昼寝から覚めたら知らん場所にいた。なるほど分からん。
「誘拐? だとしたら俺の危機感知能力やばくねえか?」
顎に手を添え、ぐぐっと首を右に傾ける。眼下にはヨークシン、によく似た街が広がっている。しかし似てはいるが水準はこちらの方が上だ。道路の整備具合だとか、道行く人間の格好だとか、ビルの高さだとか。
俺が今いるビルがざっと20階といったところ。それより高いビルは目の前に沢山生えている。筍の如く。さすがのヨークシンも高層ビルはここまで並んでいない。
ヨークシンじゃないけどヨークシンより発展した都市。何それ俺そんな街知らないんだけど?
目が覚めてすぐ、ビルの屋上まで登って来てしまったからきちんとは確かめていないが、街を歩いている人種は九割がアイジエン系だった。発展都市は往々にして人種の坩堝だ。金の集まるところには物も人もそれ以外も集まるようにできているのに、これはおかしい。
「すげえ都会だし、ケータイは通じねえし、文字はジャポン語で読めねえのに口語はハンター語だし。なんなんだこの矛盾だらけの街は。あと誘拐犯どこ行った」
以前シャルナーク=クソヤローに拉致られた時を思い出すな。大変胸くその悪いことに。拘束はされていないが犯人候補には入れておこう。あいつは間違って殴っても倫理的に許される。
しかし、ここをジャポンと仮定すると困ったことになる。周囲を大海に囲まれた島国から俺のいた場所までは、最低でも移動に一週間かかる。急ぎと言うほどではないにしろ、ほどほどに仕事を抱えていた身としては辛いところである。
非常階段伝いにぽんぽんと飛び降り、数十分ぶりの地面を踏みしめる。何がともあれ、まずは情報収集だ。
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