それから、私は、彼らが出ているすべての試合を、じーっくり見て帰った。

デパートに来てからだいぶ時間もたってて、家族は急にいなくなった私を探していたらしい。
携帯に10件くらいの着信とメールが来ていた。いつも音消してるから気付かなかった…さすがに謝った。


でも、ごめんって言いながら、私の顔は笑ってた。いや、ニヤけてたって行った方が正しいかもね。




―――――――――――立海大、付属中学。
おそらく、彼らの学校名。
応援に来ていた子達の制服、確かそうだったと思う。


ニヤケが、止まらなかった。



『ね、お母さん』

「なにー?」

『私、立海大付属中学校に行きたい』




多分、初めてのワガママだったと思う。

思っきり反対された。
今更っていうのもあるし、お金の問題もあるし、学力の問題もある。


いや、学力はそこまで心配ないんだけど。



お父さんとお母さんのキッビシイ反対を受けて、じゃあ特待生になったらいい?って言ったらあぁいいよ、なれるもんならねって言われた。


悔しかったし、どーしても彼らのテニスを間近で見たかったから、めちゃくちゃ勉強した。友達もびっくりしてた。



んで、合格した。

もちろん特待生で。


流石に本当に合格されたら文句言えないし、特待だからお金かかんないしで、親からは祝福の言葉だけ頂いた。あとお小遣い。頑張ったからね、なんて。



そして私は無事立海大付属中学校に入学した。


けどま、テニス部のマネージャーしたいと言ったら断られた。いらない、と。

流石に高望みだったか、と思いじゃあいいです。お時間取らせてすみませんでした、失礼しますと一応丁寧に言い、その場を離れた。

泣いたか?泣いてないよそのくらいで。



そのあとは個人的にテニスコートに行ったりした。


あのときと一緒で女子の黄色い声が飛び交っていたけど、打ち合いが始まれば気にすることもない。



何度、同じ感覚を味わっただろうか。



私はテニスを見るものの、彼女たちのようにキャーキャー騒いだりしない。必死にボールを追いかける彼らを、必死に見ていただけ。


そんな生活が続くと思っていた矢先、突然テニス部の彼に話し掛けられた。





幸村、先輩だ。




先輩は少し言いにくそうに言った。
「君、俺達のファンじゃないの?」

『……………はい?』

「だから、君、ほぼ毎日ここ来てるでしょ?でもキャーキャー言ってるトコ見たことないから、君は俺達のファンじゃないのかなって」

『…ファン、といわれればそうですけど』

「……………………」

『先輩方のテニスの』

「え」



『私は、先輩方の、テニスの、ファンです。だれがどーとか、顔がどーとか、じゃなく、先輩方がしているテニスを見るのか好きなんです』

「…そんなこと初めて言われたよ」

『そうなんですか?先輩のテニス面白いから、言われ慣れてると思ったんですけど』

「俺たちのテニスが面白い、か」


『…気分を悪くしたなら謝ります。すみません』

「あぁ、そういう訳ではないんだ。ふふ、面白い子だね」

『…………………?』




至って普通の人間だと思うのですが。





「あの時は断って悪かったね」

『いえ…高望みしすぎたな、て思っただけですし』

「高望み?」

『…前に先輩たちのテニスを見たことがありまして。近くで見てみたいって、思ったんです』



少しだけ昔話をした。
まぁよくここまで長く語れたよなぁ、と思う。




「…………」

『……で、今に至ります』

「うん、よく分かった。君がどれだけ俺たちを見てくれてたのかも、君がどれだけ俺たちの顔に興味がないのかも。」

『?イケメンは好きですよ?』

「ふふ、それとは違うよ。相模さん…だったね。あの時もーちょっと話聞いてればよかったなぁ」

『…………はぁ』

「ふふっ…ねぇ相模さん、」

『、はい?』

「マネージャー、やってくれないかな?」

『…………………え、と』




一度断っといて悪いとは思ってる。
でも、今後悔したよ。もっと君の話聞いてればよかった。

………………。

やってくれない、かな?無茶は言わないよ。

…………ます、

え?




『やります……やらせて下さい』




彼は少し目を見開いて、微笑んだ。




「ありがとう、相模さん」




(改めて、2年の幸村精市だよ。これからよろしく。)
(1年の相模尻尾です。こちらこそよろしくお願いします。)