妄想別館 弐号棟


プロローグ その1


202X年。
人体の組織をプラスチック化(正確には硬質化)して、マネキンのような形状に変質させることができる薬剤が開発された。
当初は医学や医療の分野に限定利用されていたが、やがてこれを悪用する連中がでてきた。
マネキン商会と名乗る正体不明の組織。
誘拐した女性をマネキンにして、闇市場で売りさばくことを思いついたのだ。
そして・・・その組織は今日も暗躍している。

「いやっ!お願い。助けてぇー」
拘束台には裸の女が磔になっている。
命乞いもむなしく、液体の薬剤が噴きつけられた。
ソリッドMと呼ばれているこの薬剤、超強力な瞬間固定剤のような性質を持っている。
「キャーーーァァァ!」
数分後、女はカチンカチンに固まってしまった。
(手下E)「はい、一丁上がり」
この女はまさにマネキンにされかけているところだ。
『されかけている』という表現には説明がいる。
彼女は仮死状態ではあるが、まだ生きているのだ。
この薬剤は一回程度の散布では、皮膚への浸透が不十分なのである。
効力が弱く水洗いでも簡単に洗い流せてしまう。
ニ回、三回と重ねて噴きかけていくと、どんどん硬化していき、やがて不可逆的に固まってしまうのだ。
またカチンカチンとはいっても、外部からはなんとか動かすことが可能で、この段階でマネキンのポーズを整えていくのである。
男たちは手際よく、動かない女を洋服売り場にあるマネキンのようなポーズに整え終えた。
あと数回、ソリッドMを噴きかければ素マネキンのできあがりだ。

(S)「待ちなさい!」
突然、叫び声とともに2人の女性があらわれた。
(手下B)「あ、スーパーガール!」
そう、正義の味方の彼女たち、世間ではスーパーガールと呼ばれている。
2人のうち1人は長身、もう1人は少しだけ小柄だが、やはりスラリとしたボディをしている。
皆は、大人の方を『Supergirl』、少女の方を『Supergirl Rabbit』と呼び分けているようだ。(←以下『S』と『SR』とします)
颯爽と登場した彼女たち、細くて長い脚、その脚線美が目立って美しい。
ラバー素材のような、ブラとボトムの水着型コスチュームを着ている。
腰部のくびれ方と、露出している白い肌がさらに艶っぽくみせている。
それに手袋とひざ下まであるロングブーツをつけている。
腰のベルトにはレイガンとナイフを武器として下げている。
全身が白銀色にまぶしく輝いているようだ。
だが、彼女たちの一番の特徴は、アイマスクである。
スーパーガールは赤いベネチアンマスク、スーパーガールRは少し丸みのある青いベネチアンマスクをしている。
実はこの大きな仮面が超能力の元なのであるが、それはまた後ほど。
ま、ざっと、このような出で立ちである。

(SR)「そこまでよ、悪人」
(手下A)「うるさい、じゃまなやつ。片付けてしまえ」
(S)「あなたは、彼女を保護して」
(SR)「わかった」
数人がスーパーガールに飛び掛かっていった。
スーパーガールは、1人の顎をパンチで、もう1人は回し蹴りで倒した。
長い脚を使ったキックは、かなり威力があった。
さらにはヒュンと弧を描く様は見ていて美しい。
手下たちが、次々にかかっていくがたちまち倒されてうめいている。
残った数人が、拳銃を取り出した。
スーパーガールが、それより早く腰のレイガンをサッと抜き撃った。
ビーッと空気を切り裂くように振動が起こり、
「うわぁああぁ」
2人が倒れて動かなくなった。
(S)「パラライザよ。気を失ってるだけだから心配しないで」
しかし最後に残った男は、やけになったようだ。
マネキンになった女性に向かって拳銃を構え直したではないか。
(S)「あ、いけない!」
(手下G)「こうなれば道連れだ。撃っちまえば、その女は終わりさ」
その瞬間、スーパーガールRがマネキン女性の前で、とっさに両手を広げて盾になるように立ちはだかった。
『バーン、バーン』と銃声がして、数発が彼女に命中した。
だが彼女は倒れる気配がない。
「あれ?」男は唖然としている。
スーパーガールRは目をつむって首をそむけるように横を向いていたが、
(SR)「ちょっとぉ、危ないことするなぁ」
確かに命中はした。
なんとなれば、3、4発の玉が床に落ちているから。
(SR)「あたしたちに拳銃なんて効かないのよ」
(男G)「ひえぇ!」
この女性は無事に救出保護された。

- 1 -

*前次#

物語の部屋 目次へ