Long StoryShort StoryAnecdote

SPA🆕


 人類を生み育んだ惑星も、限界を迎えていた。度重なる天災に見舞われ土地は砂漠化し、水没し、あるいは竜巻や地震で壊滅した国もある。
 人口は減り、貧富の格差や人種差別も広まる中、人類は遂に地球の外へと足を踏み出した。月面を開拓し宇宙植民地を作り、人々の一部はそこで生活をはじめたのだ。

 俺は宇宙移民の第3世代になる。宇宙開発も進み、宇宙工業用ロボットも作られた。宇宙用パワーアシスト、通称「SPA(スパ)」という。
 この機体は、試作型こそ地球人がはじめて月に立った時の宇宙服を模したような不格好なものだったが、今やスマート化され人型ですらない。宇宙空間に不要な脚部は消え、アーム部分はスピアのような鋭角的なものになった。全体で見ると星型を立体的にして、2足を取ったような造形だ。
 コクピットはその中央に先の丸い円柱を通した形で、パイロットは前後に1名ずつ乗り込む。前部が操舵し、後部はアームのオプション・チェンジを行う。
 パイロットには専門的な訓練のクリアと、身体的な特性も求められた。男女ともに15歳から25歳まで、身長は160センチ以上175センチ以内。宇宙移民の中でも月面都市に住まう人間は、重力の影響で高身長の者が多いから、この条件となるとある程度絞られてくる。

「ガキの頃はチビだってからかわれたけど、16で初搭乗ならまだ何度かチャンスはありますよね」
 俺は宇宙用スーツに腕を通しながら、調子に乗って先輩に笑いかけた。
「そうだな。後輩を育てる意味でも、お前が伸び悩んでくれないと困る」
 おかしな話だけど、先輩の発言は正しい。成長が早過ぎると実戦での引き継ぎ訓練ができないからだ。
 規程の身長の下限ギリギリの俺はまだしばらくはイケるけど、20歳の先輩は上限いっぱいだ。おそらく、今回が最初で最後の実戦訓練になるだろう。
「じゃ、お願いします!」
 威勢よく言うと、先輩は無言のまま頷いた。
 青いランプにゴーのサイレンが鳴る。バシュッ、とSPAがカタパルトから射出され、俺達は宇宙空間に飛び出した。
 任務はスペース・デブリの回収と、資源となる石を採集すること。今までもデブリ回収の仕事はしてきたけど、資源採集ははじめてだ。
「先輩、資源採集って難しいんですか?」
「難しいことはない。ただコイツに任せておけばいい」
 コイツ、とはSPAのことか。何だかやる気のないような先輩の応答に少し落胆する。ちぇっ、重要任務だと思ってたのに。
 月面ステーションから離れてだいぶ経った頃、SPAの中で異音がした。異音、だと思ったがそれは聞き覚えのある音でもあった。ガチャリ、それは何かをロックした音だ。
「何だ……?」
 俺は調べようと手を動かした。否、動かそうとした。しかしバーを握った手を離すことができない。
「な!? 何だコレ……先輩! 何か様子が、」
 前を見ると、先輩の様子もおかしいことに気づく。先輩は上を見上げ、身体から力を抜いているようだ。気を失っているのか?
「先輩! 先輩!!」
 必死に叫び、足も動かしてみるがこちらもビクともしない。ゾク、と恐怖が全身を包んだ。プログラム・エラーか?
 しかし、下から這い出てきたプラグのようなものに気づくと今度は別の恐怖に襲われた。
「うわっ!? 何だコレ……あ!?」
 機械には見えない──生物のようなそれはまるで触手だ。床から突然現れたクリーチャー、ともすればエイリアンのような異様な存在に俺は動転した。
「先輩ッ! 何か変なのが機内に……ぁ、あっ!?」
 しゅるり、太腿に絡みつかれて電気のような痺れを感じる。まさか、本当にエイリアンなのか? 俺はスーツの中に汗をかく。ゴーグルが曇り、視界が悪くなっていくのに反比例して身体を這う触手の感触はどんどん鮮明になっていった。
「う、あっ……!? な、にを……こいつ、何が目的で!?」
 触手は俺のスーツに纏わりついていたが、しばらくすると衣服の中に入ってきた。おかしい、衣服が破かれた様子もないのに──ある予感がよぎり、怖気が走る。
 このスーツははじめから、穴が空いていたのではないか?
「うあっ!!」
 スーツの内側を自由に這う触手は俺の胸や脇の下にも絡みつき、股間の辺りをうぞうぞと這い回った。
 気味の悪い感覚に俺は足を踏ん張るが、その甲斐もなく触手は俺の肛門の方にまで群がりはじめた。
 スーツの中にインナーはない。座席はそのまま排泄もできるようになっていて、スーツもアンダーを下ろせばすぐに用を足せるようになっている。
「あ、あっ! ……来るなぁっ!」
 ぬちぬち、と閉じた穴に異物が入ろうとしている。何で、こんな──!?
「あうっ!」
 抵抗も虚しく、触手がそこをグリグリと刺激しはじめる。同時に前まで扱かれて、俺は全身が熱くなった。
「や、やめっ……やめろぉっ!!」
 人間の手で握られているみたいだ。微妙に生暖かいそれは、ねちっこく刺激を与えてくる。
「やっ……あっ、」
 自分の口から漏れた妙な声。嫌だ、先輩に聞かれる──!
「せ、先輩ッ!」
 助けを求めようとしてハッとする。先輩の座席にも同じ触手が蠢いていたのだ。まさか、先輩も?
「せんぱ……あっ、ああっ」
 スーツの隙間から入り込んだ触手が、俺の中に──!
「嫌だっ、何、……なんでっ、あっ!」
 濡れた音が耳と、自分の内側から響いてくる。触手が俺の内側を抉じ開けて──!
「嫌だ、やだ、やめろっ──あッ!!」
 何だ、今の……一瞬頭が白くなって、それからまた同じところを刺激されると俺は勃起していた。
「何……ッ──!」
 何で、俺、男なのに――尻の穴を触手に犯されて、感じてる!?
「あっ、やだ、嫌だッ! ああっ──!」
 同じところをしつこく突かれて、俺は達してしまった──射精しようという瞬間、俺の性器の先に食らいつくように別の触手がぱっくりと飲み込む。
「ひっ!? ──あああッ!」
 吸いついたものが俺の性器の先を撫で擦る。俺の精液を吸ってる!?
「やめっ……ああ、あっ……!」
 堪らない快感に、嫌でも腰が震える。どうして、俺、こんな──。
 俺を犯していた触手はゴクンッと咀嚼するような音をさせると、シュルシュルと俺の身体から離れていく。終わった、のか……?
「せ、先輩……? 俺……」
 その時、機内に電子音声が響き渡った。
『資源採集が完了いたしました』
 ブザーが鳴り、機内が静まり返る。
「い、一体──……」
「……これが、俺達の任務だ」
 何……? 資源って……俺達の精液を集めて……?
「SPAの動力になってるっていうのか」
「誰にも言うんじゃないぞ。……なぁ、身体は大丈夫か?」
「え……だい、じょう……」
 ……ぶ、じゃない。俺の下半身はひどく熱を持って、疼いて──さっきの突き上げを、また欲している。
「ステーションに戻ったら俺の部屋に来い」
 言うが早いか、先輩の操縦でSPAは航路を反転させた。
 俺の呼吸はまだ上がっている。自分で自分の身体に触れたら、変な声が出そうだった。俺は自分の分身に触れるのを我慢する代わりに、スラスター・バーを握り締めた。

2020/03/28

Main
─ Advertisement ─
ALICE+