『樹くんちょ助けて死んじゃう!!樹くん樹くん!!』
樹「その塀壁に隠れてろって」
『えやだきたきた殺す殺す殺す』
樹「んは、そうそう殺っちゃエ」
なまえに携帯を持たせて遊んでいるのは某TPSゲーム。俺がハマってるからやらせたってのも一理あるけど、ゲーム慣れしてないなまえの反応が可愛くて倍面白い。
『あーー!樹くん!!!』
樹「相打ちじゃん。ナイス」
『でも死んじゃった!』
樹「何のために俺がいるのよ」
なまえのそばまで行き回復ボタンを押す。ソロプレイじゃないんだからそんなすぐ死なないって。
『えっこれ生き返るの』
樹「そうだよ?」
『ありがとう樹くん⋯』
俺を見上げて嬉しそうな顔をするなまえが可愛くて柄にもなく少しトキめいた。俺から視線を逸らせるために回復グッズをなまえの近くに置き取るよう指示する。
『これは持ってる!』
樹「いいから持ってなさい。俺より使う機会あるはずだから」
『樹くんうまいもんなー。好きなんだね、これ』
樹「ハマってるね」
あげた回復剤を拾えないと騒いでいるなまえの画面を見るため近寄ると、ほのかに香るなまえの匂い。それをどうしてこんなに心地良いと思ってしまうのか、自分でも不思議でしょうがない。
樹「その使わない弾捨てればいいんだよ」
『どれ?』
樹「その赤いやつ。黄色いのだけ残しておきな」
『あ、拾えた!』
樹「なまえココきて」
『え?』
樹「なまえの画面見えた方が助けられるから」
それっぽい理由をこじつければ大人しく俺の足の間に座りに来るなまえ。単純なところも扱いやすくて可愛いけど、俺以外にもそうしてるのかと思ったら妬けるな。
『樹くん痛い』
モヤモヤした気持ちをなまえにぶつけるように顎で肩口をゴリゴリと押す。
樹「痛くしてんの」
『ズレちゃうからやめて〜』
樹「敵きたらね」
車を操作しながら索敵を続ける。それなりに遊び尽くしたマップだけど、やる人が変われば面白くなるもんだな。
樹「あ、勝った」
『ええ?なにもしてないよ?』
樹「でもいちばーん」
『いぇーいいちばーん!うちら最強』
携帯本体を上に掲げ体で喜ぶなまえ。その反動で肩に置いていた俺の顔は反動でガクンと落ちる。
樹「いて」
『え、あ、樹くんごめん』
樹「たくもう、おてんばさんだなあ」
なまえの頭を後ろからわしゃわしゃとしてやれば、文句を言いながらも楽しそうな顔をしていて。
樹「可愛いな」
『へ?』
あまりにも無意識に言葉口から出た。なまえも言われると思ってなかったのか、首を後ろに向けて俺の顔を見ている。
樹「⋯⋯いいペットだな」
『あぁ、そういえばペットでした、私』
樹「お利口さんにしてたらご褒美やるかんな」
せっかくペットってこと忘れて純粋に楽しんでくれてたのに、何やってんだ俺。もう少し誤魔化し方選べばよかった。そんな後悔を有耶無耶にするようになまえの頭をわしゃわしゃと撫でた。
『ちょ、樹くん』