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透明な檻


 ぎしり、細い身体が締め上げられて軋む。少年の身体は蛇のような触手に絡めとられ、身に着けていた真っ白な衣服は無残に破り去られてしまった。
「ひ、ぃ……ッ、い……あ”ッ!」
 少年は細い悲鳴を上げながら涙を流す。ずっと叫び続けた声は枯れ、泣き続けた目元は真っ赤だ。
 身体を締めつける触手は何匹に及ぶのか……その先端は蛇のような目、口といった器官はない。吸盤のような器官があるもの、亀頭のような形をしているものなど、形状に個体差があり、それがよってたかって少年の身体を這い、貪っている。
「助け、て……所長、ねが、……します、も、……ッ」
 少年は震える指をヒクヒクと伸ばす。助けを求めた先には透明のガラスを1枚隔てて、白衣を纏った男が腕組みをして佇立していた。
「まだ実験は始まったばかりだ。これからこのサンプルの生殖活動を記録するんだから」
 男は部屋の上隅に設置されたカメラに赤いランプが灯っていることを確認する。
 男のまわりにはコンピュータ機器を操作する研究員達が忙しなく行き来し、プリンターから排出されるグラフのようなものを熱心にチェックしていた。
「あうッ!」
 グラフが跳ねたのは、少年の尻に触手が深く侵入したためだった。体表の鱗をヌラヌラと光らせながら、どんどん少年の奥へと入り込んでいく。少年の爪先がピン、と緊張する。
「ひぐぅ、うッ!う、あ、あッ、やあああッ!!」
 他の触手が少年の膝に絡みつき、無理矢理足を開かせているせいで、研究員達の観察の目に少年のあられもない姿が晒されていた。
「い、深、ぃ……ッ! も、無理……ですッ、いや、や、こわ、ぃッ……ア"はぁッ!!」
 少年の身体がビクビクと震える。触手を飲み込んだ秘部が痙攣し、中から薄ピンクの液体が溢れてきた。
「どうやら受精が始まったようだな」
 男が目を細めて呟くと、脇にいた助手がガラスに額を擦りつけた。
「あれが受精?」
「ああ。あのサンプルは1つの個体が雌雄両方の触手を持っている。卵を植えつける前に触手はあの薄ピンクの体液で中に粘膜を張るんだ。触手の体表から出ている粘液にも媚薬のような効果はあるが、ここで出す体液は3倍の濃度だ。それを腸内にぶちまけられたら、ひとたまりもないだろうな」
 ニヤリと口元に浮かぶ笑みは、研究者としての客観的視点を欠いた、私欲に満ちたものだった。助手はその表情につられ、下卑た笑いを浮かべる。
 少年はスピーカーから聞こえてくる男の解説に絶望の色を浮かべた。
「う、そ……や、だ……や、やぁ! むり、むり、そんな、のやだッ……!」
 拒絶の声も空しく、触手の体液がドプドプと少年の腹に注がれていく。大量の体液を吐き出すと、触手はヌラリと身を捩らせ退いた。
 そして今度は表面にぶつぶつと細かい凹凸のある個体が、少年の秘部に潜り込んだ。
「ひィ"ッ──!!」
 ヒ、ヒィッ、と間欠的な声を発しながら、少年の身体が先までよりも激しく震える。背中をしならせ、仰け反った白い喉を晒す。剥き出しの胸にも触手が這い回り、吸盤に吸われたのか鬱血の痕があちこちに見られた。牛の舌のような形をした個体は乳首を責め立て、少年はあまりの刺激の強さに腰を捩って身悶えた。
「すごい……ヨがり方ですね」
 助手がゴクンと生唾を飲み込む。この実験が始まる前に、少年のアナルに己の肉棒を突き込んだ時のことを反芻すると、下半身が反応してしまいそうだった。
「堪らんだろうな。あの凹凸が彼の中を擦りあげて……前立腺も圧迫されているはずだ」
「ひぃンッ──! アッ、ああンッ、あ"あ"あ"ッ……!!」
 男の声を聞いていたかのように、少年の細いペニスから精液が迸った。触手はまだ少年のアナルでヌボヌボと激しい抽挿を繰り返している。達したままの中を乱暴にされて、少年は極めたまま悲鳴も出なくなっていた。
「起きなさい。君の中に卵を産みつけるぞ」
 触手はぴたりと動きを止めると、微かに震えた。その動きはしばらく続き、やがてゆっくりと中から這い出て来た。
 すかさず別の個体がそこに入れ替わる。男性器の亀頭のような形をしたそれが、少年の中にずぶずぶと押し入っていく。
「っ──あ、はッ……、なん、」
「ここからが種付けだよ。君の大好きな精子を、その薄い腹にたっぷり注いでもらうんだ」
「い、や……、やだ、や、……あッ、……あ、は、……あッ!!」
 ぐじゅ、ぐぷ、と生々しい音が真っ白な室内に溢れる。いつの間にかガラス面の外にはたくさんの研究員が張りつき、異様な気色をその顔に浮かべて少年と触手の交合を見守っていた。
「は、あッ……! いや、や、やだ、やぁぁぁッ……!!」
「すげぇな……」
 誰のものとも知れない呟きが漏れ、あちこちで唾を飲み込む音が聞こえた。少年は衆人環視の中、全身を性感帯にして達しながら、異形の生物に犯され続ける。涙と唾液を零しながら、頭を、腰を振りたくる。
 何で、どうしてこんな目に──ただ、勉強がしたかっただけなのに。

 14歳にして大学を卒業し、2年後に生物学の研究論文で名を上げた少年は、17歳でこの特殊生物の研究施設に招かれた。
 はじめのうちはみんな年若く熱心な学者を物珍しがり、親切にしてくれた。
 しかし日が経つにつれ、施設内に妙な空気が立ち込めるようになった。誰かが、少年の年齢に見合わない待遇について情報を掴んだのだ。
 高い給与、与えられた豪華過ぎる居住環境。少年自身がそれを望んだわけではないのに、まわりは妬んだ。ある者は少年の言動を奢っている、と見なした。生意気だと絡まれ、才能を妬まれ、その嫉妬の炎は狭い所内にあっという間に伝播していき、しまいには所長に媚びて身体で取り入ったのではという噂まで流された。
 いじめに耐えかねた少年は所長に直訴し、そして──噂は、現実になった。
 相談を持ちかけた少年は所長室で所長とその取り巻きに辱められ、そのままこの真っ白な実験室に連れて来られたのだ。
 その後のことは、監視カメラにすべて記録されている。
「ふぁ、あッ……! 中、に……あ、ぁ、出て……せーし、せぇ……し、」
 ガクガクと顎を震わせながら、少年は体内に吐き出される熱い液体を受け止める。腸壁いっぱいに塗りつけられた卵と、触手の吐き出した熱い精子が自分を母胎にして結びつくのかと思うと、ぞわりと背筋に悪寒が走る。
 研究員がコンソールを操作すると、室内の天井につけられた穴から細かな水が噴霧された。触手はそれを浴びるとうぞうぞと少年の身体を離れ、ダクトを通って本体がある別室のケージへと戻っていく。
 少年のいるガラスの中の自動ドアが開き、白衣の男が入って来た。少年を最初に犯した、この施設の所長だった。
「ひ、あ……、しょちょ、……ッ、」
「君のこの研究への貢献には感謝するよ。出産までの間、君を可愛がってあげられないのが残念だが……終わったらまた、みんなの精子をこの腹にいっぱい飲ませてやるからな」
 ニヤリといやらしい笑みを浮かべると、震えている少年の膨らんだ下腹を撫でた。
 ガラスの外にも、少年の味方は1人もいない。研究者達は透明な檻の外で、今やただの実験サンプルと化した少年を熱心に観察し続けるのだった。

2016/09/25

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