「さち子、また会っちまったな。こりゃ運命って奴かい?」
ヒヒッと笑いながらヘラヘラと来る風来坊のプレイボーイは憎たらしいが憎めなかった。
何より、路上でも構わず見掛けたら話し掛けてくる程度には打ち解けてしまった。
「他の女の子に構いなさいよ。それともなあに?実は殺し屋のスパイで私を殺せとでも言われたのかしら。」
ホル・ホースはそんな映画に出てくるハリウッド俳優に鼻と目元が少し似ていた。
ブロードウェイを歩くには似合わなさ過ぎて滑稽なものだが。
「お、おいおい、冗談は辞めてくれよ」
何時もの調子じゃあない、少し怒りに似た焦りが見えた。
一瞬だけだ、ほんの一瞬だけそんな気がした。
もしかしたら気のせいかも知れないが。
「貴方がハリウッド俳優なら私はオードリーヘップバーンになれるわ。でもね、彼女本当に綺麗。女としての憧れよね、だから私寝る時はCHANELのNO.5を付けて寝ているの。」
そう返すと彼は「あんたも綺麗だぜ?大女優顔負けってくらいにな。」といつもの調子で笑うのだ。
「まあ、貴方が本当に私を殺しに来た殺し屋なら大ハズレ。お得意の色仕掛けは効かないでしょう?」
さち子はそっとホル・ホースの肩を触る。
あら、珍しく口説いてこないのね。
さち子は歩く速度を心做しか落としてみた。
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