妄想別館 弐号棟


幸福の手紙 その3


と、思ったのだが、これではあまりにも物語の幕引きがお粗末すぎるので、もう少し・・・

小百合がロッカーに入ってから数分後、大講堂の内側から『ガチャガチャ』と音がしだした。
中に誰かいてカギを開けているのだ。
やがて『ギー』と、扉が開き、最初に出てきたのは、なんと校長であった。
他にも男が3人、校長の後から出てくる。
校長はロッカーを前にして、悪びれもせずに男たちに向かって話を始めた。
(校長)「このロッカーみたいな物は、最新式の超軽量型の高性能冷凍庫なんです。
   3分から5分でマイナス70℃まで一気に、一気にですよ、冷却できるんです」
(男たち)「ふんふん」
(校長)「今回は30kg以上の物が入って扉が閉まるとスイッチが入るように設定してあります。
   さらに一度スイッチが入ると外からも内からも絶対に扉を開けることができません。
   もし開けたい場合は、このリモコンで操作をしなければなりません」
持っているリモコンをふりまわし、得意そうな顔をする。
(校長)「小百合先生のように、婚約が決まった人などに『幸福の手紙』を出しますとね、9割がた内容通りのことをやるんですよね」
今度はロッカー、いや冷凍庫をポンポンと軽くたたきながら、
(校長)「まず期限直近の日曜日の朝早くに学校に来るんです。まあ、学校に誰も人がいないと思うんでしょうな」
(男たち)「ふんふん」

(校長)「しかも校舎にはカギがかかっているので、忍び込んでくるんですよ。なぜか」
(男C)「え?小百合先生は正規の手続きで解錠して入ってきたんでしょ。足がつきませんか」
(校長)「大丈夫、解錠カードを持っているのは管理職だけです。小百合先生は解除カードを持ってないから、体育館から忍び込んだはずでス」
(男A)「え、そうなんですか」
生徒たちは、体育館の裏窓の一窓だけ鍵が壊れているのを知っていて、よく部活の朝練の時に忍び込んでいるようだ。
小百合も解錠カードを持ってないから、たぶんそうしたのだろう。
(校長)「セキュリティを解除して校舎に入ったのは我々なので、彼女は学校には来てないことになるのです」
(男C)「あ、そうでしたね」
(校長)「そして決まって廊下の下見をするんですよ。
   隠しカメラがないかとか。もちろんそれらしい物は何もないから安心する。
   そしてトイレなんかで着替えているすきに、大講堂の中に隠しておいた冷凍庫を置いておいたわけです。
   意外と楽だったでしょ。軽量型なので簡単に移動できて」
冷凍庫が突然現れたのはそういうカラクリだったのである。
そして校長たち、再び大講堂の中に隠れていたというわけか。
(校長)「それからね、ほら、大講堂の中から廊下の向こう側まで隠しパイプが通してあって、
   大講堂の中からしゃべっても、まるで廊下の向こうに人がいるように聞こえるんですわ。
   え、そうですよ。小百合先生がロッカーを見て不思議がってるタイミングを見計らって声をかけたわけです。
   『みなさん大講堂はこの奥ですよ』とね。
   それを聞くと、あわてたり焦ったりして冷静な判断ができなくなるわけです。
   そして必ず冷凍庫の中に隠れようとするんですね」
(男C)「なるほど。罠みたいなものですね」

(校長)「さて今回もなるべく高値でお願いしますよ。学校の運営費も含めて物価が高騰(こうとう)してますんでね」
(男C)「それはもう、もちろんですよ。いつもお世話になっておりますんで。はい」
他の男たちも、作り笑いをして揉み手をしている。
どうやら男たちは闇ブローカーのようだな。
(校長)「もう、そろそろいいでしょう」
冷凍庫の扉を開けると、真っ白い冷気がバーッと噴き出した。
小百合が伸びあがるような気を付けの姿勢のまま、カチンカチンになっていた。
(男A)「これはまたみごとな氷像が出来上がりましたな」
校長は満足そうにうなづいている。

(男たち)「ちょっと報告のための品評用メールを打ってもいいですか」
(校長)「どうぞどうぞ」
男たちの品評・・・誤字脱字等含めて原文そのまま。
『お〇ぱいは特大。Fカップ、いやGはあるか。ただし乳首はビー玉のように真ん丸で並。
おマ〇コもこれまた大きく盛り上がっている。
パンパンに張った左右の土手はふっくらとかなり分厚く幅がある。
土手の真ん中あたりからはいっているマン線は、太く見えるがやや短めだ。
身長は小柄で柔らかそうな感じが、なぜかする。
しかしもちろんガチンガチンに凍り付いて、現状は当然石のようになっている。
顔も一瞬で凍ったようで、おどろいたような困ったような、複雑な表情になっている』
                                         ・・・以上報告

(男A)「幸福の手紙ねえ、実際はやっぱり不幸だったんじゃないですかね」
(校長)「いえいえ、違いますよ」
男たちは考えていたが、
(男C)「そっか、やらなきゃ不幸になるけど、やれば天国の気分か。いや天国そのままだろ」
(校長)「だから天国にいるような気分、と書いておきました」
(男B)「幸福の手紙とは書いてあるけれども、幸福になるとはどこにも書いてなかったってわけね」
(校長)「そうなんですよ。おわかりになりましたか」


                                     幸福の手紙 完

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