氷柱の美女 その1
美奈は25歳のOLである。
まとまった休みがとれると、ちょっとした山歩きを趣味にしている。
で、今日は少し遠くの山まで来ているのだ。
真っ青な空がすがすがしい。
「ああ、いい気持ち」
気分よく、山道を登っていると、
「あれ?」
中学生くらいの女の子が、山道わきの岩の上に座っている。
「山歩きにしては、ずいぶん軽装だな」
手ぶらのようで、荷物らしい物を何も持っていない。
女の子は美奈を見つけると、ニコッとほほ笑んだ。
(千寿)「こんにちは」
(美奈)「こんにちは、いいお天気ね」
女の子は『ヨッ』とばかりに岩から飛び降り、近寄ってきた。
(千寿)「お一人ですか」
(美奈)「そうよ」
美奈が立ち止まって話をしてみると、
女の子は、この山の近くに住んでいて、名前は千寿(ちず)というらしい。
そして、一緒に頂上まで行くことになった。
(美奈)「千寿ちゃんは学生なの」
(千寿)「うーん、なんというか、少し違うんですよねぇ」
(美奈)「え、なにそれ?」
千寿は話題をそらすように、
(千寿)「あ、美奈さん、ちょっと面白いところに寄って行きませんか」
(美奈)「寄っていく?どこへ?」
(千寿)「エヘ」
といたずらっぽい笑みを浮かべて、
(千寿)「実は、秘密の木こり道があってですね、お湯が沸き出ているところがアるんですぅ」
(美奈)「お湯って?」
(千寿)「小さな温泉みたいな」
木こりが通るという道は、獣道(けものみち)より『少しはマシ』な程度であった。
『普通の人じゃ、ちょっと気が付かないだろうな』
と思えるくらいに草におおわれている。
ヤブ漕ぎをしながら進んで行くと、周りを崖に囲まれた、谷底のような場所に出た。
なるほど、温泉である!
崖のあちらこちらの割れ目から湧き出したお湯が、大小の岩の間にたまり、湯舟になっている。
水面からは湯気がモクモクと立ちのぼっている。
(美奈)「わぁ、雲海みたい」
あたり一面、霧がたちこめているように、すごく幻想的な様を呈している。
(美奈)「へぇ、こんな所、良く知ってるね」
(千寿)「えへへ、まあね。ここは木こりの人の隠し湯、とは言っても、最後の木こりの人もだいぶ前に死んじゃって、このあたりを知ってる人は、もういないと思いますよ」
(美奈)「じゃあ、なんで千寿ちゃんは知っていたの」
と、聞いてみたが、
(千寿)「この霧はね」
と、問いかけの答えとは違うことを言ってきた。
(千寿)「この崖には洞窟があって、そこがものすごく寒くなっているの。
暖かいお湯と洞窟内から吹いてくる冷たい風で、いつも霧ができるんです。霧が晴れることはほとんどないのよ」
(美奈)「へえ、そうなんだ」
千寿は、お湯に手を入れて、
「ちょうどいい湯加減だな」と、言った。
(千寿)「ねえ、美奈さん、ちょっと、入ってイきません?」
(美奈)「えっ!」
しかし返事も聞かずに、千寿は服を脱ぎだした。
(美奈)「ちょ、ちょっと待ちなよ。誰かに見られたら大変じゃない」
(千寿)「大丈夫ですよ。だれも来ないって」
千寿は服を全部脱いでしまった。
そばの石の上に放ると、こっちを向き直った。
膨らみかけた小さな胸や、白くて長い割れ目が瑞々しい。
(美奈)「あれま!」
美奈があっけにとられていると、
「お先に」といって、ドブンとばかりに、お湯の中に飛び込んだ。
(千寿)「美奈さんも入りなよ。岩の裏側の洞窟も案内しますよ」
千寿は崖から噴き出しているお湯のそばまで行って、お湯を体に当てるように浴びていたが、大きな岩の裏側に姿を消してしまった。
美奈は考えていたが、やがて周りをキョロキョロと見回し、
(美奈)「誰も来るはずないか。それにせっかくのお湯につからないのも惜しい気がするな」
ミニ温泉に入ってみることにした。
荷物を置き、服を脱いだ。
(美奈)「こんなところで素っ裸になるとは思わなかったな」
リックサックからタオルを取り出すのも面倒なので、一糸まとわずに『ザブン』と湯に入った。
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