Long StoryShort StoryAnecdote

さっきの続きから


「なぁ、今日お前んち行っていい? テスト勉強一緒にやろうぜ」
 不意に声を掛けられて一瞬たじろぐ。少しの間をおいて、いいよ、と答えた。
 君は僕の肩を叩きニコニコと笑う。
「やっぱり持つべきものは親友だな!」
 僕は思わず目を伏せて苦笑する。
 君は、僕が夜毎に君のあられもない姿を妄想して自分の欲望を慰めていることを、知らない。

 学校が終わると君を連れて自宅に向かった。
「お前んち来るのも久しぶりだよな。小学生の頃はよく来たのに」
 暗に、どうして最近は呼んでくれないんだと言いたいのだろう。
「もうこの部屋はちょっと狭くない?」
「そんなことねぇよ」
 言いながら君は僕のベッドに座った。いつも僕が君を抱いているベッドに。
 昨日は君に女子の制服を着せた。紺色のタイを緩めて、しどけなくベッドに横たわる。膝を立てるとスカートが滑らかな腿を滑って、性器で膨らんだ女物の下着が。
「なぁ、今日見た? XXXのスカート。短過ぎねぇ? パンツ見えるっつの」
 君はXXXのことが好きなんだろう。飛び抜けて可愛いというわけではないけど、顔が小さくて足が長くて、モデルみたいな女の子。
「俺、女はもうちょっと慎みある方がいいんだよな」
 ペンケースとノートを取り出しながらそんなことを言う。
 でも僕の頭の中の君は、XXXと同じスカート丈。寝転がったまま腰を浮かせると誘うようにパンツを下ろし、片足の爪先に薄ピンクの布を引っ掛けたままゆっくりと足を開く。スカートの中で緩く立ち上がったそれに手を伸ばし、小悪魔的な笑みを浮かべて僕に見せつける。
「なぁ、ここ教えて?」
 急に顔を覗き込まれて我に帰った。
「う、うん」
 指で教科書をなぞりながら解説すると、君は熱心に頷いて例題を解いてみせた。
「……こういうこと?」
「正解」
「俺、天才!」
 胡座をかいた君の股間にチラと目を落とす。あれを……実際にはどんな風に慰めるのかな。
 空想の中の君は唇を舐めつつ、スカートの上から勃起したペニスを扱き腰をくねらせ、手はセーラー服の上衣の中に。平らな胸の突起を弄りながら、やがて微かに甘い声を漏らす。
 切ない声をあげて逹すると、ぐったりと身体を投げ出す。潤んだ瞳と上気した肌。
「あ、ごめん。濡れちゃった」
「……え、」
「コップ」
 見ると、君の飲んでいたジュースのグラスに浮いた水滴が底に溜まって、丸い輪を机に残していた。それが僕のノートに丸い染みを作った。
「別にいいよ、こんなの」
 濡れちゃった、という声をリフレインする。それを滲ませ、掠れさせ……自分の精液で衣服を汚した君に言わせる。
 辞書を取ろうと立ち上がると、俯いた君のうなじがよく見えた。学ランのカラーから覗く、ほくろのある細い首筋。
 電車で君に痴漢する妄想もお気に入りだ。ドアに押しつけて君のうなじにキスする。妄想だから、僕は君よりも頭2つ分背が高い。
「やめ、……ください」
 君は犯人が僕だとは気づかずに、いつもは快活な声に怯えを滲ませる。
 空想だから他の乗客は気づかない。君のズボンと下着に鋏を入れるとそこから性器を乱暴に突き挿れる。君は窓に手をついてその衝撃に身を硬くする。窓ガラスに反射する歪んだ顔が可愛い。
 君は必死に声を抑える。前も弄られて、堪らないとでもいうようにかぶりを振り、僕が奥に射精するとガクガクと腰を震わせる。そして、
「ん〜っ眠い! 眠くねぇ?」
 僕はビク、と肩を揺らした。現実の君は瞼をゴシゴシと擦る。
 ……危ない。
「寝ても……いいよ? 俺のベッドでよければ」
 ドキドキと心臓が鳴った。僕にしては大胆な発言だ。
 君は思案するような素振りで唸った後、
「じゃあ15分だけ寝ようかな」
 言って、僕のベッドの上に転がった。
 僕の部屋に監禁された君は、ちょうど今みたいに学生服のままベッドに放り出される。猿轡をして、手錠でベッドに縛りつけると、シャツを引き裂く。恐怖に引きつった顔で足をバタつかせている君の艶やかな乳首に唇を寄せる。
「んんっ、んーっ!」
 ズボンを下着ごと下ろし、そして──ズブ、と性器を挿入した瞬間、君の瞳に涙が。
 1分もしないうちにスヤスヤと寝息を立て始めた君の寝顔を、僕は身近で観察する。無防備な顔。僕の頭の中でひどいことをされているなんて微塵も考えていないだろう。
 シャツを引き裂いてしまいたい。君の唇に、首筋に、乳首に、吸いつきたい。剥き出しにした尻の穴に欲望を押し挿れて。
 君の中は狭くて熱い。うねうねと僕を締めつけて、すぐに僕は果ててしまう。気持ち好い。気持ち好い。気持ち好い。
「う、ん……っ」
 君が少し身動ぎしながら呻く。僕は構わずに腰を動かした。
「は、はぁ、あっ……んあ、」
「はぁ、すごい、すごいよ……っ、気持ち好いよ……っ!」
 君の顔は少し赤らんで、髪の生え際に汗が。眉間に寄ったしわが色っぽくて、僕はそこにキスをする。
「はぁ、は、……あっ、あんっ、は、……あっ」
 可愛い喘ぎを堪能しながらも、ドスドスと奥を激しく突き上げる。
 ああ、まずい、まずい、出る、出ちゃう──。
「んあ……もう15分経った……?」
「あっ……」
「……何。自分で起きれるよ」
 君の顔を覗き込んでいた僕は冷や汗をかく。
 君は怪訝そうにしながらも僕の胸を押して起き上がると、ふわ、と大きなあくびをした。
「んー、少しスッキリしたかな。お前は? 寝なくていい?」
「僕は、平気……」
 眠気に関しては。ただ、下半身が……妄想をエスカレートさせ過ぎた。少し、勃ってる。
「うわ、寝たら汗かいた」
 言って、君は無造作に制服を脱ぎ始める。シャツのボタンにも手を掛け、襟元から4つも開けた。中にTシャツを着ていると思ったら地肌で、時折乳首もチラついて僕はゴクリと生唾を飲む。
「俺、家だと短パンなんだ。体育の」
 うちの学校の体操着はいまだに男女ともに太腿が丸出しだ。
「暑ぃー」
 君はおもむろに立ち上がるとカチャカチャとベルトを外しズボンを下ろした。ボクサーパンツ1枚に靴下だけの姿で、四つん這いのまま僕の方へ。
「なぁ、お前さ。もしかして──勃ってねぇ?」
「な、何言って、」
「ほら、やっぱり。ったく、しょうがねぇなぁ」
 言いながら君は俺の股間の膨らみをズボンの上から撫でる。
「ひっ……」
「もしかして俺の寝顔見て興奮しちゃった? いつも俺で抜いてんの? やらしーんだ……親友をオカズにするなんてサイテー」
 言いながらも君はクス、と笑う。
 僕のズボンを寛げ、中から硬く勃起した性器を取り出すと君の柔らかい桃色の唇が開かれ、そして──。
「おい!」
 目の前でパンッ、と手を叩かれて僕は目を瞬かせる。
「大丈夫かよ。なんかおかしいぞお前」
 君はシャツを着ていた。ボタンも1つしかはずしていない。
「ご、こめん、大丈夫……」
「ほら、さっきの続きから!」
 トントン、と彼が教科書を叩く。
 いけない、現実と妄想がごっちゃになってきてる。気をつけないと……。君の呆れたような笑顔が、僕の性器をしゃぶる君とダブる。
 ──今晩は、さっきの続きから。
 僕は用もないのに消しゴムを掴むと、白紙のノートに擦りつけた。

2019/04/02

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