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投稿日:2021年02月24日






「君は一体! 何をしに行ったのかね!?」

 温厚さの欠片もない、太い声でクラークに怒鳴られて、トワリスは萎縮した。
落ち着いて、と宥めるように言って、ルーフェンは、クラークとトワリスの間に立つ。
召喚師の手前、怒りは抑えているようであったが、クラークの顔つきは、今にも殴りかかってきそうなほど険しかった。

 運河でびしょ濡れになったルーフェンとトワリス、そして倒れていたロゼッタは、無事に自警団の者達に助け出され、マルカン邸に戻ってきた。
事の成り行きを聞いたクラークは、ひとまずトワリスたちを着替えさせ、応接室に通すと、烈火のごとく激怒した。
ただ逢引の監視を命じただけなのに、そのトワリスが、突然運河に飛び込むだなんて奇行に走るとは、一体誰が予想できただろう。
結果的に、大事なロゼッタを気絶させ、賓客であるルーフェンまで全身ずぶ濡れにしたわけだから、クラークの中で、トワリスは重罪人に成り上がっていたのだった。

「黙っていないで、なんとか言ったらどうなのだ。この前の毒混入を許した件といい、役に立たぬだけならまだしも、君はなんなのだ。私の顔に泥を塗りたいのか?」

「……申し訳ありません」

 仏頂面で謝罪をするだけで、トワリスは、それ以上何も言わない。
何故非難されるのか、まるで納得がいかないという心の内が、そのまま顔に出てしまっている。
そんな態度が、一層頭に来るのだろう。
クラークは、わなわなと拳を震わせて、床に正座するトワリスを指差した。

「第一、何故運河なんぞに飛び込んだのだ! トワリス、君のせいで市街はちょっとした騒ぎになったのだぞ。召喚師様にまでお手間を取らせおって……!」

「まあまあ……私は大丈夫ですから」

 憤慨するクラークを、ルーフェンが諌める。
豪奢な椅子から立ち上がり、ばんばんと机を叩いて叫んでいたクラークは、ルーフェンに向き直ると、恭しく頭を下げた。

「召喚師様、なんとお詫びを申し上げてよいやら……。本当に医術師は呼ばなくてよろしいのですか? 頬が赤く腫れておりますが……よほど勢いよく顔面から着水なさったのですね」

「いや、そんな器用な着水はしてないですけど……」

 あはは、と苦々しく笑って、ルーフェンは、トワリスを一瞥する。
この頬の赤みは、他でもない、トワリスにぶん殴られたせいで出来たものだ。
しかし、そんなことを話せば、クラークはいよいよトワリスを厳罰に処すだろう。
彼女も彼女で、少しは弁解すれば良いのに、ぶすぐれた顔で沈黙しているだけだ。
こんな態度をとっては、クラークの頭に血が昇るのも仕方がない。

 ルーフェンは、やれやれと肩をすくめると、クラークに笑みを向けた。

「マルカン候、そう怒らないで下さい。別に彼女も、意味がなく運河に飛び込んだわけじゃないんです。実は──」

「──子供が!」

 仕方なく、代わりに弁解してあげようと口を開いたルーフェンの言葉は、しかし、当の本人、トワリスによって遮られた。
思わず声が大きくなってしまって、トワリスは、はっと口をつぐむ。
ルーフェンとクラーク、二人の視線を受けて、トワリスは、どこか辿々しい口調で告げた。

「……子供が、溺れているように見えたんです。それで、助けようと思って、飛び込んだんですが……私の勘違いでした。すみません」

「…………」

 クラークの顔が、怒りを通り越し、呆れに歪む。
ルーフェンは、少し驚いたように瞠目して、トワリスを見つめていた。

 彼女が嘘をついた理由が、分からなかった。
ロゼッタのために、落とした耳飾りを取り戻そうとしたのだと説明すれば、クラークの怒りは幾分か解けたはずだ。
無鉄砲さに注意を受けることはあったかもしれないが、娘のために動いた臣下を処すほど、クラークは横暴ではない。

 その時、不意に、扉を叩く音が聞こえてきた。
クラークの返事を聞いて、一人の侍従が、部屋に入ってくる。
侍従は、入室と同時に頭を下げると、クラークに進言した。

「申し上げます。ロゼッタ様が、たった今、お目覚めになりました」

「おお! それは真か!」

 曇っていたクラークの表情が、ぱっと輝く。
足取り軽く扉まで向かってから、ふと振り返ると、クラークは言った。

「今日のところは、この話は終わりだ。トワリス、君の処遇については追って沙汰する。召喚師様は、どうぞこの後も我が屋敷でごゆるりと。何かございましたら、侍女までお申し付けを」

 それだけ早口で残して、クラークは、さっさと部屋を出ていってしまう。
静まり返った室内で、ルーフェンは、どうすべきかとクラークの机に寄りかかったが、トワリスは、少し体制を崩しただけで、未だ硬い床の上に正座をしたままであった。

「椅子に座ったら?」

 クッションのきいた長椅子を示して、ルーフェンが口を開く。
トワリスは、どこか強張った面持ちで、おずおずと長椅子に腰かけると、やがて、暗い声で尋ねた。

「……召喚師様は、怒ってないんですか」

「何に?」

「邪魔をしたことと、頬を叩いたことです」

「……それを言うなら、昔噛まれたときの方が痛かったよ?」

 冗談のつもりで言ったが、トワリスは、くすりとも笑わなかった。
ただ目を伏せ、床の一点を見つめながら、膝上に置いた拳をぐっと握っている。

 ルーフェンは、一拍置いてから、トワリスに問うた。

「どうして耳飾りのために飛び込んだんだって、説明しなかったの? 子供が溺れてると勘違いしたなんて、嘘でしょう?」

 トワリスの目が、一瞬、ルーフェンを捉える。
しかし、すぐにそっぽを向くと、トワリスは、ぼそぼそと答えた。

「……だって……耳飾りをとって戻れたわけじゃありませんし。わざとじゃなかったとはいえ、贈った耳飾りを娘がなくしたと知ったら、父親としては悲しいじゃないですか」

「…………」

 驚きの答えに、ルーフェンは、思わず絶句してしまった。
優しい、といえば聞こえはいいが、それはあまりにも意味のない、無駄な親切心であった。
ロゼッタにとってもそうだが、クラークにとっても、あの耳飾りはさして重要なものではないだろう。
そもそも、贈ったかどうか覚えていない可能性が高いし、仮に覚えていたとしても、数ある贈り物の一つに過ぎない。
あの耳飾りには、命をかけるような価値などないし、クラークを気遣うあまり、己の立場を危うくするだなんて、思いやりがあるというよりは単なるお人好しだ。
耳飾りを取り戻そうとしたのだと訴えて、自分の地位を守った方が余程利口である。

 ただの町娘として暮らすならば、優しさは美徳と言えるだろう。
しかし、トワリスが選んだ魔導師という道は、戦いに身を投じる中で、時には人を騙し、貶めることも必要になるはずだ。
それなのに、彼女は今まで、この愚直さで生きてきたのかと思うと、感心するのと同時に、言い知れぬ苛立ちや呆れのようなものも感じた。

 ルーフェンは、顔に出さぬように、内心ため息をついた。

「……耳飾りがなくなったのは、君のせいではないし、正直に言えばよかったと思うよ。トワリスちゃんは、あの耳飾りがすごく価値のあるものだと思っているようだけど、多分そうじゃない。マルカン候の娘の溺愛ぶり、見てるでしょ? あの調子で、しょっちゅう娘に物を買い与えてる。あの耳飾りは、その中の一つでしかないよ」

「……どうしてそんなこと言うんですか」

 忠告のつもりで言ったが、それこそトワリスにとっては、不要な親切心だったらしい。
どこか不機嫌そうにルーフェンを見ると、トワリスは、言い直した。

「お言葉ですが、召喚師様こそ、人の気持ちを軽く見すぎじゃありませんか。あの耳飾りは、マルカン候からの贈り物であり、ロゼッタ様が召喚師様のために身に付けてたものでもあるんですよ。数日前から、嬉しそうに耳飾りを自慢してくるところを、私はずっと見てました。そういう背景を知らないくせに、そんな風に言わないでください」

「…………」

 いや、ロゼッタちゃんに限っては──と言いかけて、ルーフェンは口を閉じた。
トワリスは、見るからに頑なな態度で、ルーフェンを睨んでいる。
ここで何か反論をするのは、火に油を注ぐこときなるだろう。

 ルーフェンは、話を別の方向に向けた。

「でも、このままだと、君の立場が危ないかもしれないよ。マルカン候は、君が勘違いで運河に飛び込んで、騒ぎを起こしたと思い込んでる。相当ご立腹のようだったし、誤解を解かないと、屋敷から叩き出され兼ねない」

 ぴくりと、トワリスの睫毛が動く。
唇を噛むと、トワリスは、細く息を吐いた。

「……そうなっても、仕方ないのかもしれません」

 弱々しい声で、トワリスは続けた。

「……マルカン候には、感謝しているんです。ハーフェルンに来て振り回されることも多かったけど、私みたいな新人魔導師を、こんな大役に起用して、期待してるって言って下さった。経歴とか獣人混じりだとか、そういうことも気にせず、魔導師としての実力だけを見ようとして下さってたんです。マルカン候は、きっとそういう方で……だから、その上で、私じゃロゼッタ様の護衛は勤まらないって判断されたなら、仕方がないです」

 どこか諦めたような声音で、トワリスは言った。

「前にも、叱られたんです。ロゼッタ様の夕食に、毒が盛られていたことがあって、それを、私が見逃してしまったから……。今回の件も、耳飾りを取りに行こうとしたこと自体は、後悔していません。でも、結果的に皆さんに迷惑をかけてしまったので、見限られても文句は言えません。中途半端に辞めることになるのは悔しいですが、ここでしつこく食い下がって、ロゼッタ様を危険にさらしたら、元も子もない。暇を出されたら、大人しく魔導師団に戻って、修行し直します……」

 言い終えたあと、膝上に置かれたトワリスの拳に、ぎゅっと力が入ったのが分かった。
言葉だけは聞き分けの良いものだが、やはり、悔しいのだろう。
トワリスは、投げ槍になっているというより、ただ、良かれと行ったことが空回って、気落ちしているようであった。

 ルーフェンは、そんな彼女の顔つきを、しばらく意外そうに眺めていた。
クラークと対峙していたときは、仏頂面に見えたが、実際のトワリスは、騒ぎを起こしたことを気にしているようだ。
叱られてぶすぐれていた訳ではなく、単に緊張して、表情が固くなっていただけだったのかもしれない。

(不器用というか、なんというか……)

 予想でしかないが、今までもこの堅すぎる性格が災いして、トワリスは痛い目を見たことがあったのではないだろうか。
そんなことを考えていると、トワリスが、居心地が悪そうにルーフェンを見上げて、言い募った。

「……召喚師様、やっぱり怒ってるんですか」

 そう問われて、はっと我に返る。
どうやら、トワリスのことを長時間凝視ししすぎたらしい。

 ルーフェンは、首を左右に振った。

「いや、そういうわけじゃないよ。殴られたところも、もう痛くないし。触られるのが嫌だったんでしょ? ごめんね、大した意味はなかったんだ。もう何もしないよ」

 笑みを浮かべ、何もしないという証明に、両手をひらひら上げて見せる。
トワリスは、少し罰が悪そうに目をそらした。

「いえ、その……私も、申し訳ありませんでした。いきなり、叩いたりして……。でも私、もう一つ謝らなければならないことがあって……実は、召喚師様たちのこと、尾行していたんです」

「…………」

 知っていたが、この後に及んで本人が打ち明けてくるとは思わず、ルーフェンは眉をあげた。
尾行していただなんて、それこそ言わなければ済む話なのに、どこまで馬鹿正直なのだろうか。

 ルーフェンは、肩をすくめた。

「……気づいてたよ。というか、それもマルカン候からの命令でしょう? 君が気にすることじゃない。トワリスちゃんはお金持ち連中の感覚にあまり慣れていないみたいだけど、基本的にご貴族様は、護衛も監視もなしに出掛けるなんてあり得ないんだよ。それが例え、ただのお散歩でも、何でもね」

 皮肉っぽく言うと、トワリスは、微かに眉を下げた。

「それは、まあ確かに何が起こるか分かりませんし、護衛がつくのは大事なことですけど……。でも、今回は召喚師様がいたし、無理に尾行する必要はなかったのかなと。だって、嫌じゃないですか? 折角その……こ、婚約者と出掛けてるのに、誰かに見られてるなんて……」

 どこか恥ずかしげに言って、トワリスは、視線を斜め下にそらす。
ルーフェンは、苦笑混じりに答えた。

「どうかな? まあ、親心もあるだろうし、いいんじゃない? 大事に育ててきた娘が人混みに出掛けるってなったら、そりゃあ心配だろうし、まして一緒にいる男が、俺みたいなフラフラした奴じゃあね」

 そう冗談混じりに返すと、トワリスの目が、大きく見開かれた。

「ご自分がフラフラの変態である自覚はあったんですね」

「……え? 俺、変態だと思われてたの?」

 あ、と声を上げて、トワリスが口を閉じる。
そういえば、運河で殴ってきた時も、変態だの不潔だのと、トワリスは叫んでいた気がする。

 いや、とか、あの、とか口ごもった末に、トワリスは、言いづらそうにぼやいた。

「……へ、変態、というか……だって、ロゼッタ様がいるのに、金髪の女の人と仲良くしてたじゃないですか……」

「金髪……? 誰だっけ?」

 ぱちぱちと瞬いたルーフェンに、トワリスが、怪訝そうに眉をしかめる。
信じられないものを見るような目つきになると、トワリスは、強い口調で言った。

「い、いたじゃないですか! 私と召喚師様が、この屋敷の中庭で偶然会ったとき! 金髪の、女の人が嬉しそうに来て、その、召喚師様と……」

 ごにょごにょと口ごもりながら、トワリスの語尾が、尻すぼみになっていく。
ルーフェンは、うーんと呟いて、それから、首をかしげた。

「そういえば、そんなことがあったかな。金髪の、髪長い子だっけ。それとも短い方?」

「まさか複数心当たりがあるんですか……」

 いよいよ本気で軽蔑し始めたのか、長椅子の右端に移動して、トワリスがルーフェンと距離を取る。
ルーフェンは、からからと笑うと、トワリスが座っている長椅子の、左端に座った。

「そんなもんだって。いちいち真に受けて相手にしてたら、こっちが疲れるもん。……トワリスちゃんも、疲れない?」

 トワリスの眉間の皺が、更に深まる。
ぐっと伸びをすると、ルーフェンは、トワリスを見た。

「いきなりこんなこと言われても、余計なお世話だと思うかもしれないけどさ。もう少し、器用に生きなよ。でないと、自分ばっかり損するよ。世の中、ねじまがってる人間の方が多いから」

 眉を下げて、ルーフェンは、どこか困ったように笑う。
緊張感の欠ける軽い言い方に、トワリスは、刺々しい視線を投げた。

 二人きりで、こんなに近くで話したのは、再会してから初めてであった。
改めて思う。やはり今のルーフェンは、昔の彼とは別人のようだ。
言葉を交わし、目は合っているのに、なんだか今のルーフェンは、終始こちらを見ていないような感じがする。
言葉一つ一つも薄っぺらくて、言動は優しくとも、暖かみが感じられない。
滲み出るその軽薄さを、本人が隠そうともしていないところが、余計に腹立たしかった。

 運河から引きずりあげられたとき、一瞬、昔に戻ったような気がした。
そう感じさせたのが、ルーフェンの瞳だったのか、それとも声色だったのか、自分でも理由は分からない。
けれども、「君は買えないだろう」と言われたあの瞬間、ルーフェンが地下まで助けに来てくれた、幼かった頃の記憶が頭に蘇ったのだ。

 しかしそれも、今では自分の都合の良い思い込みだったように思える。
現在、少し離れた位置に腰かけるルーフェンは、トワリスのことなんて見ていないし、おそらくロゼッタにも、その他の人々にも、さして興味がないのだろう。
かといって敵意を見せることもなく、ただへらへらと笑って、甘い言葉を吐いているのだ。

 トワリスの中に沸き上がってきた、もやもやとした気持ちが、考えるより先に、口からこぼれ出た。

「……どうせ私は、不器用ですよ」

 ルーフェンが、トワリスを見る。
しまった、と思ったが、こみ上がってきたどす黒いものは、止める間もなく、濁流のように唇から溢れ出した。

「召喚師様みたいに器用な方は、私を見てると、馬鹿だなと思うんでしょうね。いちいち真に受けて、信じて憧れて、馬鹿だなぁって。そうなんですよ、私、馬鹿なんですよ。口うるさく注意するばっかりで、護衛としては何の役にも立たないし、空回ってばっかりだし……」

「いや、そんなつもりで言ったわけじゃないけど……」

 トワリスの極端な解釈に、ルーフェンが制止をかけてくる。
そんなことには構わず、地面を踏み鳴らすように立ち上がると、トワリスは声を荒げた。

「でも、あの耳飾りが本当にどうでもいいものだったかなんて、そんなの分からないじゃないですか! 少なくとも私は、大事なものなんだって思ったし、なくしたら、マルカン候もロゼッタ様も、悲しむだろうと思ったんです! 悪いですか? それで何か、召喚師様にご迷惑をかけましたか? かけてませんよね? 運河に飛び込んだのだって、召喚師様が勝手にやったことじゃないですか。私は助けてほしいなんて一言も言ってないし、自力で耳飾りを取って戻れました! ご存知の通り獣女なので、召喚師様よりもずっと頑丈だし、体力もあるんです! だから、余計なお世話だったんですよ!」

 トワリスの勢いに気圧されたのか、ルーフェンは、ぽかんとした表情で絶句している。
つい先刻ぶん殴った召喚師に、今度は暴言の数々。
そろそろ首を飛ばされてもおかしくないと、頭の片隅で考えつつも、トワリスの思考は、すっかり煮え立っていた。

「本当に、余計なお世話なんです……! だって、私がどうなろうと、召喚師様には関係ないじゃないですか。興味ないくせに、誰彼構わず無駄に優しくしたり、振り回したりして……そういうの不誠実だし、はっきり言って気持ち悪いです!」

 自分で言いながら、思いがけず目頭が熱くなって、トワリスは唇を震わせた。
八つ当たりが混じっている自覚はあったし、今更冷静ぶったところで遅いが、ここで泣くだなんて、感情的かつみっともない姿は晒したくない。

 ルーフェンは、未だ言葉が見つからないのか、目を丸くして固まっている。
トワリスは、ルーフェンに背を向けると、扉の方まで大股で歩いていった。

「数々のご無礼、不躾な発言、誠に申し訳ございませんでした! でも、もう知りません……召喚師様なんて、魚の餌にでも、海の藻屑にでもなればいいんですよ……!」

 そう言い放つと、トワリスは、勢いよく取っ手に手をかけた。
「魚の餌……?」と呆気にとられるルーフェンを振り返ることもなく、力一杯、扉を閉めて退室する。
扉が嫌な音を立てたことには、気づかなかったふりをして、トワリスは、その場から逃げるように立ち去ったのであった。


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