もままならなくなった。子供みたいに泣きじゃくる俺の顎を先輩が掬い取り、もう1度、今度は先輩から口づけてくれる。
「これ、俺の精子の味? ふは、ゲロゲロだな」
「俺……俺は、好きだよ」
 先輩の味。
「ホントお前って……変態で可愛い」
 先輩は笑って、俺の涙をぐいぐいと拭いた。

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