こんなにも心はバレーを拒否しているのに、身体はバレーがしたいって訴えてくる。

昔からずっとバレーが好きだった。
でもあの日からそれが曖昧になって。
それでも自分はバレーが好きだと思い続けてやってきた。

そしてついに答えが出ないことを誤魔化す事もできなくなって。

バレーから離れた。

そんな俺を見て母は、ちゃんと答えが出るまではバレーは続けなさい。と言った。

だからたとえ部活に入らなくともバレー教室の手伝いや、ごくたまにバレー教室の先生に勧められて大学生チームに混ざりながらバレーを続けた。

バレーが分からなくて逃げているのに、バレーを続けている自分。

矛盾している自分。

答えが出るまで、と続けて一年がたった。

それでも答えは見つからない。











「花、お待たせ。」

「お兄ちゃん!!」


平日は可愛い妹の花のお迎えだ。
今年で小学二年生になる。
稲荷崎高校の近くにある、小学校に迎えに行って一緒に帰る。


「花ね!今日テストで100点とったの!!」

「凄いじゃん。
じゃあ今日は花の好きなお菓子買ってこ。」

「わーい!」


そう言って寄ったのは学校の近くの駄菓子屋。
三百円まで好きなもの買っていいよと言ってお金を渡して外で待つ。
ぼけーっと景色を眺めていれば、目の前を誰かが通り過ぎる。
いや、誰かじゃない治だ。


「世理?」

「あ、治。部活?」

「そやけど、そっちは何黄昏てんの?」

「黄昏てないから。
妹がお菓子買うの待ってんの。」

「へえ妹おんのか。」

「やらんぞ。」

「アホ言うな、俺はロリコンやない。」

「俺の妹が可愛くないって言うのか。」

「うるさいシスコン。」


というか部活なら他の部員は?
なんで1人で走っているんだ?治ハブられてんの?


「今失礼なこと考えたやろ。」

「お兄ちゃん…?」


買い物が終わって店から出てきた花が、俺の方に駆け寄ってくる。


「お帰り。ちゃんと買えた?」

「うん!
…お兄ちゃんのお友達?」

「あー、治くんって言うんだよ。
ほら、挨拶して。」


友達、というか飯友?
飯友も友がついてるから友達か。


「み、宮園花です…」


恥ずかしいのか俺のズボンを握って後ろに隠れてしまう。
なんだこれは可愛い。


「花ちゃん言うんか。
俺はお兄ちゃんの“友達“の宮治いいます。
よろしゅうな。」


治は膝をついて目線をは何合わせて挨拶を返す。
すごく友達、と言うところを強調していた。
そうか、友達なのか。


「…治くんは、バレー部なの?」

「そやで、よう分かったな!」

「だって…。」


やばい、花が余計なこといいそう。


「治、部活中なんだろ?戻んなくて平気?」

「あかん!北さんに怒られる!!
じゃあまた明日な、世理!」

「はいはい。」


普段余り顔色変えない治が、焦って走り去っていく。
北さん、怖いのだろうか?


「帰ろっか。」

「…うん!」