※受け攻めが微妙 作者はどちらかというと攻め主のつもりで書いてます

 




「おいみょうじ、チンタラすんな」

「オマエみてーな雑魚と任務? マジねーわ」

「よっわ。よく呪術師なんかやってんな」

五条は弱い奴が嫌いだ。だから傑とは仲良いし、他人の治癒というすごい才能をもつ硝子のことも認めている。

まあ分かりやすく言うと俺のことが嫌いだ。そう、俺は五条に嫌われてる、はずなんだけど。



ある日の任務から帰ってくると、他人の自分に関する好感度が見えるようになっていた。いやたぶん術式による一時的なものだけど、好感度が高いほど、一緒にいる時のハートが多くなるらしい。
傑と硝子は同じくらいで、ぽんぽんとハートが舞う感じだった。夜蛾先生は庇護の気持ちからか、柔らかいハートで包み込まれる感じだった。先生のあのコワモテとのギャップで不覚にも笑いそうになったのをなんとか堪えた。あと、ちょっと心が温かくなった。

これ五条に会った時どうなんのかなぁ、まあほぼゼロだろうしむしろマイナスだろうから、逆に割れたハートとか見えたりして、なんて思っていた。
しかし予想もしていなかったことに、五条は背中にめいっぱいのハートを背負っていた。むしろハートに埋もれてすらいる。……え?

「……おい、聞いてんのか」
「あ、うん、」
「ボーッとしてんじゃねえよ雑魚」
「……ごめん」

いやまあ、そんなわけないか。気のせいか術式の誤作動だろうな、と思って適当に話を切り上げて踵を返そうとすると、ぐん、と腕を掴まれ引っ張られる。いつも思うけど力強いな……。

そうして引き止めた割に五条は俯いて言葉を発さず数秒が経った。その間その沈黙について俺が何も言えなかったのは、ただでさえ多かった五条の周囲のハートがより数を増した気がしたからだ。

だけど流石に沈黙に耐えかねたので腕を振り解こうとしてみたが不発に終わり、「五条、離して」と言ってみた。その声にあまり抑揚が乗らず、少しそっけなかったかもしれない。

「おこっ、た、のかよ」
「え?」
「く、口悪ぃのは自覚してるし、でも分かっててもすぐ直せねーし……」
「……えっと、五条? 何の話?」

五条の背中側にあったハートがいくつかふわふわと漂ってくるわ、五条の言葉にも脈絡が感じられないわでより困惑しかない。とりあえず五条は俺がキレたと思ってるらしいと解釈する。

「あー、別に怒ってないし大丈夫、だよ? だからそろそろ、離してくれると助かるんだけど」

なるべく柔らかく言ったその言葉にも、ぴくりと五条の肩が跳ねる。

「嫌いに、なんないで」
「………はぇ?」
「俺のこと嫌いになんないで。これからちゃんと直すから。おまえに嫌われたくない……」
「………」

いや、幻聴? それか催眠術? でも五条がそんなもの食らうとは考えにくくて、となると他の可能性はなんだろうか。

「五条、ちょっとごめんな」
「は、」

背の高い五条に手を伸ばして、前髪の下のその額に触れた。熱はなさそうだな、と掌の温度を確かめていると、五条から生まれたハートが俺も五条も取り囲むほどに倍増した。2倍なんてもんじゃない。いや、ほんとに何これ?

「っな、何、してんだよ……!」
「あ、ごめん。五条の様子がおかしかったから、熱でもあるのかと思って……」

ふと五条を見ると少し顔が赤い気がするけど、さっき触った感覚だと分からなかっただけで、やっぱり熱あんのかな?

手の甲でその熱を帯びていそうな頬に触れる。五条は固まって、それとは裏腹にハートは増すばかり。とりあえず寮で休むようにだけ促してみるかと手を離そうとしたところで、その頬に少しくっつけていた手を、五条の手が掴んだ。
え、このまま握り潰されたらどうしよう。そう思ってヒヤリとしたけどそんなことは起こらず、何故か指を絡めて握られる。そして五条は僅かに触れたままになっていた手の甲に頬を擦り寄らせた。

……落ち着いて考えてみても、五条の一連の行動の意味が分からなくて、五条のケータイに補助監督から催促の連絡がくるまで、俺は固まっていた。


書いてみたかったご都合呪術。夢主のことが大好きだけど素直になれなくて小学生みたいな態度をとってしまっていて、だけど急にその人の態度がそっけなくなったから焦り始めて素直になる感じが書きたくて。
補足として、自分だけ苗字で呼ばれてるのも嫌だし、他の人には笑うのにあんまり笑いかけてくれないのも死にそう。いや自分のせいって分かってるけど…な五条悟。
夢主はいずれ絆されて付き合うし2ヶ月後には誘い受け五条により童貞卒業させられます(雑)