幸福の手紙 その2
校舎内には誰もいるはずないと思うが、念のため、服を脱ぐ前に3階の廊下を端から端まで歩いてみることに。
「隠しカメラとかないだろうな」
天井付近、廊下の隅、窓枠、などなど、とにかく目につくものは片っ端から調べながら進んでいく。
しかし盗撮用のカメラといっても、廊下などには意外と仕掛けにくいし、仕掛けてもすぐに見つかってしまうものである。
結局盗撮カメラ類は一切なかった。
他に怪しい場所はないか?
廊下近辺の教室に人のいる気配もない。
大講堂は施錠されていて中を確認できなかったが、
「たぶん大丈夫でしょう」
さらには時々立ち止まり聞き耳を立ててみるが、
「やっぱり誰もいないな。日曜日だし、時間だって早いんだしさ」
第一「あたしが何月何日何時ころに学校に来て廊下を走るかなんて、わかるもんですか。ね!」
その通りである。
犯人を含めて、盗撮や誰かに見られる心配はなさそうである。
トイレまで戻り、服を脱ぎ始めた。
ついに全裸になった彼女は、トイレのドアをそっと開けて外を見る。
「もちろん・・・誰もいないよね・・・」
しかしトイレの入り口に向かおうとしたら、人影が動いた!
「あっ!」一瞬ギクリとして足を止めてが、よく見ると鏡に映った自分であった。
「なあんだぁ。あたしか」
鏡に映っている彼女、ナイスなボディだ。
なで肩の下に大きなお〇ぱいが、そして、くびれ、土手に見事な筋と。
赤くなりながらも「なかなかだな」我ながら思った。
髪の毛を結び直して、今度はトイレの入り口から廊下の奥の方をそーっと覗イてみる。
「いよいよ本番だぞ」
廊下は、向こうの端までしーんと静まり返っている。
胸がドキドキしだし、頭もカーッとしてきた。
自分にハッパをかけるようにして
「小百合、大丈夫だよ!」と独り言を。
そして深呼吸を一つして、吹っ切るようにトイレを飛び出した。
最初は歩いていたのが、いつのまにか小走りになっている。
「あ、あたしは何をやってんだろ」
歩くたびに、胸がボヨンボヨンと揺れる。
「はー、こんなになるんだ」
少し面白い。裸で走り回るなんて幼稚園の時以来か。
そんなことを考えていると、だんだん大胆になってきた。
一つ目の廊下の角の所で、一旦立ち止まった。
後ろを振り向いてみたが「誰もいないな。やっぱり」
二つ目の角を曲がって、ついに東棟の講堂前まで来た。
「後は引き返して戻るだけだね。意外と簡単だったかな。あれ」
大講堂の入り口の横に白いロッカーが置いてある。
いや、ロッカーのようなよくわからない箱型の物が。
よくあるロッカーは3人、6人と、多人数で使うので複数個がくっついているのが普通であろう。1人分しかないって?
色も変だ。金属のようではあるが真っ白である。
「1人用の白いロッカーって、なにこれ?」
高さは2mくらいで、縦横の幅は通常の物より一回り大き目か。
「おかしいな。さっき見回った時には、こんなのなかったような・・・。あ、まさか中に人がいるとか」
裸であることも忘れて、彼女は思い切って扉を開けると・・・中は空洞だった。
「カラだ」
ホッとした。
しかし「人が入ってなくてよかったわ」と、安心したのも束の間であった。
(男の声)「さあ、みなさん大講堂はこの奥ですよ」
突然背後の方から、大きな声がした。
ドッキ−ン!
(ええぇーっ!)
と髪の毛が逆立つと思われるほど驚いた。
廊下の向こうの方から人が、しかも何人もこっちに向かって来るようだ。
(まずいぃ、人が来る。ど、どうしよう)
今まで強気だった小百合は、泣きそうな顔になった。
このまま見つかれば、えらい事になりそうだ。
トイレなどの隠れられそうな場所まで戻るには、どうしても声のする前を通らなければならない。
「そっか、講堂の中なら」
あわてて大講堂の扉を開けようとしたが、施錠されていて中には入れない。
「だめだぁ」
あと、隠れられそうな場所といえば、目の前にあるロッカーだけか。
(男の声)「講堂の鍵は持ってきてます。いつも施錠してますからね」
声はいよいよ近づいてくるようだ。
小百合は覚悟を決めて、ロッカーの中に飛び込んだ。
(き、きついな)
気を付けの姿勢になった小百合は、首を少し上に向けるようにした。
外の音は意外に全く聞こえないが、さっきの男たちは今、目の前を通って大講堂に入ろうとしているに違いない。
(早く行ってよぉ。あ、あれ?)
その日以来、小百合先生は行方不明になってしまった。
・・・おしまい
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