妄想別館 弐号棟


かしわ餅奇譚 その1


5月5日は端午の節句です。かしわ餅を食べましょう。

陽子はかしわ餅が大好物である。
いくつでも食べられると豪語している。
いつ食べてもおいしいけれど、特に5月の新緑の季節のかしわ餅は最高。
さらには・・・
晩春から初夏のさわやかさ、これを体に感じながら食べ歩く。
これこそが『かしわ餅の通(ツウ)』でアる、
と心底思っている。

おいしさにもこだわりを持っている。
コンビニやスーパーマーケットでは買わない。
名代の和菓子屋、老舗の和菓子屋、そのような専門のお店でいつも買っている。
少々高くて、お小遣いで買うのは財政的には結構苦しいのだが、
「あんこの味や風味、お餅の食感、かしわの葉っぱの香り、すべてにおいて全然違うのよ」
さらに力を込めて言いきっている。
「おいしさは、なにものにも代えがたいわ」

今日も学校からの帰り道、老舗わらび屋のかしわ餅をパクつきながら歩いている。
いつもの路地を曲がると、道にすわり込んでいる老人がいた。
老人は陽子を見ると躊躇せずに、
(老人)「そこをお歩きの方。誠に厚かましいのですが、かしわ餅を一つ分けていただけないでしょうか?」
陽子はかしわ餅をかじったまま、目をぱちくりさせている。
(陽子:おとぎ話の世界か)
陽子が黙って見ていると、
(老人)「お願いします。私はもう一週間もかしわ餅を食べていないのです」
(陽子)「あのねえ、これはあたしのお小遣いで買ったかしわ餅なの。高かったのよ。それに、あなたは何なのよ」
(老人)「そんな冷たい事をおっしゃらずに、どうか一つだけ」

押し問答を続けていると、同級生の夏美が、やはり、かしわ餅を食べながら通りかかった。
彼女も陽子ほどではなイが、かしわ餅が好きである。
しかし、食べている商品はセブ〇イレブ〇のものだ。
味は陽子ほどうるさくないようである。
(夏美)「どうしたの?」
(陽子)「これこれしかじか」
(夏美)「ふーん」
夏美は老人を見ていたが、
(夏美)「じゃあ、あたしのを一つ上げるわ」
陽子は、キッとして、夏美の袖を引っ張る。
小声で、
(陽子)「そんな甘やかすことないよ」
(夏美)「でもさ、なんかかわいそうだよ」
夏美は「1つだけどどうぞ」といってかしわ餅を渡した。
(老人)「ありがとうございます。あなたにはきっといいことがありますよ」
そして、陽子に向かっては、
(老人)「あなたは、いつもいつもかしわ餅を食べて、かしわ餅にお世話になっているのに、感謝の心がないのですね」
奇妙な台詞に陽子は少々たじろいだ。
『なんで、かしわ餅と感謝が関係あるのよ』と言い返そうとしたが、
それを制するように、素早く、
(老人)「ではごめん」
と一言、歩いて行ってしまった。
呆然と見ていた2人だが、
(陽子)「まあいいや」
陽子はあと3つ、夏美はあと2つ、かしわ餅が残っている。
(陽子)「食べながら途中まで帰ろうよ」
パクつきながら一緒に帰ることにした。

さてさて、陽子は歩き始めてかしわ餅を一口かじったのだが、
(陽子:なんだろ?)
非常におかしな違和感を感じた。
頭が痛いとか、景色が変に見えるとか、そういったおかしさではない。
言葉にできない、とにかく変な違和感を感じたのである。
首をかしげているのを見た夏美が、
(夏美)「あれ、どうしたのよ」
(陽子)「いえ、ちょっと」
夏美は、まさに食べ始めようとしたかしわ餅を手に持っている。
それを見たとたん陽子は、
(陽子:あ、あれ?夏美の持っているかしわ餅って)
葉っぱを向いて、白いお餅がペロンと顔を出している。
しかし、しかし!
(陽子:あ、あれって)
陽子は顔が赤くなっていくのを感じた。
(陽子:まさかそんなことって)
頭がこんがらがってきた。
そんな馬鹿なことはない。絶対ありえない。
しかし陽子は確信した。
夏美が持っているのは、まごうことなき、かしわ餅だ。
でも同時にあれは、絶対にあたしのあそこだよ。
と陽子は思った。
理由は全くわからない。そんなことあるはずない。でもでも・・・
(夏美)「へんなの」
夏美はパクっと、一口かじった。
(陽子:え、えへへ、痛いわけでもないし、やっぱり気のせいだよね)
(夏美)「?」
(陽子)「いや、なんでもないよ」

陽子は夏美と別れると、走って家に帰ってきて、お風呂場の鏡で見てみた。
(陽子)「あーーーーー!ない!」
いや、女性なのでないのはもちろんだが、ふっくらしていた土手や割れ目、根こそぎなくなっている。
まるでマネキン人形の股間のように、平らかになってしまっている。
もう少し正確に言えば、かしわの葉っぱが貼りついたような痣(アザ)がうっすらとついていて、
鼻の穴くらいの『穴』が縦に2つ並んであいている。それだけ。
医学的に言うと、これが尿道と膣口(の名残)であろうか。
(陽子)「な、ない、ないよ!」
陽子は泣きたくなった。
(陽子)「わたしのおマ〇コ、かしわ餅になって、夏美に食べられちゃった!」

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