※列車後・短い 

伝えにきてくれたのは竈門と名乗る少年だった。
任務で上弦の鬼と戦ったあの人は、最後まで柱としての使命を全うしたのだと震える声で告げられた時はぐらりと地面が揺れた感覚さえした。
どんな状況であったのか、恐らくは少年が分かる範囲全てを話してくれたのだと思う。
時折言葉を詰まらせながらもしっかりと全てを語ってくれた少年は最後に私の目を見つめ、また口を開いた。

「煉獄さんから苗字さんへ、伝えて欲しいと」


─── 君は存外頑固な所があるから俺を忘れて幸せに生きてくれ、なんて言われてもきっと素直に聞いてくれないだろうな。逆に忘れてやるものか、と意気込んでしまうかもしれない。
俺とて君にどれだけ想われていたのか知っているつもりだ。...だから、俺を忘れろとは言わないさ。ただ君に頼みたい事が二つある。...まず生きてくれ。何があっても生きろ。俺の後は追ってくれるな。君がこちらに来たら俺は蹴り落としてでも君を帰すぞ。そしてふたつ、どうか笑っていてくれ。俺は君の笑った顔が好きだったから、ずっとその笑顔だけは捨てないで欲しい。なんて最後の最期で君を泣かせてしまう俺が今更何をと思うやもしれんが、どうかそれだけは願わせて欲しい。
…ずっと名前を待たせて、我慢させてしまったからな。次は俺をうんと待たせてくれ。どうか、


そう言って少年は一度深く息を吐いてまた私の目を見た。
どうか、の先は聞き取れなかったと謝罪をする彼に深く頭を下げる。
礼を述べ次の行く場所があるのだといった少年を見送った。

本当に、私の事よく分かってらしたんですね。
忘れろなんて言われた日には意地でも忘れてやるものかと意気込んだのでしょう。
でもえぇ、そんなこと言われなくても忘れられないのですから同じことです。

「もう鬼など居なくなったのですよ、と笑って告げられるほどに生き抜いてみせますから。うんと待たせてみせますから。遅いと迎えに来ていただいても追い返してしまいますからね」