美人署長の活躍 その1
「うわー」
手首をひねられた男が壁際に転がる。
次の男、その次の男。
次々と襲い掛かって行くが、殴られ、蹴られ、投げ飛ばされて転がっている。
男たちが相手にしているのは、そう、スーパーガールである。
今日も赤いベネチアンマスクとセクシーなコスチュームを着て、軽快に動き回っている。
あっという間に、全員やっつけられてしまった。
腰に手を当てた仁王立ちになり、倒れてうめいている男たちを見ていたが、
「なーによ、だらしのない。それじゃ全員逮捕ね。でもなぁ・・・」
顎に手を当てて考え込んでいる様子は、真理子にそっくりだ。
「こいつらも手下なんだよね。残念」
今回も大物には逃げられたようだ。
「後はよろしく」
駆けつけてきた警察官に犯人を引き渡すと、風のように去っていった。
そして・・・
〇▽警察署の陰まで来ると、スーパーガールは変身を解いて本間美代子に戻り、何気ない顔をして署の中に入っていった。
署長室で書類に目を通していると、部下が報告に入ってきた。
(秘書)「署長またやられました」
(美代子)「えーまたぁ」
女性のマネキン化事件。
(美代子)「これで8人目よ」
今度も美代子の署の管轄区域内でだ。
マネキンにされかけているところを発見されたが、幸いなことに、すぐに薬剤洗い流せたのと、手当ても早く受けられたので命に別状はない様子だ。
もっとも助かったからといっても、被害者はトラウマになってしまうだろう。
死にかけたうえに全裸を見られてしまったのだから。
そして頭に来ることに、あざとく、犯人たちには逃げられてしまったようだ。
(美代子)「ふざけたやつ!こんなことが続くなんて。でもまた手掛かりなしか」
(秘書)「あのそれから・・・」
(美代子)「え、何?」
美代子宛てに怪メールが届いたそうだ。
(美代子)「『次にマネキンになるのは本間美代子、お前だ』、なによこれは。警察とあたしに対する挑戦ね」
そしてこの予告状の内容は、あっという間に署内に知れ渡ってしまった。
帰宅の途上にて。
人通りのなくなった路地を歩いているうちに、
「あれ?」
曲がり角の向こうから殺気が膨らんできたな、と思う間もなく数人が飛び出してきた。
最初から組み付くつもりか。
いきなり美代子めがけて突進してきたが、彼女は余裕で立ち位置をずらし、男はつんのめってころがっている。
「なによ。不意打ちとは卑怯ね」
拳銃を取り出そうとした男の顔に、すばやくバックを投げつけた。
「うわぁ」
男の顔面にもろに命中して顔を抑えている。
しかし男たちはそれ以上手向かわずに、サッと逃げて行ってしまった。
「あ、ちょっと待ちなさいよ。なんだ、まったく手ごたえがなかったな。ん?」
紙きれが落ちている。
「『本間美代子、マネキンになりたければ、下記の建物までこい。ミスターN』、なによ、マネキンになりたければって」
でも意味はすぐに分かった。
「ははあ、かかって来いと、誘っているわけか」
あきらかに罠にはまりに行くようなものだが、
「おもしろい。なるほどスリルね」
美代子は指定された廃工場の前まで来た。
「いかにもいろいろな仕掛けや罠がありそうだな」
あたりを見回してから「へんし〜ん!」
そして、スーパーガールが颯爽とした姿で立っている。
ヒタヒタと歩いて行くと、廊下の角から3人が飛び出してきた。
2人は手にナイフを持っていたが、1人をハイキックで吹っ飛ばす。
すかさず2人目に向かって転がるようにして体当たりした。
よろめいて体制を直そうとするところを肘で背中をガツンと。
3人目は拳銃を構えようとしていたが、しゃがみこむようにして右足で払い、手刀で打ち倒した。
倒れてうめいている男の襟首をつかんで、
(S)「さあ、ミスターNはどこにいるの。それから薬剤は?」
(男)「あわあわあわ・・・」
(S)「ハッキリ言いなよ。あんたたちあたしを、いえ、本間美代子さんをマネキンにするつもりなんでしょ。さあ早く」
(男)「一番奥の、第三実験棟です。ウッ」
当身を食らわせておいて、奥に進んでいくが・・・
あちらから数人、こちらから数人、パラパラ飛び出してくる。
そして、いずれもあっけなく倒されていく。
舌打ちをしながら「なーんだ。弱いのばかり。言っちゃなんだけどあまり役に立たないね」
ここは建物内にある別室である。
ミスターNがこの様子を監視モニターで見ている。
(Mr.N)「やっぱりチンピラが束になってかかっていっても無駄だな。
まあいい、とにかくあの女のデータを集めるんだ」
鎌を掛けるつもりで、美代子を襲いちょっかいを出してみたら、案の定スーパーガールの大人の方があらわれた。
(Mr.N)「ははあ・・・」
そうするとやっぱり、スーパーガールと美代子は同一人物ではないかと思われる。
さらには、この間の真理子とこいつは母娘ではないかとも。
しかし今ここで、スーパーガールに決戦を臨むつもりはない。
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