名前に戦の経験などない。彼女はごく普通の一般家庭に生まれ、一般的な生活をしてきた無力な女子供である。人並みに勉強をして、人並みに運動が出来る程度。そんな彼女がこの世界に流れ着いた理由など誰も知り得はしない。死なぬ為に日々を必死で生きる彼女は進化の途中だ。血を見ても泣かぬように、死を見ても足を止めぬように。ただ戦場を睨んで頭を全力で稼働させながら生きている。

───であれば彼女がそれを感じ取ったのは偶然か必然か。
毎度の如く特出した豊久の背を目で追った名前の頸にぴりつくような感覚がして、次の瞬間には叫んでいた。自身にこれほどの声が出せるかと驚く程に戦場を駆けた声。それが豊久の耳に入るのと彼が止まるのはほぼ同時だった。
敵を斬り倒し進軍していた豊久がぴたりと足を止め、じいと先を見つめている。
"なにかがある"
豊久は確信していた。恐らく伏兵でもとびきり質の悪いもの。彼が気付けたのはその天賦の才であり、彼が島津であったからとも言えるだろう。
後方から聞こえる名前の声も確かに耳に入っては居たが豊久の耳を素通りしていく。
さて、この先進めば蜂の巣にしかしこれで止まれば逃げられる。どうしたものか。そう豊久が考えあぐねたその一瞬に背を追い越して矢が降っていく。
さくりと地面に刺さった途端に轟音をあげ土煙を飛ばす火薬が豊久の背後から降り注ぐ。
ちらりと視線をやった先にエルフ衆と与一が笑っていた。


書きたい気持ちはあれど続きが出ないのでSSに投げます。