「なぁ尻尾」

『何?』

「合宿の準備終わった?」

『や、まだ。足りない物があるから買いに行かなきゃいけなくて』

「お、俺も!せっかくだし、一緒に行こうぜ!」

『は?』



合宿を間近に控えた休日。
合宿準備の為に家族と出掛ける予定だったのを見事にひっくり返してくれたのは横にいる切原(ワカメ)君であった。



「やーマジ尻尾がいてくれて助かったぜ!合宿の準備なんてなにすりゃいーか分かんねーしな!」

『去年も行ったじゃん…』

「去年は跡部さん主催だったじゃん。必要なモンはあっちで揃えてくれるって話だったから、大して準備してねーもん」

『…甘えてるねぇ』



確かに去年の今頃、同じような合宿をした。
計画の立案者は跡部先輩で、すべての用意をしてくれたのも跡部さんだった。いやもう、あの人ホントにすごい。スゴイのレベル超えてるよ御曹司怖い。



『てゆーか切原くん、さっきから私と同じやつばかり買ってるけどいいの?家にあるのもあるんじゃ…』

「赤也な。あーいいのいいの!尻尾と合宿の買いもん行ってくるっつったら母ちゃんが『じゃあ尻尾ちゃんが買ったもの全部買ってきなさい!』つってかなりお金渡してくれたから」

『なんで?あ、これ買っといたがいいよ。私家にあるから買わないけど、あると便利だから』

「母ちゃん、大会の時尻尾と話してからお前に対する信頼度高いんだよ。さんきゅ!なんだかんだ言ってお前優しいよなー!」

『…そうかね』


まぁ、性格がいいのは自負してるけど。





場所は変わって、フードコート。
買うものはとりあえず買ったから、休憩ってことで、切原くんはアイス、私はクレープを食べてます。うん、美味。



「尻尾、それ何味?」

『何味もない。バナナカスタード生クリーム』

「うめぇの?」

『当然。切原くんのは?』

「赤也、な。なんだっけ。パチパチするやつと、レモンスマッシュ的なやつ」

『スカッシュだね。レモンよりメロンの方が絶対美味しいのに』

「分かってねーなー。メロンじゃ甘すぎだって」

『甘いのがいいんじゃん。これなんて甘い物の掛け合わせだからね』

「カスタード生クリームだもんな…あ、じゃ一口ちょーだい」

『いーよ。はい』

「んぁ。……ぅわあっまぁ。」

『うまいだろ』

「あー…まぁな。そーいやこないだ丸井先輩とケーキバイキング行ったんだっけ。甘党?」

『そうなんじゃない?つっても甘いもの食べ過ぎたら吐き気来るけど』

「そこは丸井先輩とは違うんだな…」



うげぇ、とでもいうような顔をして言った切原くん。なんだよ女子が吐くって言葉出しちゃダメなのかよ。しかしまぁ、丸井先輩の食いっぷりには驚いた。甘いものはいくら食べても平気らしいけど、流石に私はそんな丈夫な胃はできてない。君だってそうでしょ、と言えばそりゃあな。と、アイスをもごもごさせながら言ってきた。



『すごいパチパチ聞こえるよ』

「マジで?いま口の中すげーもん。フィーバーだぜフィーバー」

『分かんないよ』

「じゃあ食う?ほら、あーん」

『あー…ありがと。………うっわ、ナニコレ』

「な!フィーバーだろ!!」

『あーうん…?』



フィーバー。切原くんは自他共に認める(?)おバカさんなのでボキャブラリーが少ないのも…うん、わかる。ニュアンス的にはあってんだろうけど、些かフィーバーってどうよ。なんて思ってたりする。




『切原くんがアイス食べるの見てたらアイス食べたくなるんだけど』

「あ・か・や・な!買ってきたらいいじゃねーかよ」

『お金これ以上使いたくないし』

「お前はなんとしても俺を名前で呼びたくねーんだな…あーもう分かったよ、奢ってやる!どれ?」

『え、いいの?じゃあマスクメロン』

「いいのっていいつつ遠慮する気0だなオイ」




まぁいいけど、と言って切原くんは席を立った。フードコートの端の方にあるサーティ●ンアイスクリームの店に向かって歩き始める。私はこっそりガッツポーズ。
よっしゃ、金使わないでアイス食える。


暫くして戻ってきた切原くんの顔は真っ青だった。


『…顔、真っ青だよ』

「!!あ、いや…その」

『誰かに会いでもした?』



好きな子にでも会ったのかな?…たとしたら顔真っ青なのはおかしいか。あ、いや、その子に私といたところを見られてたとしたらどうだろ。誤解されてるかもしんないじゃん。=顔真っ青。納得。

切原くんの顔をじぃっと見つめたまま悶々と考えてたら、それに気付いた切原くんは顔を少し赤くして席に座った。そしてマスクメロンを私に手渡す。ありがとー、と間延びした声でお礼を言うと、


「っ、お、…おう」


何故か照れた様子で返事された。
なんでだ。どこに照れる要素があった。


「…さっき、部長からメールあって、」


マスクメロン(アイス)うまうまと味わっていると、レモンスカッシュ(再び)を食べている切原くんが口を開いた。




『幸村部長から?』

「おう。今何してんだって」

『「マネージャーと合宿の準備してます」』

「いや、そうなんだけど…」

『?』



モゴモゴさせて続きを話さない切原くんのことは特に気にせず食べ続ける私。メロンうめぇ。目的が一緒だったとはいえ付き合わされたんだし、もう一個くらい奢ってもらおうかな…



「その…部長にそんなこと言ったら殺さr…話聞いてるか?」

『あ?ごめん聞いてなかった。何?部長が悪魔化すんの?』

「誰もんな話してねぇよ!!つーかそれガチで怖い!!!」

『イップスできて悪魔化できたらほんとに敵なしだよね』

「もうテニスにすらならないだろ」

『…、切原くんが言えることじゃないよね。』

「いい加減赤也って呼ぶ気はねーのかテメェは!!」

『ないね』




なんか知らんけど切原くん撃沈した。息してる?


そんなこんなで終わった休日。
来週はとうとう合宿です。



((間接ちゅーは全然気にしてなかったな…あーんも躊躇無かったし。…鈍感…))
(ふふっ赤也、休日は随分楽しかったみたいだね?)
(ヒッ!?)