V
The First Incident






息を殺して中を覗くと、私はまず念のために犯人がアリスかどうかを確認する。アリスで見ても光らないので、一般人であることが確認できた。

外では、たくさんの人たちが私の動向を息を詰めて見ているのがよく分かる。私は手を通気孔に向けると犯人たちの手足、特に銃へ意識を集中させた。


「うわぁッ!?な、何だよこれ……!!」
「うっ?!動けねぇ……!!」
「おい!誰が何をしやがった?!」


__バキバキバキッ

と音が響き、彼らが氷で動けなくなっていく。完全に動きが止まったのを確認すると、私は警部たちに合図を出して突入せよと伝えた。

自分の役割が終わった私はふぅ、と息を吐くと、今度は先程と逆の順で軽く叩いていく。すると兄に伝わったようで、結界がふっと軽くなった。もちろん無くなりはしないけれど。

表に回ると犯人たちは既にお縄についていた。おやまあお早いこと。そして警察車両に乗せられてドナドナされて行くのを見送ると、目暮警部に呼ばれた。


「白鳥くん、これが我が班の新しいエースだ」
「いやぁ、本当に……つい目を疑いましたが、実力は本当だったようで……いや、お見逸れしました」
「え!?いえ、そんな……」


すみませんでした、と頭を下げる白鳥警部に私はびっくりして、いやいや頭を上げてください!と焦ったように言った。だって自分より上の立場の人にこんなに腰低く謝られるなんて経験、ほとんど無いもの。え、みんなそうだよね?


「とりあえず、本庁へ戻りましょう」


佐藤警部補が声を掛け、戻るために動き出した。私はグローブをキュ、と引っ張って直すと、また自分のアリスで庁舎まで戻った。





- 8 -

*前次#


ページ:





ToP